どうしようもなく世話焼きで、 4-18
昼休みになって、俺は弁当を持って補助委員室を訪れた。
選挙期間はもう始まっているので、これから忙しくなるはずだ。何かやることがあるのではないかと思って来たわけだが、補助委員室は思ったより静まり返っていた。
「お疲れ様です、折無くん」
いつもの場所、といってしまっていいのか、九はそこが定位置となりつつある生徒会室とは逆方向、長机に添えるように置かれている二つの椅子の内、窓際の方に座っていた。なにやらA4用紙に目を通しているが、さほど忙しいようには見えない。
いるとは思っていたが、実際に会うとなんだか気まずい。昨日会ったばかりだというのに、妙に居心地が悪いのは何故だろうか。
「雨桐は来てねぇのか?」
とりあえず気になったことを聞いてみることにしたが、九はその問いに不思議そうな顔で答えた。
「雨桐さんなら選挙運動に行きましたよ。昼休みは活動するのに最も適している時間ですからね」
そういえば、昼休みといえば選挙活動の時間だったか。
そんな単純なことさえ忘れてしまうとは、どうやら今日の俺は少し調子が悪いらしい。
いや、というよりも、考えることが他にあるのが原因か。
ともあれ、九がここでゆったり座っているということは、今は特に手伝うこともないのだろう。俺はソファーに腰かけ、弁当の包みを開く。
腹が減ってはなんとやらだ。やることがないのであれば、今の内に英気を養うのが効率的というものだろう。
さぁ食べようと思ったところで、ふと視線を感じて九の方を見ると、彼女は書類で顔を隠してこちらを覗き込むように見つめていた。
「・・・・・・なんだよ」
「あなたこそ、何か言うことはないんですか」
言うこと、言うことねぇ。
あるにはある。学園中に広まっているあの噂の件だ。
「気付いてたのか」
「あれほどの大事、あなたでなければ起こせないでしょう」
なにやら過大評価を受けた気がする。
確かにあの件に関しては俺が計画していたことだし、生徒会で魔法使いである俺くらいにしか実行できないことだ。
だが、俺としては今回の一件はそれほど大した事件だとは考えていない。というより、あれは一つの布石だ。相浦先輩及び雨桐を部会のトップに立たせるためには、これくらいのことを難なくこなすくらいでなければならない。
「別に、あれくらいは大したことねぇよ」
思っていたことを言ってみると、九はむっとした表情でこちらを見た。
「『あれくらい』? あなたは自分が何をしたかわかっているんですか?」
「なんだよ、いきなり」
「事情はだいたい結月さんに聞きました。雨桐さんを囮に使ったそうですね」
「おう、そうだな」
「それがどれだけ危険なことだったかわかっているんですか? 下手をすればあなたも雨桐さんも無事では済まなかったかもしれないんですよ」




