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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
第三章 いろいろと諦めているけれど、
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いろいろと諦めているけれど、 3-11

 「でも実際に私達が部会長にふさわしいと思える候補者がいたのなら、推薦制度を行使してもいいのでは?」

 「推薦制度は受ける側に出馬の意志がない場合適用されない。つまり、俺達生徒会は『部会長選挙に出ませんか』って候補者に声を掛けることはできるけど、強制的に出馬させることはできないってわけだ」


 はーなるほど、と九がぽんと手を叩く。

 ちょっと考えればわかることなのだが、どうやら真っ直ぐに考えすぎてしまう性格のせいで、周りが見えなくなってしまうことがあるようだ。


 「で、こっからが本題。推薦制度の締め切りは今週いっぱい、つまり今日を含めてあと三日しかないわけだが、あんなに手際のいい結月や東雲先輩が、こんなギリギリになって候補者を探していないなんて言うと思うか?」

 「言われてみれば。特に結月先輩なら、既に見つけていてもおかしくはないですね」

 「そうだ。そっから考えられるのは、もう結月は候補者を探し終えてるんだ。実際、一昨日俺達が生徒会室に呼び出された時、結月は『部室棟に用がある』と言っていた。何の用事だったのかはわからんが、結月の視点から行われた最候補者探しは、最低でもその時に終わっていたのは間違いない」


 だからこそ最終確認として、結月とは違う視点で物事を見れる俺達が今日こうして送り込まれた。

 故に俺達が候補者を見つけられなかった場合、その時点で今年の推薦枠はゼロということになる。

 ただ、候補者を無理に見つける必要はない。東雲先輩は先日候補者を「最大一人」まで決めることができると言っていた。

 つまり、最低ゼロ人でも全く問題はないわけだ。


 「ですが、それなら今日私達が候補者を見つければいい話なのでは?」

 「そんなの見つかるわけないだろ」

 「え?」


 真顔で即答してやると、九はわけがわからず固まってしまう。


 「あのなぁ、俺達はまだまだ新米のぺーぺー。そんな俺達が生徒会のプロである結月が探して見つけられなかったものを見つけられると思うか?」

 

 結月達生徒会役員は、これまで推薦候補者を探し回って結局それらしき人物はいないと判断したのだ。それを見つけ出すということは、いわばプロのデバッカーが見つけられなかったゲームのバグを、一般プレイヤーである俺達が見つけるようなもの。可能性が全くないとは言い切れないが、限りなく低いのは間違いない。

 さらに言ってしまえば、バグなんてあるかどうかもわからないものだ。無理してそんなものを見つけることに労力を注ぐくらいなら、最初からゲームをクリアすることに全力を注いだ方がいい。


 「既に部会長候補は出揃ってるし、推薦枠がなくても選挙はできる。それでもお前は無駄に労力をかけてでも推薦できる人を探したいのか?」


 諭すように言うと、九は怒られた子供のように俯いて黙り込んでしまう。

 少し悪い気分にもなったが、これは九のためにもなる話だ。欲張ってそこらに手を伸ばすのは構わないが、必要のないものにまで手を伸ばす必要はない。


 「わかったならはやく行くぞ。見回りの仕事はまだ―――」

 「折無君、私はそれでも推薦人を探したいと思います」


 思わず言葉が止まった。

 九に遮られたからという理由もあるが、一番の理由は呆れすぎて呆然としたからだ。

 こいつ今まで俺が語った話全部理解してるのだろうか。正直自分でもややこしい話をして理解してもらえてるかどうかわからないこと言ってるなー、とか思ってはいたが。


 「あのさ、俺の話聞いてた?」

 「はい、その上で私が出した結論です」


 馬鹿だ。馬鹿がいる。

 いや、理解していないのだろうか。俺の話に込められた、推薦人を探さない方がいいと思える本当の理由を。

 あえて、大きくため息を吐く。


 「お前わかってるのか? 生徒会役員が探し出せなかった推薦者を探すってことは、現役生徒会役員超えるってことだぞ?」

 「わかっています」


 いや、そうじゃない。この話の根本的な部分は、別にある。

 即ち、それは。


 「それって、自分が仕事の一部分であれ、現役生徒会役員を超えることができる自信があるってことだぞ」


 そう、傲慢だ。

 九沙奈は、自分にそれだけの力量があると考えて、推薦人を探すと言っているのだ。

 それを本人が意識しているかどうかはわからないが、たとえ無意識下であろうとその事実は変わらない。

 だが、九は批評とも取れるその意見を聞いても、表情は穏やかなままだった。


 「以前も、折無君は私のことを傲慢だと評しましたよね」

 「そんなこともあったな」

 「あと、私は『高貴なる者の義務』についてもお話したと思います」

 「・・・・・・」

 「そうです、私は自分が傲慢であることに対して開き直っています。だからいいんです、私はこの道を真っ直ぐ進むだけですから」


 なるほど、確かにそんなことも言っていたな。

 というよりも、これこそ九とちょっと付き合いのあるヤツなら、誰にでもわかるようなことだろう。

 九は、無駄な労力を使うべきではないとか、そんな理由程度で諦めるヤツじゃない。なんてことはない、何も理解していなかったのは俺の方だったということか。

 なにはともあれ、これ以上の問答は無意味だろう。


 「そうかい。んじゃ、行きますか」

 「え、どこへ?」

 「今お前が言ったんだろ、推薦人探しにいくぞ」

 「いいんですか?」

 「いいも何も、室長の意向なら仕方ないだろ。平役員の俺はそれに従うだけだ」


 ぶっきらぼうに言うと、九の顔にぱぁっと笑顔が咲く。

 なんだか照れくさくなって途中で止めてしまっていた脚をまた進めると、小走りで近寄ってきた九が俺の隣に並んだ。

 これから忙しくなりそうだが、それもまた一興だろう。なにより、この真っ直ぐなヤツがいる限り、退屈しそうにない。

 なんてことを考えている自分がいて、少し驚いた。ただ、これがこれからの自分の日常になるんだと考えると、それほど悪くはない気分だった。

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