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陽炎  作者: 音音
二章 スカビオサ
14/24

13.ラング・ハーレンウッド

「ラング・ハーレンウッド!」


エドは化物の剣圧によって痺れた右腕の痛みに顔をしかめながら漆黒の鎧をまとった人物を睨みつけた。


ラング・ハーレンウッドは皇国で二番目の戦力と称される"12騎士(テンプルナイト)"の一人である。"12騎士(テンプルナイト)"最強との呼び声も多い、皇国屈指の6つ持ち(・・・・)である。


エドとは少なからぬ因縁があり、幾度となく戦地でも鎬を削ったことがある。


「貴様がなぜここに!」


「ピーテルに放っていた密偵から怪しい二人組の情報があってね。すぐにピンときたよ、君がいるってね。流石に皇都から休まず飛ばしてきたから疲れたよ。」


「でもお陰で君を殺せる(・・・)。」


エドはしびれる腕に活を入れ、ラングに肉迫した。


(一撃で仕留める!)


エドにとって長期戦は不利だった。

そもそも、この男との戦いで一人でも増援が駆け付ければ致命的である。


しかし、最大の問題は男の持つスキルにあった。


ラングの持つ"【暗黒活性】"というスキルは常時放たれているスキル(いわゆるパッシブスキル)であり、闇にいる時間が長くなるほどステータスが強化され、光を浴びるほど弱体化するというものである。

王国軍には「ラングの首は昼に獲れ。」という格言があるほど有名な話であった。

幸いにして、日没からほとんど時間が経っていない為、日中に浴びた日光による弱体化がまだ色濃く残っているはずである。

逆に長期戦となれば疲労により弱体化するエドに対して、ラングは日の出まで強化され続けることとなる。



二人の刃が再度ぶつかる瞬間、


【陽炎】


エドは立ち消え、ラングの背後から必殺の一撃を放つ。


キンッ


「その技はもう見飽きているよ!」


エドの渾身のスキルは軽々と長剣で凌がれる。


「さあさあ、次はどうするんだい?早くしないと手も足も出なくなるよ?ウェインの時みたいに鎧を引っぺがすのかいぃぃ?」


ーーーー


けたたましい金属音で目を覚したミラは戦闘の邪魔にならぬよう少し離れたところで二人を見つめていた。


彼女はラング・ハーレンウッドという男を知っていた。


無論、いかに武才の無いミラといえども皇国屈指のラングの名くらいは耳にしたことがあるだろう。

しかし、それだけでなくエドとの強い因縁(・・)が関わる。


エドの父、ガーゼル・ギルダーは前任のミラの専属護衛であった。物心がついた頃からミラの傍らにおり、ミラも良くなついていた。


そして5年前、ガーゼルはラングに破れこの世を去っていた。


その日のことをミラはよく覚えていた。

エドと二人で外で遊んでいると、突然父である国王に呼び出され、ガーゼルの死を聞かされた。


ミラ自身、よく知る人物だけに衝撃を受けたが、本当に衝撃を受けたのはエドの姿だった。


ミラが気遣わしげにエドの顔を見たとき、彼は本当にいつものように仏頂面をしていた。


エドは、そうですかとポツリと答え。

「葬式の支度がありますので、しばらく王城を離れます。よろしいでしょうか?」

と、いつもの調子で述べた。


そして、許可を得ると普段と変わらぬ様子で部屋を出ていった。


ミラは、その精神力に寒気すら覚えていた。

いくら、アサシンとして修行を積み始めていたとはいえ、13才の子どもが取っていい態度ではなかった。


その3年後エドは、ラングの長男であるウェイン・ハーレンウッドを打ち取るが特に嬉しそうな顔をすることもなかったという。


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