どうしようもなく世話焼きで、 4-9
「ら、『楽な部会』とか・・・・・・」
そんな俺が、一番何も思いついていなかったりするのである。
周りから冷ややかな目で見つめられ、俺は慌てて弁解する。
「し、仕方ないだろ。俺思いついてないものは思いついてないんだから。第一、いつも俺が出す意見が正しいわけねぇだろ」
ド○えもんじゃあるまいし、脳内ポケットからあの手この手の回答が出てくるような脳細胞は持ち合わせてないんだよ。
とはいえこれまでの功績(?)からある程度は期待されていたのか、生徒会には落胆したような雰囲気が広がる。
「武月からはまともな回答は返ってこないし、正直私もこれといって良さそうな回答は思い浮かばない。これは万事休すかな?」
まったくもってその通りなのだが、なんで嬉しそうに言うんですかねぇ。一応俺達ピンチなんですが。
雨桐に始まり、相浦先輩、東雲先輩、そして俺、最後に生徒会副会長である結月すら現段階では白旗。
改めて言っておくが、これは非常にまずい状況である。会議において停滞ほど痛いものはない。刻一刻と時間は過ぎてゆき、カッチコッチと壁時計が秒針を刻む音が恨めしい。
このまま沈黙が場を包んだまま時間が過ぎていくのかと思われたその時、おずおずといった風に挙げられる手が一つ。
「あの、私の意見もいいでしょうか?」
我らが生徒会補助委員長、九沙奈である。
我らがとか言ったが、生徒会補助委員は彼女を含めて二人しかいない。
そういえばまだアイツだけ意見を言ってなかったなーと思いつつ、しかし俺はそこまで期待していなかった。
なにより九は真っ直ぐすぎるせいで、今回のようにあの手この手を使わなければならないような意見を出さなければいけない場にはめっぽう弱い。実際、ここまで事を運んできたのは九の猪突猛進な意見ではなく、俺の手八丁を取り入れた意見だ。
だが、せっかくの意見である。ダメ元で聞いてみようということで、俺は黙っておくことにする。
「いいだろう、言ってみたまえ」
結月がずいぶん愉しそうな表情をしてそう告げると、九はおそるおそるといった調子で口を開いた。
「あんまり自信ないんですけど、選挙制度なんてどうでしょう」
なにやらこれまでとは方向性の違った意見が出てきて、俺は少し肩を動かした。
同じく結月もその意見に興味を持ったのか、今まで背もたれの方に傾けていた体を、机の方へと近づける。
そんな中で、波に乗った九の言葉は続いた。
「運動部の圧政といい、先程から挙がっている意見といい、どうも部会長が独断で決めること自体が間違っていることのように思うのですが、だったらいっそ部会長だけでなく、部会に参加する権利を持っている人も交えて物事を決めるのがいいと考えたのですが」
「ほう、それで選挙制度というわけか」
結月が興味深そうに確認すると、九はコクリと頷く。
「たとえばどこかの部活の部費を上げる際、それに賛成か反対かという案件が挙がったとします。これを最終的に部会長の判断で決めるのではなく、選挙を行ってその票数で決定するようにしてみてはどうでしょう?」
確かに、それならば公平に決められたことになるし、各部活も納得しやすいだろう。
しかし一方で問題も多い。
「無理だろ、部会参加者全員で選挙するなんて手間がかかりすぎるし、なにより部活動に所属している生徒数は、文化部より運動部の方が多いんだぞ。そんな状況で選挙なんかしたら、文化部が圧倒的に不利だろ」
そう、選挙制度なんてものを取り入れてしまえば、問題は結局そこに行き着いてしまうのだ。
今回の選挙は生徒会総出で取り掛かってなんとか勝利をもぎ取ろうとしているが、こんなのが毎度毎度続くとなると、その全てに生徒会が手を貸すなどということはできない。
となると、文化部対運動部みたいな案件が挙がってしまえば、結局文化部は毎度負け続けることになるだろう。そうなると、今よりも圧倒的に公正な運動部の圧政時代の完成である。
そんなことをさせるわけにはいかない。よって、九の意見は却下しなければならないだろう。
「いや、悪くないかもしれないな」
しかし、俺の考えに相対して結月は九の意見に好色を示す。
「着眼点は悪くない。むしろ非常にいいだろう。あとは武月の言っている問題と、細かい部分をクリアしさえすれば実用することも不可能じゃない」
「だから、その問題がクリアできないからダメなんだろ」
「クリアできるから言っているんだよ」
そう言って、結月はにやりと笑った。
結局会議の末に九の意見が少し改変されて採用された。
こうして、生徒会を含む相浦先輩及び雨桐勢力が動き出すことになる。
マニフェストは―――『みんなで決める部会!!』
・・・・・・思ったよりも適当すぎて頭痛が痛い。




