どうしようもなく世話焼きで、 4-4
雨桐の思い切りの良い行動(脅し)の末に、結局俺は学校に向かうことになった。
制服に着替えて外に出ると、まだ春だというのに日光が容赦なくこの身に降り注ぐ。暑いというわけではないが、今日一日家で過ごそうと思っていた俺にとっては、気分的によろしくないものである。
我が家から学校までは電車で三駅の距離がある。しかし最寄の駅までは歩いて十分くらいの距離なので、自転車を使う必要もない。
というわけで、俺と雨桐、そして九の三人でいつもの登校路を歩くことになった。
「つーか、なんで九までいるんだ?」
さりげなく入ってきていたが、そこを見逃してもらえるほどこの世界は甘くない。
俺が問いかけると、本人に代わって雨桐が答えた。
「さっき歩いてたら偶然会ったの。それで折無くんの家に行くって言うから、ついでに私もついていこうかなって」
なるほど、雨桐が訪問してきたというインパクトが強かったが、どうやら俺の家に押しかけるという計画を発案したのは九だったらしい。さっきメールをしたと言っていたが、考えてみれば雨桐は俺のメールアドレス知らないはずだしな。
その辺についてはどうでもいいのだが、もう一つ気になっていることがある。
「なんで九が俺ん家の場所知ってんだよ」
間違っても俺は教えた憶えはないし、結月もわざわざそんなことを言うような性質ではない。
となれば自分で調べたと考えるのが妥当だが。
「それは、その・・・・・・」
なにやら言いにくいことがあるのか、九は歯切れが悪そうにしていた。
すると何やら俺に向かって手招きをしてきたのでちょっとだけ近づいてみると、ちょっとだけ背伸びをして耳打ちをしてくる。
「私の魔法を使って、あなたの所在地を『探知』しました」
なるほど、そういえば九の魔法はそんな感じのものだったな。魔法とか日常生活であんまり使うことないからすっかり存在を忘れていた。
しかし俺の幻覚を見せる魔法に対し、九の『探知』はなかなか使い勝手の良さそうな魔法である。失くし物とかあってもすぐに見つけることができそうだしな。
さらに物だけでなく人まで探知できるとなると、いちいちアポを取らなくても目的の人物のいる場所にたどり着ける。考えれば考えるほどストーカー向きの魔法だな。
とりあえず納得して九から離れてみると、次は雨桐が物言いたげに俺達を見ていた。
「なんだよ」
「いや、折無くんと九さんって仲良いんだなって思って」
はて、どこをどう見たら俺と九の仲が良いように見えるのだろうか。
九がどう考えているのかはわからないが、俺達の関係はせいぜい同じ部署の同僚といった具合だ。その程度なら俺の中では知り合いに定義されるくらいのものである。
そんな俺達のどこに仲が良いと感じる要素があるというのだろうか。いやない。思わず反語が出るレベル。
「そんなに近づいて内緒話するくらいだし」
ああ、確かに第三者視点から見てみれば、今の俺達の行動は仲が良いように見えなくはないのか。
「こいつはスキンシップ過多なんだよ。他人に近づかないと寂しくて死んじゃう病なんだとさ」
「な、適当なことを言わないでください! 私のどこがスキンシップ過多なんですか!?」
やっぱり自覚はなかったようだ。
もはやこの一週間くらいでこいつの距離の近さには大体慣れたし、先程の耳打ち程度では動揺しない程度にはなったので俺の方は問題ないが、このまま続けられると周囲にあらぬ誤解を与えそうである。
何か手を打つべきなのかもしれないが、そもそもこの手合いにどう対応していいのかわからないのがコミュニケーション経験不足生物の俺である。
「もしかして二人って付き合ってたりするの?」
「な・・・・・・っ!」
雨桐の質問に、九は顔を爆発しそうなくらいに顔を真っ赤にした。
「そ、そんなことあるわけないじゃないですか! 確かに折無くんは優しいし、仕事はちゃんとしてくれますし、優秀な人だとは思いますけど・・・・・・」
なんだろう、九の言ってること聞いてると自分の社畜適性が高い気がしてきてヤバい。むしろ俺ってもう社畜なんじゃないかな。いや、この場合は生徒会の社畜だから略して会畜だな。
「とにかく、私と折無くんはそういう関係じゃありません!」
うん、俺も九とはそういう関係じゃないし、正直コイツとそういう関係になりたいとは思っていないけどね。そこまで否定されるとなんか傷ついちゃうわけですよ。
しかしこういう時どう答えてもらうのが一番嬉しいものなのだろうか。複雑な男心は男でもわからないものなのである。
「ふーん、そうなんだ」
そっかそっか、と一人納得する雨桐。なんか顔がニヤけているが、あれは間違いなく彼女いない暦=人生の俺のことを心の中で笑っているに違いない。いいもん、三次元に嫁がいなくても二次元には百人くらいいるもん。
「つか、なんで俺は今日学校に行かなきゃならないんだ?」




