20.叫声
ミラは揺れる馬車の中で目をさました。
「殿下お目覚めですか!良かった!痛むところはございませんか?」
初老の兵士が、安堵した表情でミラを見つめていた。
「ここは…いえ!エド!エドはどこですか!!」
兵士は悲痛な表情でただ首を横に振った。
「そんな、そんなはずは!エドが!死ぬはずが…だって使命!使命があるのですから!」
「殿下、お気持ちは分かります。ですが…」
その兵士は見ていた。
ミラをスキルによって転移させる瞬間を。
ミラが逃げる時間を稼ぐために再び悪魔と退治する姿を。
5羽もの火の鳥を相手取りいくつもの傷を作っていくその体を。
もはや絶命しながらも1羽の悪魔の喉に食らいつき引き裂いた勇猛さを。
死してなおその体から武器を引き抜くことを許さぬ誇りを。
「馬車を戻しなさい!助けに向かいます!彼が…彼が死ぬはずがありません!戻りなさい!これは命令です!」
ダンッッッッ
兵士はミラを殴り飛ばしていた。
普通なら絶対に許されない決死の行動だった。
「彼を愚弄するのはやめていただきたい!彼がどんな思いで殿下を王国まで送り届けたのか、殿下ならわかるでしょう!!」
兵士は幾度となくともに戦い、死地をともにし、酒を酌み交わしたその男の最後の誇りが、傷つけられることを許せなかった。
「謝罪はいたしません。あと一時間程で砦につきます。それまで馬車の中でお休みください。」
そう言うと兵士は馬車から出て行った。
「ああああああぁぁぁぁぁぁ」
周囲にはしばらく悲痛な叫声が響きわたっていた。
それは高い夏の空でも吸い尽くすことができず、どこまでも響き渡っていた。
お読みいただきありがとうございました。
次回の過去話で二章も終了です。
今後とも宜しくお願い致します。
p.s.
ヨルシカ凄くいいですね!




