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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
第三章 いろいろと諦めているけれど、
33/75

いろいろと諦めているけれど、 3-15

 下校時刻もまもなくという時間の申し出だったため、話とやらを学内で聞くわけにはいかない。そんな理由から学外に移動した俺達は、駅前にあるファミレスを訪れていた。

 店員さんに四名席に案内されて、そこに座る。もちろんレディーファーストを忘れない俺は、さっと九とギターケースの女生徒に先に席に座ってもらった。しかし困ったことに、二人は向かい合って座ることに。これじゃあ俺がどっちかの隣に座らなければならない。生涯で家族以外の異性と隣り合って座ったことにない俺にとってこれは難題である。

 さてどうすべきかと思案していると、九がジト目で睨んできた。


 「なにしてるんですか折無君、はやく座ってください」


 ぽんぽんと九が隣に座るように促したので、大人しくそこに座る。考えてみれば、九と俺は生徒会サイドの人間なので隣に座って軽音少女と向かい合う形になるのは至極当然だし、軽音少女の隣にはでかいギターケース君が相方として陣取っているので、結局はこうなる運命である。

 ともあれ、こうして席に座ったことだし、適当に注文をすることにする。

 俺がオレンジジュース、九がホットコーヒー、そしてギターの少女はメロンソーダである。

 注文を聞いた店員さんが去ると同時、さっそく話し合いが始まった。


 「今日は引き止めちゃってごめんね。私は一年一組の雨桐弥生あまぎりやよい、見ての通り軽音部所属だよ」


 そう言って、雨桐は片手で軽くギターケースを揺らす。


 「二人は生徒会なんだよね?」

 「正確には生徒会『補助委員』になりますが」

 「補助委員?」

 「生徒会の傘下にいる組織みたいなもんだ」


 尖った言い方になったが、おおよそ間違っていない。どころか事実である。


 「私は生徒会補助委員室長の九沙奈と申します」

 「うん知ってるよ、九さん有名だもんね」

 「そうなんですか?」

 「だって一年生で一ヶ月も待たずに生徒会に誘われたんでしょ。しかも綺麗な銀髪だし、そのうえ美人さんなんて、噂にならないわけがないよ」


 まぁ学内情報に疎い俺ですらフルネームを知っていたくらいだからな。今や学内で九の存在を知らない生徒はいないだろう。

 しかし同じくして一年で生徒会に入った俺の知名度は依然低いままである。いや別に上がってほしいわけじゃないけど、この差はなんなんでしょうね。やっぱりビジュアルなんだろうか。イケメンはこの世から滅べばいいと改めて思った俺でした。


 「で、こちらは同じく補助委員の折無武月さんです」

 「・・・・・・どうも」

 「あ、うん」


 俺と雨桐が面と向かうと、途端に気まずくなる。まぁそれも仕方ないことだ。


 「そっか、また・・・・・・たんだ」


 雨桐が小声で何か言ったようだが、それが俺の耳に届くことはなかった。しかし、雨桐が一瞬だけ嬉しそうな顔をしたのだけは確認できた。


 「なんだよ?」

 「ううん、なんでもない」


 明るくにこっと笑ってみせる雨桐。

 なんだか調子が狂ったので、とりあえず黙り込むことにした。 

 そんな俺達の様子を見て、九は首を傾げる。

 

 「あの、やっぱり二人はお知り合いなのですか?」


 ここまで思わせぶりな態度取ったらそうなりますよね。

 先程と同じく適当に流そうと思ったが、俺が返答をする前に予想外の言葉が雨桐の口から飛び出した。


 「実は私達、昔付き合ってたの」


 なん、だと?

 彼女いない暦=人生だと思っていた俺に、そんな記憶はない。もしかしてこれはあれだろうか、いつから付き合っていなかったと錯覚していた? というヤツだろうか。

 いやそんなはずはないだろう。どう考えてもこれは雨桐の嘘である。


 「え、そうなんですか!?」


 本気で驚く九。おい、信じるなよ。


 「お前な、俺みたいな性格捻じ曲がって地球一週してるヤツに彼女ができると本気で思ってんのか?」

 「言われてみれば、確かに・・・・・・」


 いや冗談だからね、一種の自虐だからね。自分で言ったことだけど、それで納得されると超傷つくんですけど!!


 「ひどい、やっぱりあのことをなかったことにするつもりなんだね」


 少し顔を背けて、影を帯びた元カノみたいな雰囲気を演じる雨桐。あれ、やたら演技うまいけどこいつ演劇部じゃなくて軽音部って設定だったよね。

 そんな迫真の演技に、九の天秤がまた傾く。


 「ひ、ひどいです折無君、雨桐さんが悲しんでいるではありませんか!」

 「いやどうしろと」

 「謝ってください。どうせ別れた原因は貴方にあったに決まっています」

 「なぜそうなる?」

 「なんとなくです!」


 なにその「わかれたげんいんはおりなしくんにあるとおもいました」みたいな小並感に溢れる回答。キレそう。

 しかしそれが面白かったのか、雨桐はくすくすと噴き出した。


 「九さんってお堅いイメージがあったんだけど、思ったよりかわいいんだね」

 「え、あ、ありがとうございます?」

 「ふふ、もちろんさっきの話は冗談だよ。私と折無くんじゃ釣り合いが取れないもんね」


 確かに雨桐は美人な方だし、活発で性格も明るい。軽音部に所属しているというのもポイントが高いだろう。間違いなく一年の中ではモテる方である。

 それに間違いはないのだが、本人の口から釣り合いが取れないとか言われるとイラッ☆っとくるものである。見た目だけで人を判断しちゃいけないって田舎のばっちゃも言ってたしな。ばっちゃと話したことなんてないけど。

 そんな微妙なタイミングで、店員さんが注文していたドリンクを運んでくる。

 俺達は自分の注文した飲み物を一口飲んで間を入れると、なんだか一段落ついた雰囲気が漂った。

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