いろいろと諦めているけれど、 3-7
気合を入れてみたはいいものの、実際に仕事をやってみると楽なものだった。
というのも、大抵の仕事は生徒会本メンバーがさっさと片付けてしまうからだ。
あれから一日経って、放課後に再び生徒会室に集合した俺達は、さっそく仕事に取り掛かった。
普段粗暴な態度の結月も、ふわぽわして危なっかしい東雲先輩も、いざ仕事を始めてみるとその処理速度には目を見張るものがある。さすがは生徒会役員といったところだろう。
一方、俺達補助委員に割り振られた仕事は全体の二割程度で、九と分担して進めている。生徒会本役員には劣るものの、俺達もまぁまぁの処理速度である。
先日東雲先輩にはそれなりに忙しいと軽く脅かされはしたが、実際やってみるとそこまで忙しいということもない。もっとも、こういう雑用に慣れていない学生なんかがやれば多少てこずる仕事ではあったが。
時たま言葉を交わしつつも淡々と進めていくと、放課後の三十分前には仕事が終了してしまった。
本日は書類整理が大体と、部会長候補者のラグビー部部長が訪れ、エントリーしていった程度だ。正直に言ってしまえば、大したことは何もなかった。
「はい、みんなお疲れ様」
いつものふわぽわに戻った東雲先輩が、生徒会室にいるメンバーに紅茶を配る。
生徒会室という場所も相まって、なんだか上流階級のお茶会にでもいるような気分になったが、周りを見ると俺だけオーラが圧倒的に庶民だったので、幻想はとっととぶち壊すことにした。
全員で紅茶に口をつけ、一服する。正直俺は紅茶を飲む習慣などなかったので、茶葉の種類やら味やらはまったくわからなかった。おいしいといえばおいしいぐらいか。
ほうっと一息をつくと、ここから雑談の時間が始まる。
「それにしても沙奈ちゃんも弟くんも、初めてにしては仕事がすごく早かったね」
それは社交辞令というよりは、事実を述べているように思えた。というか、事実だろう。
実際俺と九の処理速度は一般以上ではあったし、今日のノルマどころか明日の分にまで手を出していた。
これも俺の雑用に身を投じ続けた日々が実を結んだものといえるかもしれない。あんまり嬉しくない。それと、九も俺と同じくらいの量を片付けていた。さすが生徒会に誘われるだけはあるだろう。
「私は以前から少しずつ仕事を教えていただいてましたから。驚いたのは折無君のことです。正直貴方がここまでできるとは思ってませんでした」
「地味に失礼だぞお前」
「あ、いえ、すみません、貴方が仕事のできない人間だと思っていたわけではなくて、予想以上にすごいんだなと」
「これくらい大したことないし、それに結月や東雲先輩には負けてる。まぁ、誰かと比べたりするようなもんじゃないけどな」
照れ隠しでもなんでもなく、俺は事実だけを述べる。
すると結月はくっくと笑ってティーカップをソーサーの上に置いた。
「謙遜はなんてやめればいいのに。現役時代のお前なら、私に迫るくらいの敏腕ぶりだったはずだ」
現役時代という言葉に、東雲先輩と九が反応する。
結月も詳しいことを他人に教える気はないようだが、思わせぶりな発言をするのは好きらしい。とはいえ、こちらとしては迷惑な話である。
これ以上追求されるわけにもいかないので、多少強引にでも話を逸らすことにした。
「明日からの仕事はまた事務作業なんすか?」
「ううん、明日は私達がここで事務作業をしておくから、補助委員の二人には部会長推薦候補者を探しに行ってもらいたいの」
部会長推薦候補者? と俺と九は首を傾げた。
すかさず、東雲先輩の説明が入る。
「基本的に部会長を決める権利を持っているのは部活に所属している生徒だけなんだけど、私達生徒会はある程度部会長選挙に介入する権利を持ってるの」
「介入って、そんな特別措置が認められてるんすか?」
「流石に投票操作とか、そういうのは認められないけどね。私達が介入できることは三つ。素行の悪い部会長候補者の選挙参加権を取り消すこと。問題のある部活動の部員に与えられている投票権を全て剥奪すること。そして、生徒会役員が部会長にふさわしいと判断した人物を一人だけ、部会長選挙に推薦枠として参加させることができること」
一つ目と二つ目はなんか中学生レベルの取り決めのような気もしたが、そもそもそういったケースが起きること事態が稀だろう。常識として、そういうルールを敷いておかなければならないという話だ。
気になるのは、生徒会から部会長候補を推薦できるという話だ。




