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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
第三章 いろいろと諦めているけれど、
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いろいろと諦めているけれど、 3-16

 「それじゃあ場が和んだところで、さっそく本題に入らせてもらってもいいかな?」


 その雰囲気に則って、雨桐が話題転換を切り出した。

 俺としてもこれ以上雨桐との関係について探られるのは面倒なので、それに乗ることにする。横目で九を促すと、俺の過去より真面目な話を優先させたいのか、彼女はこくりと頷いた。

 それを見て、雨桐が口を開く。


 「実は、部会長選挙の生徒会推薦枠について、軽音部―――というより私個人から提案があるの」

 「提案、ですか?」

 「うん、さっきあなた達が部室に尋ねてきた時、相浦先輩―――軽音部の部長が推薦枠を断ったと思うんだけど、実は推薦を受けたいと思ってるの」


 真剣な表情で語る雨桐。

 しかし俺達としては状況が飲み込めずにいた。


 「えっと、我々生徒会としても軽音部部長―――相浦望奈あいうらみなさんには、推薦枠として部会長選挙に参加していただきたいと考えていますが、それには本人の同意が必要です」

 「ううん、相浦先輩に部会長になってほしいわけじゃないの」

 「どういうことですか?」

 「その、部会長になりたいのは私、なんだよね」


 躊躇いがちに言う雨桐。

 対して俺達は、状況を飲み込むことができずにいた。

 いや、そうではない。言っている意味は理解できるが、雨桐がどうしてそんなことを言ったのかが理解できない。

 そもそもの問題として、部会長になるにはどこかの部活の部長でなければならない、という前提条件がある。

 それを知らずに言ってるのかなーとか考えていると、それを察したのか雨桐はわたわたと両手を振った。


 「もちろん、部会長になれるのは部長だけってルールは知ってるよ。それでも私は部会長になりたいの」


 雨桐は至って真剣のようだった。


 「二人は部会の現状って知ってるかな?」


 問われて、俺と九は視線だけで確認を取る。

 部会長選挙を行わなければならないという話はわかっているが、部会の状況についてとなれば、俺達の知識はほぼ皆無である。

 九が無言で首を振ると、雨桐が話を続けた。


 「今の部会は―――ううん、昔から部会は体育会系の部活が部会長を担当してきたって話は知ってるかな?」

 「はい、それについては聞き及んでいます。体育会系の部活は勢力が強く、部会長になりやすいと」

 「そこがおかしいところ。部会長の座に着くのは一番勢力の強い部活のリーダー。そんな風な認識があるけど、そんなものが部会長に必要だなんてルールは本来ないの」


 確かに、部会長はあくまで選挙によって決まるものだ。部会長候補が所属する部活の勢力も投票者は見ているかもしれないが、選挙のルールとしては「部会長にふさわしいと思える人物」に票を入れるのが一番正しい。

 つまり、部会長候補が所属する部活の勢力ではなく、部会長候補そのものの素質を見て投票先を判断するべきなのだ。


 「確かに、過去に何度か運動系の部活から部会長にふさわしい人物がその座に着いたっていう話は聞いたことあるよ。でも、彼らは大抵自分達の欲求のために部会長の座に着こうとしていたの」

 「そりゃ疑いすぎだろ」

 「現に去年の部会長は、自分の部活のことだけを考えた部会運営をして、多くの他部活動から反感を買ってるよ」

 「去年はそうだったかもしれんが、毎年そうとは限らないんだろ?」

 「毎年ではないけど、大抵の部会長は私腹を肥やすためだけに部会を利用してるって話は、文化部では有名なの。そのせいで私たち文化部はずっと迫害にあってきたんだから」


 なんだか社会の裏事情みたいな話になってきたが、雨桐の目は揺ぎ無い。それに、先程部会長推薦候補者の調査を行った時、新聞部はともかくとして、文学部も軽音部も少し困っていることがあると言っていた。雨桐が言っていることが正しいのなら、困っていた理由はきっとそういうことなのだろう。

 歴代の部会長が私腹を肥やす目的があって部会を運営していたのかどうかについてはわからないが、少なくとも文化部の反感を買っていることは事実だ。とすると、雨桐の言う通り今の部会は何かがおかしいのだろう。


 「でも、もし文化部から部会長が選出されたなら、部会長選挙の歴史は大きく変わる」


 なるほど、それはもっともだ。もし一人でも文化系の部活から部会長が選出されたとなれば、それは伝説となって後世に語り継がれ、体育会系の部活からしか部会長が選出されないなんて風潮は消えるだろう。

 そうすれば、これまでのように文化部が迫害を受けなければならないという状況もなくなるかもしれない。そうならなくても、何かしらの影響を後世に残せるはずだ。

 

 「私はそれを実行したいと思ってる」

 「なんでだよ、お前の言っていることを実現するなら、別にお前じゃなくても他の文化部の部長を部会長に仕立て上げても問題はないだろ」

 「そこはまぁ、他の部会長候補さんのモチベーションの問題みたいなところはあるかなぁ」

 

 なんというか納得してしまった。

 つまり雨桐は既に各部活に話を持ちかけていたのだろう。その結果は、俺達と同じで成果ゼロ。

 それでも強引に部会長に仕立て上げることは可能かもしれないが、モチベーションが低いとなれば、その後の部会運営で問題が発生してしまうだろう。それこそ、現状で運動部が運営しているよりもっとひどくなる可能性すらある。

 しかし、そうなるとまたも疑問が湧いて出てくる。

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