12.ピーテル
二人は翌日の昼前、ピーテルの街に到着していた。
とある商会で二人は"ブラッドハニー"の売却と馬や旅の道具の買い付けを行っていた。
「そちらの"ハニーニードル"もご売却ですか?」
商人の男は人の良さそうな笑顔を浮かべ尋ねた。
"ブラッドハニー"の針は軽く、丈夫で非常に鋭いため最高級の矢の材料としてそれなりの額で取引されていた。その為、路銀の足しにしようとエドは倒した蜂から回収していた。
「ええ、お願いいたしま…」
その針がいつか王国の仲間達の命を奪う可能性に少々複雑な心境を抱えつつエドは針に手を伸ばしながら肯定しようとしていた。
「いえそれよりも、こちらの見立てをお願いしますわ。」
唐突にソールは、身につけていた品の良いイヤリングと指輪を外しながら述べた。
「ほう、これはなかなか上等な品ですね。」
商人はルーペであしらわれた宝石の傷をチェックしながら少し驚いたような声を上げていた。
もともと華美な装飾を好まないソールである為、国宝と言えるようなものではなかったが、それでも王女にふさわしい上等な品であった。
「姉上!それは姉上の大切なものでしょう!それには及びません!」
ソールは、優しい笑顔を浮かべた。
「私もエドと同じ思いですわ」
「それにエドは弓が上手ですから。このお金で弓を買い、その針で矢をこしらえましょう。これくらいの宝石、保存食を食べるくらいなら大したことありません!」
と、最後にいたずらっぽく笑った。
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さて、商談も済ませ最後に馬の買い付けを行っていたのだが、
「何だかどことなく兄さんに似ていますわね。」
商人に勧められた白い馬を撫でながらソールはそんなことを言い出した。
別に、彼女の兄であるチャールズが馬面なわけではない。容姿端麗な人物である。
ただ確かに、気品ある白馬でありながら、意志の強そうなくりっとした大きな瞳はどことなく彼の兄の持つ印象に通ずる物があった。
「姉上!流石に怒られますよ!」
少し大きな声を上げたエドの声も笑いをこらえて震えていた。
馬としても上等なものであったため、旅の仲間に加わることになったその馬が、いつの間にか"グレン"という愛称で呼ばれるようになっていったのは当然の成り行きであった。
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教会でシスターの【治療魔法】により傷を癒やしたあと、"夜切笛"を試したが反応はなかった。
この街の間者もやられたとするとあまり安全な街とは言えないと察し、既に日も傾き掛けていたが彼らはピーテルを出発していた。
「しばらくは、街によることはありません。一週間ほどで次の街につく予定です。申し訳ありませんが、我慢してください。」
グレンを操りながら後ろにしがみつく、ソールに向かって話しかけた。
ちなみに、いつもの仏頂面をしているが、背中に感じる温もりと柔らかさに背筋が固まり、ものすごく苦労して仏頂面をしているのは内緒である。
「分かりました。怪我はもう大丈夫なんですね?」
ソールは気遣わしげに尋ねる。
普段よりも何倍も大きく感じる背中にドキドキとしながら。
「ええ、すっかり治りました。ありがとうございます。直に日も落ちるのでそれまでに手頃なキャンプ地を見つけましょう。」
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しばらくして、キャンプ地に到着した二人は、買ってきた食材で簡単な夕食を取り、翌日に備え早めに睡眠を取っていた。
【獣王斬】
ギャーーーーン
二つの刃がぶつかり合い、けたたましい金属音が鳴り響く。
突如として【探知結界】の範囲内を瞬く間に駆け抜け、獣のような必殺の一撃が放たれた。
気を張りながら浅い眠りについていたエドは、寸での所で目を覚まし、辛うじて受け止めていた。
「腕を上げたじゃないか、エドワード!」
突然で申し訳ありませんが、「0.終話」の季節を変更しました。これまでの話に特に影響はありませんが、最も大切な話に変更を加えてしまい申し訳ありません。
今後とも宜しくお願いいたします。




