いろいろと諦めているけれど、 3-10
「で、どうするよ?」
「何がですか?」
「俺達で部会長に推薦する人を決めていいって話」
「ああ、その話でしたら、せっかくなので私はやってみたいと考えていますが」
それはまぁ、意識のお高いことで。
「折無君はどう考えているんですか?」
「俺か? 俺はやる必要はないって考えてるけど」
さも当然とでも言うかのように俺がそう答えると、九は予想以上に驚いた顔をした。
「呆れました、補助委員に入ってなおそんなことが言えるとは」
「お前なんか勘違いしてるみたいだけど、俺はそこまで積極的に仕事するような人間じゃないからな?」
補助委員に入りはしたものの、俺のやる気ゲージは前とほぼ変わらないままだ。正直、課せられた仕事以上のことはしたくない。
大体仕事なんてものは、放っておいても増えるものだ。なのに自分から進んで仕事を増やそうなどというのは、狂気の沙汰に他ならない。しかし与えられたノルマをだけを素直にこなしているだけでは、仕事できない人間とみなされて上司から怒られる。ノルマって何なんだろう・・・・・・。
「でも、これは私達に与えられたチャンスだと思いませんか?」
ぐっと握りこぶしをつくり、九は俺に訴えるような眼差しを向ける。
「私達はまだ新米役員ですが、学園でも屈指の権力を持つ、部会長の候補者を推薦するなんて重要な使命を任せてもらえたんですよ。これは、先輩方が私達を期待しているという証なのではないでしょうか?」
「お、おう、とりあえず近いから離れようか」
熱弁を垂れながら迫ってきた九から、俺は一歩下がって距離を取る。
吐息がかかるほどの距離まで顔を近づけられた気がしたが、それに心を乱したのは俺だけで、本人は特に気にしていない様子。この子いろいろ大丈夫かしらん?
ごほんと一つ咳払いをして俺は冷静さを取り戻すと、九の顔を見て、やっぱりさっきのことを思い出して気恥ずかしくなってしまったので、顔を逸らした。
「あー、まぁ確かに生徒会役員達から信頼は置かれてるだろうな」
主に九が、だが。
「だがな、俺が言ってるのはそういう話じゃないんだ。そもそも、お前は前提から勘違いしてる」
「前提、ですか?」
「まずこの推薦制度は、部会長選挙に出馬したくてもできない文化部部長のために作られたものだ。もちろん運動部のヤツを推薦しちゃいけないなんてルールはないが、要するにこの制度は、やる気のあるヤツがなんらかの理不尽で出馬できない場合、その妨げとなっているものを生徒会で取り除いてやるってのが目的のものなんだ」
「えっと・・・・・・?」
「だから、元々部会長になる気のあるヤツがいない場合、この制度は必要にならないってことだ」
「言われてみれば確かにそうですね・・・・・・。でもこの制度がないと、やる気があっても恐喝が恐ろしくて出馬できない人も出てくるんじゃないですか?」
「だろうな、だからこの制度は存在するだけでいいんだよ」
まだ理解ができないのか、小首を傾げる九。
「つまり、この制度を使いたいって考えるようなヤツは、部会長にはなりたいが、恐喝とかが怖くて出馬できないって思ってるヤツがほとんどだ。そんなヤツの場合、まず前提条件として出馬する気が十分にあるはずだ。だったら、とりあえず生徒会室に来て自分から推薦制度を利用しようとするはずだろ」
「ああ、確かにそうですね」
「で、今年度はそういうヤツがいなかった。だから、生徒会役員が自分から探しに行く必要があった。なぜなら、生徒会役員は生徒の代表だ。最低でも、生徒にとって利のある部会長になりそうな候補者を探す姿勢だけでも見せておかないといけない」
でなければ、せっかく推薦制度があるのに、どうしてそれを使おうとしないんだという声が上がる可能性があるからだ。生徒会としては、生徒から職務怠慢とみなされる行動だけは避けなければならない。




