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双華のディヴィーナ  作者: 賀田 希道
九騎士決闘編――Nine round of Knights
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サンダー・ダンス

 エリスが俺との決闘の場に選んだのは、この寮で一番巨大な地下闘技場。その広さは東京ドーム一個分に匹敵する。飛鳥島地下三十メートルに存在し、地上とつながっているのは三台の水圧式エレベーターのみ。

 この闘技場は、上の方の闘技場以上の分厚い結界が張られていて、例えこの島が破壊されてもこの闘技場は無傷で残る、と言われているほどである。


 イリア曰く、第九層魔導師の最大の一撃にも耐えるらしい。多分、嘘だとは思うけど。

 しかも、この闘技場はあらゆる盗聴、盗撮魔法が弾かれる仕組みになっている。今日の午前中に雫李が使っていた魔法の上位互換と言ってもいいかもしれない。


 きちんと舗装された殺風景な地面は、非常に固く、鋼を連想させた。周囲には上の闘技場の様に観客席が用意されているが、それはただの演出だ。あの観客席には防護魔法がかかっていない。つまり、まほうが一直線に観客席を破壊する、ということだ。


 対するエリスは、前に戦ったときと違い、俺の魔法を警戒しているはずだ。凍結魔法を使えば、勝負はすぐに終わるが、多分そんな安易な手には乗ってこないはずだ。

 すでに二度俺の魔法を見ているエリスは、その対策をしているはずだ。例えば俺が言葉を紡ぐスキを突いて、雷撃を見舞ってくるとかだ。


 事前に自動防御魔法でも自分に使っとこうかな?


 「様子見は終わったか?」

 少し離れたところから、エリスが叫んだ。俺は肯定を示すつもりで、ああ、叫んだ。


 と同時に、無数の雷撃が俺めがけて飛んできた。速度は音速には達しておらず、ラグがあったのでぎりぎり避けることができた。

 開始早々だな。


 「De・institutione・ferro、Auto・defensionis」

 これで雷に撃たれても気絶しないようになって、尚且つ自動で雷を防御障壁してくれるはずだ。とはいえ、少しだけ距離があるな。距離を詰め……


 「Tuono・casuale!」

 先程の雷激と同じものが飛んできたな、と思ったが、それは間違いだった。一箇所に時間差で攻撃を撃ってきやがった。


 いくら自動防御できるとはいえ、強度にも限度がある。同じ箇所に連撃なんて喰らえば、簡単に障壁は砕け散る。

 「Quid・tumet!」


 何も考えずに飛んでくる雷撃の力の進行方向を変えた。かなり瘴素を消費する荒技だが、この際仕方ない。自動防御障壁を破壊されたら、あの速度の雷撃に対処はできない。

 何より、速度とキレが以前とは別物だ。撃たれたら障壁を張るのは苦しい。


 力の向きを変えられた雷撃は観客席に突っ込み、いくつかの席を粉々に砕いた。あれを自分が食らっていたと思うと、背筋がゾッとする。


 「Acies・ferro!」

 距離があるので、凍結魔法を使うわけにはいかず、俺の得意な霧系統の魔法を行使する。霧系統の魔法は消費瘴素が少なく、尚且つ使い勝手がいい。


 俺が放った五本の鉄の線は一直線にエリスに突っ込んでいく。あれらには重さや切れ味はないが、ただ一つ、貫通生だけには秀でている。人の生足にでも触れれば立ちどころに貫通するだろう。

 そこそこの速度があったはずだが、エリスは鉄線を軽々と避ける。しかも避ける最中に雷撃を撃ってくるんだから、こっちは回避せざるを得なかった。


 「Hastam・volant・de・multiple!」

 雷撃に対する迎撃とばかりに複数の半透明な槍を投げつける。しかし、雷相手に空気でできた槍などあっさり砕け散った。


 いくつかの雷撃が俺に直撃し、俺はボロ雑巾のように闘技場で土埃をあげた。ゴロゴロと衝撃の影響で吹っ飛び、なんとか体勢を立て直すが、追撃の手は止まない。


 単純な雷撃である分、極めればその性能は計り知れない。次々と向かってくる雷撃のせいで、防御障壁はすでに粉々だ。

 精神的に、雷撃を受けても気絶はしないが、尋常でないほど体が痛い。これだと気絶したほうがまだマシかもな。正直なめてたわ。


 「Pura・aqua・prote!」

 相手が雷撃を撃ってくるならこっちは純水で対抗するしかない。あいにくと、純度百パーセントの水は電気を通さない。そんな雷なんて効かないもんねー。


 シュワ、という擬音がふさわしい現象が起きた。


 土煙に紛れて接近してきたエリスが純水の盾を切り裂いたのだ。その影響で、水蒸気爆発が起こる。高熱で液体が急激に気化された証拠だ。問題はそれを行ったのが、何か、ということだ。

 盾を切り裂いたのは、恐らくは急造であろうグリップがゴムでできた西洋剣。その刀身から、陽炎が見えた。熱量からして百度や二百度は超えているだろう。


 「雷の熱量か……」

 それに気づいて、感嘆せずにはいれなかった。


 雷の厄介な点は衝撃の他にもう一つある。それが熱量。事実として、さっきの雷撃で俺の制服の一部は焼けている。

 衝撃は障壁で防げても、熱量は防げなかったのだ。


 「雷の剣、とでもいうべきだろうか。この剣に至るのはかなり苦労したぞ?」

 エリスは勝ち誇ったように俺を見下ろす。


 確かに俺とエリスの距離は数メートル程度。詰めようと思えば一瞬で詰められる距離だし、その速度は俺が紡ぐよりも早いだろう。

 とはいえ、素人の剣だ。俺が避けられないわけはない。

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