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陽炎  作者: 音音
二章 スカビオサ
21/24

20.叫声

ミラは揺れる馬車の中で目をさました。


「殿下お目覚めですか!良かった!痛むところはございませんか?」


初老の兵士が、安堵した表情でミラを見つめていた。


「ここは…いえ!エド!エドはどこですか!!」


兵士は悲痛な表情でただ首を横に振った。


「そんな、そんなはずは!エドが!死ぬはずが…だって使命!使命があるのですから!」


「殿下、お気持ちは分かります。ですが…」


その兵士は見ていた。


ミラをスキルによって転移させる瞬間を。

ミラが逃げる時間を稼ぐために再び悪魔と退治する姿を。

5羽もの火の鳥を相手取りいくつもの傷を作っていくその体を。

もはや絶命しながらも1羽の悪魔の喉に食らいつき引き裂いた勇猛さを。

死してなおその体から武器を引き抜くことを許さぬ誇りを。


「馬車を戻しなさい!助けに向かいます!彼が…彼が死ぬはずがありません!戻りなさい!これは命令です!」


ダンッッッッ


兵士はミラを殴り飛ばしていた。

普通なら絶対に許されない決死の行動だった。


「彼を愚弄するのはやめていただきたい!彼がどんな思いで殿下を王国まで送り届けたのか、殿下ならわかるでしょう!!」


兵士は幾度となくともに戦い、死地をともにし、酒を酌み交わしたその男の最後の誇りが、傷つけられることを許せなかった。


「謝罪はいたしません。あと一時間程で砦につきます。それまで馬車の中でお休みください。」


そう言うと兵士は馬車から出て行った。


「ああああああぁぁぁぁぁぁ」


周囲にはしばらく悲痛な叫声が響きわたっていた。

それは高い夏の空でも吸い尽くすことができず、どこまでも響き渡っていた。

お読みいただきありがとうございました。

次回の過去話で二章も終了です。


今後とも宜しくお願い致します。


p.s.

ヨルシカ凄くいいですね!

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