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商業ギルドにて、突如として襲われたリナ。
受付の制服を着た女は、床の大理石を削るほどの風の刃を何度もリナに向ける。
「ちっ、ちょこまかと!」
「わたし、恨みを買うようなことしましたっけ!?」
刃をかわしながら声を張り上げる。
目の前の彼女は初対面。当然、恨みを買うようなことをした覚えはない。
「恨み……恨みだと?」
あるとすれば、点火杖事故の被害者家族か。それならば、話を聞くべきだろうが……。
「恨みも何も、貴様!魔道具などというふざけたものを作っておいて!!
選ばれし我らの魔法をどれだけ侮辱するつもりだ!!」
あ、違う!コイツ魔法主義者だ!!
「死をもって償え!大罪人が!!」
殺気のこもった風の刃を跳ねるようにかわす。
レイリーアに言われたことは正しかったらしい。本当に狙われてしまった。
「リナちゃん!大丈夫!?」
「ごめんね!不覚をとったわ!」
体勢を立て直した騎士2人がリナの前に立つ。
「ルイーズさん、サリーさん!」
そんな名前だったのか。
「あの人はわたしに任せてください!相手が魔法使いならなんとかなります!」
「貴女守られる側なのわかってる!?」
「でも長引けば建物が持ちません!」
リナの言葉通り、飛んでくる風は商業ギルドの柱を抉り壁に穴を開けている。
「どうせ狙いはわたしなんですから!戦います!!」
「……あーもー、わかったわよ!少しでも危なくなったら割り込むわよ!!」
「ありがとうございます!!」
リナは薄刃の剣を抜く。
女の起こした風魔法を浴びたその剣は淡く光りその魔力を吸い取る。
「はぁっ!?」
突如自分の魔法が消え去り、女は目を見開く。
「モード“氷”、一突!」
その隙を見逃さず、リナは吸収した魔力を放出。刺した地面から氷が広がり女の足を掴んだ。
「魔道具か!魔法も使えない劣等種の分際で!!」
憎しみを込めた瞳で女は風の刃をリナに向ける。
しかしそれも全て剣によって吸収された。
リナは女に近づき、その喉元に剣先を向けた。
「もうやめませんか。この魔剣マギアブレイカーがある限り、あなたの魔法はもう効きませんよ」
「ふざけるな!そんなイタい名前の武器ごときに……!!」
「イタくないもん!!」
これまでの攻撃で今の言葉が一番リナにダメージがあった。
「…………」
めっちゃ傷ついているリナをよそに、女はボソボソと何かを言っている。
「__本当は使いたくなかったけど、仕方ない」
「っリナちゃん!!」
騎士の声で顔を上げたリナが見たのは、小さな石を投げる女の姿。
ピキ
その石が赤くなる。
「っ!!」
リナはとっさにマギアブレイカーを構える。
石が光り、炎に包まれ破裂した。
轟音と共に炎が広がる。
熱は感じない。だが衝撃波までは防げない。
リナは飛ばされ受付カウンターを壊して壁に打ち付けられた。
「いたーい……」
「「リナちゃん!!」」
動けないリナの前に2人の騎士が立ち剣を構える。
「死ねぇっ!!“刃風”!!」
騎士もろとも切り裂こうと女が手を向ける。
風の剣がその手から離れようとしたその時
女の肩を何かが貫いた。
「っぎゃあああぁあぁぁぁ!!」
突然の激痛に女の絶叫が建物内に響き渡った。
魔力操作が乱れ、風の剣が消える。
その隙を逃さず、騎士は女を取り押さえる。暴れる女を昏倒させ、失血死しないよう穴の空いた肩は裂いた布で締めつけた。
その様子を見届けたリナは女の向こう、ギルドの入り口に目を向けた。
「助かったよ、カイン」
構えられたボウガンのようなそれは、銀色の装飾が太陽の光を乱反射しキラキラと輝く。描かれた水色の魔法陣と相まって、波打つ水面のようだ。
改造水杖『サザナミ』を手に、カインは引き攣った顔で言った。
「これ、人に向けるモノじゃないな……」
**
「リナさん!お怪我はありませんか!?」
事態を聞いた商業ギルド長が息石切らせてやってきた。
どうも別館の方にいたようですぐには来れなかったらしい。大きなギルドは大変である。
「職員の1人が入れ替わっていたようで……本当に申し訳ございません」
「いえいえ!わたしだって偶然魔力量でわかったんですから」
リナを襲った魔法至上主義の女には顔を偽装する魔法がかかっていた。
そのため、魔力量でものを見ているリナ以外には気づかれなかったようだ。
「そんなことより、その職員の方は大丈夫なんですか?」
「縛られた状態でトイレの個室に閉じ込められていたようですが、軽症で命に別状はないようです」
「それはよかったです」
そこまで言って、リナはふと思う。
「そういえば、ここの制服って支給品ですよね?」
「え?ええ、そうですけど……」
「一般では手に入らないはず」
「そうですね……」
「もしや、襲ってきたあの人、その職員の方の服を……」
「変な想像しないっ!!」
カインのチョップが頭に刺さった。
その職員だって被害者なのだから、そんな目で見てはいけません。リナは大いに反省した。
「あの女は騎士団に連行させてもらうわ。色々と聞きたいことがあるからね」
「あ、ちょっと待ってください」
リナは気絶している女に近づくと、おもむろにスカートのポケットに手を突っ込んだ。
「……あった!」
ついに乱心したかと皆が思ったが、そうではなかったらしい。
リナの手にはキラリと光る小さな石が握られていた。
「リナさん、それは……魔石ですか?」
「いえ、これ魔物です」
笑顔で答えるリナとは反対に皆が武器に手をかけた。
「刺激すると爆発するかも」
皆が武器から手を離した。




