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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
第四章 どうしようもなく世話焼きで、
50/75

どうしようもなく世話焼きで、 4-10

 日曜日。

 先日に続いて学校に呼び出され、選挙のための下準備を進めるために俺は補助委員室にいた。

 生徒会室では相浦先輩や援軍に来てくれた軽音部員たち、それと生徒会の面々(といっても結月と東雲先輩だけだが)が作業をしていて、俺達の作業スペースがほぼない状況だったので、俺と九、そして雨桐はこっちの部屋に移ることになったというわけである。

 普通の教室のほぼ二つ分の広さがある生徒会室と比べ、補助委員室はそこまで大きいわけではない。過去にここは外部から来た客と生徒会が話し合いをする応接室として扱われていたらしく、教室のように三十人規模のスペースはなく、若干狭い一室となっている。

 この狭さでは広々と作業をすることもできず、よってこちらで進める作業は細々としたものがメインとなった。


 「折無くん、そっちのプラカードはできましたか?」

 「悪い、もうちょいかかる」

 「折無くーん! さっき頼んだ書類どこー?」

 「そこの机の上だ、ペン立ての近く」


 選挙期間一日前というだけあって、準備は急ピッチで進められる。そのため、補助委員室にはひっきりなしに声が飛び交い、せっせと人が動き回る。

 あまり使われることのないこの部屋だが、応接室として機能しなくなったあとに生徒会が資材置き場にしていたということもあって、工作道具はいろいろと揃っている。

 その狭さから大人数で作業するには向いていないが、三人程度の少人数で作業するのであれば、かなりいい環境だといえるだろう。

 トンテンカンとなれない手つきでトンカチを振るい、角材と木の板を鉄釘で融合させ、あっという間にプラカードを完成させる。もっともこれは二号であり、一号は木の板を釘が貫通してしまうというミスをやらかしたせいでお陀仏となってしまった。

 ともかく二号をひょいと持ち上げてみると、なかなかに重量感がある。そもそも素材がある程度重量のある角材と木の板だったのだ。そのせいで男である俺がプラカードを作ることになったというのはここだけの話。

 危険じゃない程度にプラカードを左右に振ったり上下に動かしたりしてみるが、かなり安定感があって壊れる気配はない。素人が作ったにしては上出来だろう。なんだか達成感がこみ上げてきて、俺は思わず満足げな鼻息を出す。


 「プラカードできたぞー」

 「おお、見せて見せて~」


 作業中の道具を踏まないようにぴょんぴょんと跳ねながらやってきた雨桐にプラカードを渡してやると、彼女は子供のように目をキラキラさせてプラカードを振り回していた(もちろん危なくない程度にである)。

 その後に少し遅れて九もやってきて、振り回されているプラカードを見る。


 「あの調子なら途中で壊れたりもしなさそうですね」

 「あたぼうよ、誰が作ったと思ってるんでぇ」

 「な、なんか折無くんが職人さんみたいになってます・・・・・・」


 ちょっとふざけてみただけなのだが、九にドン引きされてしまった。

 しかし考えてみれば、こんな風にみんなで集まって何かを作ったりしていると、まるで学園祭の準備をしているような気分になる。

 といっても俺は学園祭の準備でみんなで何かを作ったりしたことがないのでその感覚がわからないが。いや、ハブられてたとかじゃないと思うんだけどね。忘れられてた可能性はあるかも。

 暗い過去にトリップしてしまいそうになって、俺は頭をブンブンと振る。

 ともかく、こういうことをしていると自然とテンションが上がってくるという話だ。

 なんか青春を謳歌しているみたいで癪だったので、ちょいと気分をクールダウンさせてみる。うん、いつもの俺はクールで物事を第三者視点から見ている気高き狼的な男だからな。こんなこと程度で子供みたいにはしゃいだりなんかしないんだからねっ!


 「あとはこのプラカードを装飾していくだけ、ですかね」


 そう言いながら九は伸びをした。それに伴って決して控えめではない二つのアレが強調され―――ではなく、こいつはもう少し男の前にいる自覚というものを持てないものなのだろうか。

 それはともかく、そんな中で「ひゅるる~ん」というなんともかわいらしい音が聞こえてくる。

 俺じゃない。

 これはあれですよね、気付いたけど気付かないフリをしなければいけないという展開ですよね。でも思いっきり静寂の中で聞こえてきたし。ちょっと空気固まってもうみんな気付いてる感半端ないじゃん。

 音の発信源は間違いなく顔を真っ赤にしている雨桐である。彼女はしばらく固まった後、お腹を押さえてたははと笑った。


 「お、お腹減ったね。もうとっくにお昼過ぎてるもんね」

 「そうですね、そろそろ休憩にしましょうか」


 というわけで時計の針が午後一時を越えたところで、俺達は休憩にすることにした。

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