コンテンプト
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で、事の顛末をイリアに報告したら、まず結構な力で、イリアが無言で机を叩いた。ただひ弱な女子高生がいくら叩こうと、せいぜいちょっぴり大きな音がなるかな、と机が揺れる程度で壊れる、などということは起こるわけもなかった。
「あんたねぇ!あんたが着いていながらなんでぇ、なんでそんなことになったの!」
つばを飛ばさん勢いでイリアは俺を罵倒してきた。
正座をさせられ、時折周りの物に八つ当たりをしていた。
「しかも!精神作用を解くだけで良かったのに、なぁんで千人くらいの保健室送りを出すかなぁ?アルコール中毒とか阿呆すぎるんだけど!」
「えー、それを言うならエリスの拡散型スタンガンも似たようなもんじゃん」
つい反論してしまう。そして、すぐにしまった、と直感した。
イリアは起こっているときこそ一番頭が回る。つまり、相手の反論の短所を必ず突いていくる。嫌な特技だな、というのが俺の見識だ。
「あれは!まだ、すぐに目を覚ますでしょうが!でも、あんたのは下手すりゃ後遺症が残るでしょうが!すこしは考えて発言すれば?」
ほらね。
「それに、あんたはそこの留学生がその、『コキュートス』?ってのを再現した時点で気づけよ!何のためにあんたがいるのさ!」
「いや、不可能でしょ。だって、俺だって『コキュートス』にあれだけの魔法が内包されてるとか思わなかったし」
「それくらいは予想しろ!あんたも似たような魔法使えんだから」
そいつは無理強い、というやつだ。もとい理不尽、とも言うかもしれない。魔導師ですら未来予知は不可能だ。本当に未来予知をしたのなら、超能力者でもこの学園に務めさせりゃいいじゃん!結構そういう人間いるぜ?
「あと!そこの留学生!あんたにも責任はあるんだからね!故意にうちの学生に精神作用を使ったんだから」
「え?アレくらいも魔法も遠海の学生は防げないんですか?結構遅れてますね」
イリアの言葉に対して、氷空は真っ向から反論する。その安い挑発に、イリアはまんまと乗ってしまった。
「あんたねぇ!こっちはあんたがちゃんと反省してると思って、警告だけで済まそうとしてんの!それを何だと思ってんの!」
「だって、そうじゃないですか!決闘スペースに使われている防護障壁もあんまり新しいものじゃありませんでしたし、何よりも全くと言っていいほどに精神攻撃を想定していない。お宅の学園では精神攻撃をする学生はいないんですか?」
「精神攻撃はタブーじゃん!それを犯すバカがいるわけないでしょ!」
いや、いましたよね。一ヶ月くらい前にいましたよね。ブラックだか、ホワイトだかっていう名前のインテリ魔導師。
「それは随分とお甘いことですね。──ほんと、なんでこんな学園にいて兄上が腐らなかったのかが不思議なくらいです」
「は?何言ってんの?これ以上問題起こすようならミラノに送り返すよ?」
「別にそれでもいいですけど、困るのはそちらでは?」
どういう意味だ、とう視線を俺もイリアも氷空に向けた。
何が困るっていうのさ。
「もし、私がミラノでこの学園の障壁は旧世代のもの、という報告をしたらどうなるでしょうか?ひょっとしたら、生徒の安全性を問われることになるかもしれないですね。『もし、犯罪魔導師が学園に強襲を掛けてきたらどうしようもできない!』とか言われるかもですね」
氷空は楽しそうに言葉は並べ立てる。
その様を見て、俺は呆れて、イリアはさらに顔を怒りで歪ませた。もうこれはただの侮辱だ、と思ったからだろう。
そもそも、こいつが誰かとか何かに敬意を払うなんてことはない。そういう風に教育されてるし、兄である俺に向けているのはただのやせ衰えた競争心だ。
で、今こいつがこの学園に向けているのは蔑みの心。いい性格してるよ、全く。
「あんた立場ってものが……」
イリアは反論しようとするが、その行動を氷空が制した。彼女は口元に指を当てると、片目を閉じて開いている方の手を開いて、イリアに向けていた。
「立場がわかっていなのは貴女ですよ、ルージュ先輩。今、もし兄上がこの場にいなければ、私は貴女を秒殺できます。ええ、それはそれは鮮やかに殺せますとも。それを踏まえた上で発言してくださいね?」
もうこれは完璧な脅しだな。
事実だから尚質が悪い。
「それに、それは兄上にだって言えることなんです。兄上のことをさっきは随分な扱いをしていましたけど、もし兄上が社畜精神万歳、みたいな性格の人じゃなければ、その辺で一山幾らの肉塊になっていましたからね」
氷空は得意気に語るが、俺としてはただ憂鬱なだけだ。
俺が社畜精神万歳、みたいな性格とか、そんな悪い情報を流さないでよ。俺はそこまで落ちぶてねーよ。じゃなくて!
「あのさ、俺のこと悪く言うの止めてくんない?お前のこと肉塊にするよ?」
「それは勘弁してもらいたいですねー。肉塊程度になっても死にはしませんけど、痛いのは嫌いなんですよ」
「あはははははは、それを聞くとますますやりたくなっちゃうなー」
俺と氷空の間に険悪な空気が走った。第九層魔導師が険悪なムードを漂わせている中で、イリアは先程の威勢はどこへやら、少しだけ冷静になり、俺と氷空の反応を伺っていた。
そうやって、シュンとしてると可愛いのにね。




