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双華のディヴィーナ  作者: 賀田 希道
白夜来日編――Nebula ,she is
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エターナル・オブザーヴェーション・アーツ

 実を言えば、俺は氷空が得意としている魔法が使えない。だから、ここは正直に知識だけを提供してやるとするか。


 「ああ、えとゴメン。俺実は氷空の得意魔法使えないんだ。アレはいわゆるあいつだけの特別な魔法だからね」

 「特別な魔法!それはつまり、王やアーサーが使ってた瘴素偽装魔法みたいなやつかい?」


 ずいずいと聞いてくる雫李はどんどん俺に顔が近くなってくる。うわー、このまま抱きしめたいな。

 自分の欲求を我慢して、俺は話を続ける。


 「まぁ、そんなもんだな。ただし、アレはあいつ以外には使えない固有魔法だ。神様から与えられた祝福だな」

 「ふーん、でどんな魔法なの?」


 神様からの祝福云々の話はどうでもいいのかよ!普通だったら、そっちを気にするだろ。まぁ、そっちも同時に説明すればいいか。


 「氷空が得意としているのは、固有魔法の一つ、『永久観測魔法』だ」

 「何それ?監視魔法みたいなやつ?」


 文字だけ聞いても理解できないよ、という顔を雫李はしていた。うん安心してくれ。俺も最初はそうだったから。


 「『永久観測魔法』は遅発系の変質系統魔法だ。この魔法を一言で言うんだったら、チート、だな。まず、この魔法を発動させると、それまで自分が観測してきた、全ての系統の魔法が回避される。物理的な回避でなく、概念的な回避だ。

 まぁ、簡単に言うと、一度でも見た魔法なら、その魔法はもう氷空には一切通用しないってことだ」


 だから、当然俺の凍結魔法の影響も受けない。例え、時間が止まったり、地球の力の運動が止まっても、氷空は自分の意思で動き続けることができるのだ。

 少なくとも、魔法では氷空は殺せなくなる。


 ならば、槍とか剣とかで殺せばいいではないか、と言う奴もいるが、例え魔法で強化した武器でも第九層魔導師クラスの障壁を破ることは不可能だ。

 可能性があるとすれば、契約神器だが、それを召喚する前に氷空に消されるのがオチだろう。


 極論、世界で氷空を殺せる魔導師は存在しない。核兵器でも無理だろうねー。


 「そんな、チート魔法が存在するなんておかしすぎるね」

 「非魔導師からすれば、魔法が使える俺ら全員チートなんだけどね」

 「あはははは、それは言えてるなー。確かに、そんなボクらがチート、なんていう言葉を使うのはちょっと道理が成ってないね」


 これは失敬しました、とばかりに舌を出してあざとさアピールをしてみせた。柔らかい桃色の舌は厚さ一ミリもない唾液が乗っていて、その光沢が鮮やかに彩られる。

 さながらガラスで作られたかのように、曇り一つないその舌は舐めようと思えばすぐに手が届くほどに近く、衝動は抑えがたいものがあった。


 「あの……ダイジョブ?」

 「へ?……ああ?……うん」


 俺が手を伸ばそうとした時、雫李はすでに舌を引っ込め、その瞳を俺に向けていた。

 うん、決して色欲に支配されそうになっていた、とかじゃないから安心してくれ。俺は正常、そう正常以外の何者でもないのだから。


 「なんか意識が飛んでたっぽいけど、ひょっとしてアレかい?闇に引かれる的な?」

 「うん、ないから。そんなことないから。俺クラスになればそんな風に弱い心を突かれる、なんてことにはならないから」


 必死に否定するから逆に怪しまれたが、とりあえず、だ。


 「氷空に勝ちたかったら、まずは『永久観測魔法』が発動する前にケリをつけることだ。幸いなことにアレは遅発系の魔法だ。行使してから発動するまでに、一分くらいのラグがある。行使されたらその一分以内にケリをつけろ」


 最後にこう付け加える。


 「もし、その期間内に倒せなかったら、勝負を降りろ。でないと……雫李の魔導師としての人生はそこで終わる」


 それは比喩でもなければ、脅しでもない。

 決定された事実だ。

 あの氷空と、あの女を降した数少ない魔導師の俺が言うのだから間違いない。


 「一応、忠告として受け取っておくよ。でも、ボクも全力を出して、先輩の妹さんを潰すつもりだ。だから、見ていてくれ」


 言外にもしものことがあったらボクを守ってくれよ、と雫李は言っていた。俺が嘘を言う訳はない、という安易な考えからの、楽観的な思考形態だ。

 無論、危なくなったら助けるさ。執行委員として、ね。断じて先輩だから助ける、なんていう理由は使わないさ。だって、かっこ悪いし、えこひいきじゃん、それ。


 役職としてでなく、関係性で人を助けるのは間違っている。そういう意味でいえば、よくいる困っている人を助けるヒーロー的な立ち位置の人間はかなり嫌いだな。

 だってさ、ヒーローはボランティア活動だから、感謝はされど金はもらえないでしょ?それにする必要もないのにヒーロー活動するっていうのは、少しだけ虫酸が走る。


 「ああ、できれば雫李には死んでほしくはないしね」


 ちなみにこれは俺の本心。誰かが死ぬっていうのは嫌だし、それがことさら自分の目の前で死ぬのは辛い。それにさ、美人が死ぬのは国家予算並みの損失じゃないの。

 美人は金じゃ作れない。なぜなら、美人の遺伝子はプライスレス。(魔導師の世界では美女はいくらでもいるけどね)


 ひとしきり氷空についてのネタバレをしたところで、今日の特訓はお開きにした。

 ついでを言えば、その後ずっと氷空が島に来るまで特訓に付き合わされた。



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