いろいろと諦めているけれど、 3-17
一つの組織をまとめあげることは、そう容易なことではない。
経験豊富な上回生でも、部会運営には苦労することだろう。
上に立ってみんなの意見をまとめるのと下から好きに意見を言うのとでは、まるで勝手が違う。まして雨桐はまだ一年生だ。部会の出席回数とそこから学んだ経験値はどれだけあるのかわからないが、常識的に考えればとても部会を運営していけるような立場にはいない。
取り繕うつもりはない。そういう意味を含めての、これは脅しだ。
通常の思考をするのならば、雨桐はここで強引にでも諦めさせるべきだ。なぜなら、雨桐の理想を実行するために彼女が進む道は間違いなく茨の道。生半可な気持ちで通れるものではない。
「それ、は・・・・・・」
言葉の意味を理解したのか、俺の強い口調に怯えたのか、雨桐は言葉に詰まって黙り込んでしまう。
所詮こんなものだろう。
あえて茨の道など進む必要などない。それに、雨桐にはまだ時間があるのだ。もしその理想を実現したいと思うのなら、十分に準備を整え、来期に正式な軽音部の部長となり、それでもってから部会長選挙に臨むべきだ。これほどの行動力と実行力がある雨桐なら間違いなく可能だろう。
時期尚早。その一言に尽きる。
雨桐の判断は間違っていない。俺は息を吐いて話を続けようとして―――
「できます」
はっきりと、力強いその言葉に、全てを止められた。
雨桐ではない。
そう答えたのは、雨桐を真正面から見据えた補助委員室長、九沙奈だった。
「雨桐さんならできます。だから、あきらめちゃだめです」
鼓舞とか、激励とか、そういうレベルではなかった。
確信。
無理だと諦めかけていた俺達が、それを持てるほどの力強さ。
確証なんてないだろう。きっと九の頭には、雨桐を部会長にするための算段、またその後どのように部会を運営していくかの計画すらないはずだ。
だが、彼女のあまりにも真っ直ぐな言葉は、確かに何かを動かす力を持っていた。
「あなたが望むなら、私達補助委員は全力であなたを部会長にしてみせます。だから、そこで諦めちゃだめです、雨桐さん」
「えっと・・・・・・?」
「だから、必ずこの間違った現状を正しましょう!」
がっしと机の上に身を乗り出して、雨桐の両手を掴む九。
その押しの強さに、雨桐は呆けながらもこくこくと首肯する。
やれやれ、厄介なことになった。
何故か一緒に雨桐を部会長にするために努力する連盟に加入させられていた俺は、もはやため息を吐く以外にできることなどあるはずなかった。




