18.隻腕
すみません、次で二章のクライマックスなので今回は短めです。
「んっ、ここは?」
「お目覚めですか?良かった…」
まだ、日も登っていない暗い森の中でソールは目を覚した。
ダリルを倒したエドは、気絶したままだったソールを担ぎフィンセントから少し離れた森の中に身を隠していた。
「フィンセントの近くの森で…」
「エドっっっ!!!」
ソールは驚愕の表情を浮かべた。
「そ、その傷は?まだ痛みますか?手当は?なんでっ、こんなの、医療長様でも…」
「姉上、落ち着いてください。まだ痛みますが、手当は済んでおります。なかなかの強敵でしたので、仕方のないことです。倒せたことの方が奇跡と言えるでしょう。この体でも、グレンにだってちゃんと乗れましたし、姉上の一人や二人軽々と運べますよ。」
エドは取り乱すソールに、優しく声をかけた。
「しかし、これでは弓を使うのは難しいですね。しばらく食事は質素になるかもしれませんね。」
エドはいたずらっぽい笑顔を浮かべそう告げる。
バシッ
ソールは、エドの頬を叩いた。
「お願いですから、もう傷つかないで下さい。貴方を失ったら私は…」
ポロポロと涙を流すソールに対し、エドはどうすればいいか分からず。そっと左手で涙をふいてやることしかできなかった。
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「姉上の方はお体に異変はありませんか?そこまで強力な毒は盛られていないと思いますが。」
「ええ、大丈夫です。ありがとう、エド。後、ごめんなさい。さっきは気が動転していました。」
「謝らないでください。私を思って下さってのことであると分かっています。お体に障らなくてほっといたしました。」
「場所もバレてしまったでしょうし、この体ではろくに戦えません。かなりの強行で国境まで向かいます。あまり休憩を取れませんが、王国はもう目の前です。ご容赦ください。」
この世界の【治療魔法】でも、部位の欠損を治療する事はできない。自然に治る怪我の治癒力を高めその速度を上げることしかできないのである。
隠密により現在地がばれ、片腕を失った今、彼らには追手の手が届く前に何としても王国にたどり着かなければならなかった。
「もちろん、問題ありません。エドの方こそあまり無理をしないで下さいね。貴方を失うようなことがあったら皇国を滅ぼしてしまうかもしれませんよ。」
ソールはいたずらっぽく微笑みながら、その微笑みからは考えられないようなことを口にした。
「それでは、参りましょう。長居は無用です。お昼頃に一度も休憩を取ろうと思いますが、もし何かございましたら遠慮なく仰って下さい。」
二人はグレンに跨り、徐々に上り始めていた夏の鋭い陽射しを背に受けながら、まだ暗い国境に向けて進み始めた。




