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双華のディヴィーナ  作者: 賀田 希道
白夜来日編――Nebula ,she is
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ラック・トレーニング

 俺が下宿している寮にはいくつもの訓練場がある。

 その一つに、寮に帰るなり、俺は入れられた。無論着の身着のままである。せめてバッグくらい戻させてよ。


 「さぁ、ここでみっちり特訓させてもらうよ!」


 うーん、ここまで好戦的な奴だとは思わなかったなー。正直だるいんだよなぁ。断るのも気が引けるし、適当に遊んでやるか。


 「じゃぁ、まずは雫李の好きな魔法で攻めてこい。鍛えるにしたって、得意な魔法がわからなかったら、どう鍛えりゃいいかわかんないからさ」


 そもそも俺に特訓を教えられるようなスキルはない。こういうのって、山奥に住んでいる仙人みたいなジーさんとかに頼むもんじゃないの?

 少年漫画にそう描いてあったよ?俺年齢足りないんですけど。


 「なるほど、それもそうだね。じゃぁ、ボクの得意系統の魔法で行かせてもらうよ。Ex・persona!」


 雫李が発動させた魔法は、一瞬だけ白い閃光を放つ。

 そして、次の瞬間強烈な吹雪が俺に襲いかかった。一瞬だけ氷結魔法かと思ったが、そんなものではない。もっと面倒な類の魔法だ。


 さっき雫李が使った魔法、どこかで見たことあるような気がするんだけどなー。


 「Clypeus」

 思考を停止し、障壁を展開する。超が三つは付くくらい分厚い障壁だ。魔法で発生させられた吹雪であろうと、完全に防ぐことができる。


 「そんなもんか?」

 防ぎきったのを確認して、俺は障壁を解除する。これでなんか飛んできたら、大恥もいいところだ。


 「あれ?今のはけっこうな大当たりなんだけどなー。なんで、傷一つついてないの?」

 不思議そうに雫李は首を傾げた。

 どうやら、あの程度の攻撃で俺を倒せると思っていたらしい。舐められたものだなぁ。


 「あれくらいで俺が傷を負うかよ。かすり傷だって負わない」

 凍傷は負うかもだけど、と言外に補足した。


 「うーん、ボクのあの魔法で傷一つ負わないとかやっぱ化物だね、第九層魔導師っていうのは」

 「今の魔法……」

 「あれ?ひょっとして見るのは始めて?今のはね……」


 自慢げに説明しようとする雫李の口を制して、俺が口を開いた。


 「今の魔法は、未来を再現する魔法だな?」

 「せいかーい!やっぱり、先輩は博識だねー」


 嬉しそうに笑う雫李だが、ことはそんなに単純じゃない。

 未来を再現する、言うは安いが、行うは難しだ。まず、魔導師には未来視、という技能はない。ゆえに、未来を再現する魔法は事実上再現は不可能だ。


 でも、ある可能性として、それが可能になる。

 未来を勝手に創造することだ。

 未来という液体に形を与えることで、そのいつ来るかもわからない未来を再現しているのだ。この魔法は時系列を操作することに長けた魔導師以外には扱いが難しい。


 ともすれば、単純な破壊力だけを追求した魔法の数段厄介だ。


 「そんな、危ない魔法が使えるなんて思わなかったよ」

 「そうだね、普通は思わないよね。でも、」


 一旦言葉を切り、雫李は続ける。


 「これはボクの持つ数少ない攻撃魔法なんだ。今のは人類が滅びてから数百万年後に起こる吹雪、という想像の元、そういう未来を創造した結果なんだけど、どう?」

 「面白い魔法だな。で、今のが全力?」

 「んー、全力の一歩手前だね。ボクは所詮魔導師だから、魔導師の想像力には限界があるからね」


 今のが全力一歩手前の出力なら、氷空には届かないな。意表を突くことはできると思うが、それだけだ。それ以上は何もできない。

 戦う際に相手がどんな未来を再現するかはわからないが、それでもダメージにならないとわかっていれば、気にするようなものではないのだ。


 自分に自動防御障壁でも使っておけば対処できる。

 もう少し威力が高ければ、警戒に値したんだけどなー。


 「オーケー、まずその未来再現魔法は氷空には通じない。だから、そいつを伸ばすのは止めね」

 「えー、それじゃあ、ボクはあんま強い威力の魔法はないよ?」


 困り果てたように、雫李は意見した。分からないでもないが、通じなものは通じないんだから、しょうがないだろう。

 さぁて、どうやって雫李を鍛えようかしらーん。


 「まずは氷空がよく使う魔法を教えとく。ま、正確に言えば魔法ではないけどね」

 「はい?」


 疑問符を浮かべる雫李をよそに、俺は氷空がよく使う()()を再現する。


 「白楼(ヘクト・ルー)

 俺の心臓に一瞬激痛が走ったかと思えば、無数の白い桜の花びらが訓練場に出現した。それらは地面に触れると同時に消え、すぐに天上から新しいものが現れる。


 その光景は美しく、幻想的であった。室内でなく、野外でやれば絵になった光景だろう。

 その光景に雫李も目を奪われていた。


 「なんだい、これは?こんな魔法があるのかい?」


 雫李の反応は当然のもので、こんな魔法を見たものはいないだろう。そもそも、これは魔法ではなく呪術だ。


 「こいつは俺が呪術を使って、作り出した幻影だよ」

 「幻影?でも……」


 雫李は舞う花びらの一枚をつかむと、握ってみせた。


 「これにはちゃんと実像があるよ?それともこれは脳みそに干渉しているっていうこと?」

 「いや、雫李の脳みそは正常だよ。こいつは相手の触覚を誤認させるんだ」


 俺の説明を聞いて、雫李は驚いたように嘆息した。

 ちょっとだけ気分がいいな。

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