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無能扱いされた少女たちの才能が見える俺、適材適所で最強国家を築く  作者: 浅入燈馬


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第十八話:盤上の布石と、反撃の誓い

 猫娘族の里に、新たな朝が訪れた。

 昨夜の激闘が嘘のように、盆地には柔らかな陽光が降り注いでいる。しかし、村を包む空気は依然として重い。家々の隙間からは、武器を点検し、バリケードを補強する村人たちの切実な物音が響いていた。

 ユウマは一人、村の中央にある村長宅を訪ねていた。

 通された応接室で待っていたのは、疲労の色を隠せないフェリスだった。彼女はユウマが席に着くや否や、深く腰を折って頭を下げた。

「……ユウマ殿。まずは謝罪させてほしい。旅の者であるお前たちを、我が里の死活問題に巻き込み、危険な目に遭わせてしまった。本当に申し訳ない」

 フェリスの声は低く、沈んでいた。里の長として、部外者に頼らざるを得なかった己の無力さを噛み締めているようだった。さらに彼女は、昨夜の戦いで怪我人を一人も出さなかったことに対し、ユウマたちの尽力に心からの感謝を伝えた。

「顔を上げてください、フェリスさん。僕たちは自分たちの意思で残ったんです。それに、昨夜村を守り抜いたのは僕らではなく、ティオナさんです。彼女がたった一人で盾を掲げ続け、命懸けで皆を守った。その事実を、どうか忘れないでいてほしい」

 フェリスは一瞬、言葉に詰まったように視線を彷徨わせた。

「……ああ、分かっている。彼女の力は……我らの想像を遥かに超えていた。だが、だからこそ皆、どう接していいか戸惑っているのも事実なのだ。あの赤い瞳と圧倒的な武威は、平和に慣れた我らにはあまりに刺激が強すぎる……」

「それでも、彼女はこの村を愛しています。それは昨日、彼女の背中を見ていた僕が保証します」

 ユウマは、昨夜の狼男族の引き際から、さらなる大規模な襲撃が近いことを予見し、フェリスに提案した。

「フェリスさん、僕たちに里を守る協力をさせてください。ティオナさんを含めた僕ら四人で、狼男族を迎え撃つ作戦を立てたいんです」

 フェリスはしばらく沈黙し、ユウマの瞳の奥を覗き込んだ。そこに迷いがないことを確認すると、彼女は深く頷いた。

「……分かった。この里の運命、お前に預けよう。戦える者たちには、お前の指示に従うよう命じておく」

 空き家に戻ったユウマを待っていたのは、三人の少女たちだった。ユウマは村長から全権を任されたことを伝え、テーブルの中央に地図を広げた。

「皆、聞いてくれ。作戦会議を始める。目標は、狼男族を単に追い返すことじゃない。二度とこの里に手出しできないほど、徹底的に叩き潰すことだ」

 ユウマの宣言に、リリィ、ルネ、そしてティオナの表情が引き締まる。ユウマはティオナの方を向き、真剣な眼差しを向けた。

「作戦の要は、ティオナさん。君だ」

「はい……っ! ……あの、ユウマさん。もしよろしければ、私のことは『ティオ』と呼んでいただけないでしょうか。これから一緒に戦うのであれば、その方が、心強い気がいたしますので」

 ティオナは少し照れたように、だが勇気を振り絞るようにして提案した。ユウマは一瞬驚いたが、すぐに柔らかく微笑んだ。

「分かったよ、ティオ。……改めて、力を貸してほしい」

「はい! ……私にできることなら、何でもおっしゃってください」

 ユウマは地図を指し、具体的な指示を出し始めた。

「まず、敵は鼻が効くが、知能よりも本能で動く傾向がある。リリィ、刺激の強い草花を集めて、特定のルートに『臭いの罠』を作れるかい?」

「お任せなのぉ! 狼さんたちがクシャミして涙目になっちゃうくらい、凄いのを用意するよぉ」

「ルネは引き続き、敵の正確な位置の検知を。そして――」

 ユウマは地図上に猫娘族の守備隊を配置する印を書き込んだ。

「一番の課題は、猫娘族の戦士たちだ。彼らは機動力はあるが、連携が取れていない。ティオを『不動の壁』として中央に据え、その左右を村の戦士たちがカバーする布陣を徹底させる。彼らには、ティオが防いで生じた隙を突く『追撃の型』を訓練してもらう必要がある」

 単にティオが一人で無双するのではなく、彼女を起点に村の全員が機能する仕組み。それこそが、ユウマの考える勝利の形だった。

「猫娘族のみんなには、ティオの盾を信じて動く練習をしてもらう。明日から厳しい訓練になるが、フェリスさんには許可を取ってある。……奴らが後悔するほどの反撃を見せてやろう」

 ユウマの言葉に、三人の少女たちは力強く頷いた。孤独だった少女ティオは、今、仲間たちと共に、自分の居場所を勝ち取るための戦いへ向かおうとしていた。

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