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無能扱いされた少女たちの才能が見える俺、適材適所で最強国家を築く  作者: 浅入燈馬


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第十七話:盾の休息と、思わぬ共通点

 激闘の余韻が残る空き家の夜。

 外では夜風が木々を揺らし、時折、遠くで夜鳥の鳴き声が響いているが、室内には温かい湯気と、どこか安堵したような穏やかな空気が満ちていた。

 壁に立てかけられたティオナの巨大な盾は、部屋の隅で静かにその役目を休めている。ユウマが用意した温かいお茶を手に、ティオナ、リリィ、ルネの三人は、小さな木製のテーブルを囲んでいた。

「……あ、あの。このお茶……とっても、いい香りがするです。……心が、落ち着くです」

 ティオナは両手で大切そうにカップを包み込み、あどけない顔を綻ばせた。その赤い瞳は、先ほど戦場で見せた鋭利な輝きとは対照的に、今は焚き火の火を映して柔らかく揺れている。

「そうでしょぉ? ユウマさまがぁ、道中、珍しい薬草の葉を見つけて乾燥させておいてくれたんだよぉ。疲れが取れるんだってぇ」

 リリィが**ゆさっ**と胸を弾ませて身を乗り出し、自慢げに微笑む。その無邪気な様子に、ティオナは少しだけ目を丸くした。

「ユウマさんは……本当に、不思議な方ですね。戦う力はないとおっしゃるのに、あんなに的確に指示を出してくださって……。私、あんなに『背後を任せられる』と感じたのは、生まれて初めてでした」

「……ユウマさま、すごいですぅ。……でも、ティオナさんも……すごかった、ですぅ。あの大きなワンちゃんたちを、ドーン!って……格好よかった、ですぅ」

 ルネがオッドアイをキラキラと輝かせながら、ティオナを見つめる。吸血鬼という種族ゆえに、彼女もまた「特別な力」を持つゆえの孤独を知っていた。だからこそ、ティオナの強さとその裏側にある優しさに、強く惹かれているようだった。

「……ありがとうございます、ルネさん。そう言っていただけると、盾を掲げてきた日々が報われる気がいたします。……私、ずっと、一人でいいと思っていたのです。誰にも怖がられないように、村の隅で静かに武器を磨いて……有事の時だけ、盾になればそれでいいのだと」

 ティオナはふと、遠くを見るような目をした。

 彼女の脳裏には、かつて村の祭りの日、楽しげな音楽が聞こえてくる中、一人で古い盾の錆を落としていた寂しい夜の記憶がよぎっていたのかもしれない。

「でもぉ、一人は寂しいよぉ。リリィもねぇ、ユウマさまと出会う前はぁ……なんだか、いつも探し物をしているみたいに落ち着かなかったのぉ。でも、今はねぇ、こうして皆でお芋を食べたりぃ、お話したりするのが、一番の宝物なんだよぉ」

 リリィの温かい言葉に、ティオナはポツリと漏らした。

「……宝物、ですか。……はい。今の私も、そう思います。皆さんと出会えて、良かった……です」

 少女たちの会話は、戦場での緊張が嘘のように和やかに弾んでいった。ルネが道中のおかしなハプニング――ユウマが大きなキノコに驚いて転んだ話などを披露すると、ティオナは「くすくす」と鈴を転がすような声で笑い、リリィは笑いすぎてその豊かな胸元を震わせていた。

 ユウマは少し離れた場所で、地図を確認しながら彼女たちの様子を盗み見ていた。

(……よかった。ティオナさんも、少しは打ち解けてくれたみたいだな)

 彼女のような逸材が、孤独のあまりその心を閉ざしてしまうのは、あまりにも惜しい。何より、彼女が笑っている姿を見て、ユウマは自分の胸のつかえが少しだけ取れたような気がしていた。

 だが、そんな和やかな空気の中に、リリィがふと思い出したように、悪気のない言葉を投げかけた。

「ねぇねぇ、そういえばぁ。前からちょっと、不思議に思ってたんだけどぉ」

 リリィはカップを置き、じーっとティオナを見つめ、それから隣のルネ、そして自分を見比べた。

「ユウマさまの仲間になる女の子って……なんだか、みんな、おっぱいがとっても大きいよねぇ?」

「…………へ?」

 ティオナが飲んでいたお茶を吹き出しそうになり、顔を一気に真っ赤に染めた。

 リリィはいたずらっぽい笑顔を浮かべると、座ったまま、自分の豊かな胸を両手で寄せるようにグイッと持ち上げた。服の生地がはち切れんばかりに強調され、ユウマに見せつけるように身体を捻って振り返る。

「ねぇねぇ、ユウマさまぁ! もしかして、ユウマさまの好みで選んでるのぉ?」

「ちょ、ちょっと待て、リリィ! 何を言い出すんだ!」

 ユウマは文字通りタジタジになり、手に持っていた地図を落としそうになった。額からは冷や汗が流れ、視線のやり場に困って天井を仰ぐ。しかし、追い打ちは止まらない。

「……あぅ。……確かに、ユウマさま、時々、じーっと見てる時……あるですぅ……っ」

 ルネまでもが、顔を真っ赤にしながらリリィの仕草を真似するように、自分の胸を腕で寄せて持ち上げ、恥ずかしそうに上目遣いでユウマを見つめてきた。ルネもまた、リリィに負けず劣らずのボリュームを誇っており、その破壊力にユウマは目眩を覚える。

「ル、ルネまで!? それは観察だ! 具合が悪くないか、天秤で数値を見ようとしてるだけで……!」

 ユウマの必死の弁明を余所に、ティオナはさらに顔を赤くし、両手で自分の胸元をぎゅっと隠すようにして俯いた。

「リリィさん、ルネさん……そんな、はしたない……っ。ユウマさんが、その……困っていらっしゃいます……っ!」

 指の間から覗くティオナの赤い瞳は、羞恥に揺れている。だが、彼女のスリムな体格に対して、そのボリュームは隠しきれるものではなく、むしろ隠そうとする動作がかえってその質感を強調していた。

「あはは! ユウマさま、お顔が真っ赤だよぉ!」

「……ユウマさま、エッチ、ですぅ……」

「ティ、ティオナさんまでそんな目で見ないでくれ! 誤解だ、完全に誤解なんだ!!」

 ユウマは顔を押さえ、深くため息をついた。管理職として、どんなトラブルにも冷静に対処してきた自負があったが、三人の少女たちの容赦ないツッコミと無防備な攻勢にだけは、どうやら『天秤』も役に立たないようだった。

 外の闇は深まっていたが、四人が集う空き家の中には、家族のような温かさと、絶えることのない笑い声がいつまでも響いていた。

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