いろいろと諦めているけれど、 3-9
次の日の放課後になって、さっそく俺と九は部会長選挙活動の視察を行うことになった。
ちなみに九と二人での活動となったため、並んで歩く俺達はかなり注目されていた。多分、九が男子生徒と一緒にいるのが珍しいのだろう。自意識過剰などではなく、嫉妬の視線も若干感じる。
ゴールデンウィーク前には九によるストーカー騒動もあったので、俺と九の間に何かあったと勘繰るのも無理はない。実際、何かあったわけではある。しかし、俺の横にいるのは紛れもない美少女だ。今にして考えてみれば、こいつと行動するということは、嫌でも目立つということになる。
ある意味、全国男子の夢見たシチュエーションだったが、俺はそれを体験しても暗い気分にしかなれない。
そうこうしている内に部室棟に辿り着き、さっそく中に入る。
市民会館を改築して造られた部室棟のロビーはかなり広く、部会長選挙に出馬する候補者が演説を行っているほどだった。今日は右手にサッカー部が、左手に野球部が、各々のユニフォームを纏って熱心に演説を行っている。熱心なのはわかるが、拡声器の音質が悪いのと、運動部独特の口調が出ているせいで、何言ってるかよくわからない。ちなみに運動部独特の口調というのは、「おはようございまーす!」が「代打バース!」になる感じだ。わからない人は一回「おはようございまーす!」を言う感覚で「代打バース!」と言ってみてほしい。
まぁこういうので肝心なのは、どれだけ熱心かということだろう。誠意さえ伝えることができたら、民衆に良い印象を与えられる。
実際、通行人は選挙活動に目を向けはするが、立ち止まって内容まで聞こうとする者はいない。大体の思想や目的なんかは、周りで部員達が配っているビラを見れば把握できるしな。
奥に進むと折り返し階段があって、その横に掲示板がある。そこには、部会長選挙に出馬する部長の写真と名前が大きく張り出されている。
「今のところ出馬するのは野球部、サッカー部、ラグビー部、テニス部、女子バレー部、バトミントン部、陸上部の七つか」
「出馬表明は今週いっぱいなので、まだ増える可能性はあります。なかなか熾烈な戦いになりそうですね」
学生ごときの選挙でそこまで熾烈になることはないと思うが、まぁそこはその場の雰囲気だろう。
しかし改めて見てみると、やはり文化系の部活からの出馬はない。話を聞く限りでは当然といえば当然だが、まだ締め切りまで時間はある。
今日俺と九が受けた任務は二つ。
一つは、風紀委員と協力して不正が行われていないかチェックすること。そのために、俺達は左腕に生徒会補助委員の腕章をつけている。
そしてもう一つは、推薦する部長を探すことである。
生徒会が設けた推薦枠は一つ。そして推薦を行う条件は、「ある程度の実績を持つ部活に所属しており、真にリーダーシップに優れた、生徒会役員が部会長にふさわしいと判断した部長」ということになっている。
かなり曖昧な条件だが、そこは生徒会役員を信用しているが故だろう。
とはいえ、それを一年坊で生徒会に入ったばかりの俺達に任せるとは、正直無責任だと思わなくもない。




