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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
第三章 いろいろと諦めているけれど、
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いろいろと諦めているけれど、 3-18

 翌日の昼休み。

 俺達補助委員の二人は生徒会室を訪れていた。

 結月たち生徒会役員は、大抵ここで昼食を摂っているらしい(ソースは九)。今日もその例に漏れず、安っぽいコンビニ弁当をつついていた結月と、上品そうなバスケットに入ったサンドイッチをもくもくと口に運んでいた東雲先輩は、突然の来訪者にぴたりと動きを止めた。


 「あ、九ちゃんと弟くんだ。やっほー」

 「ふぉ、ふぉうひはほはへはひ」

 「は行だけで喋るのやめろ。いいから口の中のものを全部飲み込め」


 東雲先輩の気の抜けた挨拶と、なんともテンプレートなネタをかました結月とでごっそりやる気を削がれた俺ではあったが、九の方はそうでもないらしい。

 今のこいつはモチベーションの塊だ。昼休みになるなり俺の教室にやってきて、有無を言わさず連れ出されたくらいだ。クラスメイトどころか同学年のヤツらにすっごい注目されてそりゃもう恥ずかしかったですよ。九のおかげで変な方向に俺の知名度が上がっていってしまう気がする。

 もぐもぐごっくんと通常の二倍くらいの速度で咀嚼してモノを飲み込んだ結月は、一度弁当を脇に置いた。


 「で、何の用かな?」


 にやりと不敵に笑む結月は、完全に副生徒会長モードだった。

 おそらく、今日中に俺達が何かしらの案件を生徒会に持ち込むことを予想していたのだろう。まったくもって末恐ろしい姉である。


 「今日は聞きたいことがあって来ました」

 「ほう。部会長選挙に部長以外の人間が参加できるかどうか、ということかな?」


 いとも簡単に俺達の疑問を言い当てた結月に、俺達は驚いて目を見張る。


 「すごい、どうしてわかったんですか?」

 「ふふん、これくらいできないと副生徒会長は務まらないよ」


 重すぎるだろ副会長って役職。

 というか副会長でそれだけできなきゃダメなら会長はどんだけできる人間なんだろうか。いや多分結月より実力は下と見た。生徒会室に現れないのは結月に追い出されたからなのではないだろうか。割と当たってそうで怖い。 


 「結月ちゃんって人の考えてること言い当てるの得意だよね」

 「魔法使いと呼んでくれても構わないぞ」


 どや顔でなんとも危ういセリフを言ってのける結月。まぁ、東雲先輩は冗談だと思っているだろうから問題ないだろう。

 まぁここだけの話、俺でも「部長以外の人間を部会長にしてしまえば、今回の問題は解決する」という解にはたどり着いていた。ただ、それはルールを度外視したものであったため、俺の中で思いついた瞬間に却下してしまったものではある。

 理由としては、実現できなくはないが実行する必要性がなかったというところが大きい。雨桐の件がなければ、こんなバカみたいに単純な手を使うことはなかった。

 俺が思いついていたのであれば、俺よりも明晰な結月がそれを予想できていてもおかしくはない。そして、もしも九が何らかのきっかけで俺達と同じ解に辿り着いたのならば、間違いなくそれを実行するに違いないと読んだのだろう。また、九が案件を持ち込むのだとしたら、そういう展開に行き着いている可能性が高いとも。


 「話を戻すが、それについてはできない相談だ。ルールというのはみんながフェアな存在になるためにあるものだ。それを破るというのは、言語道断以外の何者でもないな」


 結月は慈悲もなく突き放すようにそう言った。

 ルールというのは破らせないためにあるものだ。

 破ってしまえば次々と穴が開いていくものだし、今回の件に関して言えば、部長以外の者を部会長に任命できるとなれば、それなら我も我もと運動部の連中がこぞって手を挙げ始めるに違いない。そうなると収拾がつかなくなるのは火を見るより明らかである。


 「でも、そうしないと部会は・・・・・・」


 間違ったまま、何も変わらず続いていく。

 そんな九の思考を理解していた結月は、困ったように息を吐いた。


 「正直、私とて今の部会はどうにかしなければならないと思ってるよ。ただ、それには『部会長が正しい人間』という前提条件が必要だ」

 「だったら―――」

 「それが今年はいなかった」


 結月がはっきりとそう言うと、九は言葉を詰まらせた。


 「今年の部長の中には、私達が理想とする人物がいなかった。だから、来年どうにかする。こういう意見は間違っているか?」

 「・・・・・・」


 今度こそ、反論は生まれなかった。

 結月の言っていることは圧倒的に正しいのだ。

 今年はできなかっただけ。だが、来年ならできる。それこそ、俺が考えた通り雨桐が部長になってから、万全の準備を整えてから挑めばいいだけの話なのだ。

 何ら問題はない。一年耐えれば、来年には絶好のチャンスがめぐってくる。何もこんなところでろくに準備もしないまま挑ませるべきではないだろう。


 「それでも」


 ただ、俺にはわかっていた。

 それは正しいが、間違ってもいる。

 一年耐えなければ何も変わらないのだ。だが、この鳳城学園に通っている生徒の中には、今にしか何かをすることができない生徒もいるだろう。そして、その生徒は一年後にはこの高校で何かを成し遂げることができなくなってしまう可能性だってある。

 だというのに、現状では運動部の独裁のせいで、その何かをすることができないという状況に置かれている生徒は、文化部の中に必ず存在しているだろう。それを放置しておけば、その生徒は必ず未来で後悔することになる。

 それは絶対的な間違いだ。どうしようもなく正しくない。

 九はそれを理解している。そして、俺はそんな九の考えが理解できていた。 

 だからこそ、九の言葉が続くことも予想できた。

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