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「ショウ!!アリア!!」
事故の一報を受け、リナはフラン食堂に駆け込む。
そこでは、すでにアリアの治療を終えたショウが騎士の事情聴取を受けていた。
「よっ、リナ。悪いな、心配かけて」
「そんなことないよ!それより怪我は!?大丈夫っ!!?」
息を切らしながらも問い詰めてくるリナ。そんな彼女に、ショウとアリアは二人揃って胸を張る。
「俺を誰だと思ってる?爆発くらい“盾炎”で抑え込めるさ」
「それに私だっているんですから。ショウくんの体には傷跡一つ残しませんよ!」
「そうだけど!そうだけどさぁ……!!」
そこまで言うと、リナの目からぼろぼろと涙が溢れ出す。嗚咽混じりで何を言っているのかよくわからない。
ショウとアリアは騎士に一度席を外してもらい、彼女を座らせる。
少し涙が落ち着いたリナはポツポツと話し始めた。
「……食堂で爆発があったって聞いて、怖くなった。
わたしが作った魔道具のせいで、わたしのせいで、二人を傷つけたんじゃないかって……!」
二人の無事を確認できてホッとしたとき、リナは同時に罪悪感に襲われた。
「二人が巻き込まれて初めて気づいた。こんなに怖いことなんだって。
わたしは……被害者の人たちに、こんな怖い思いをさせてたんだって」
言葉にすればするほど、自分がどれだけ考えなしだったのか思い知らされる。
「事故があったって言われても、死者までは出ていないし、大したことないって……心のどこかでは他人事だったんだと思う」
握った拳に血が滲む。ポタポタと落ちる涙が服にしみを作る。
「わたし、最低だね……」
絞り出された最後の言葉は、なんとも弱々しかった。
黙って聞いていたアリアが口を開こうとするも、あまりに弱った親友の姿にかける言葉が見つからない。
その時、夫のため息が聞こえてきた。
リナの肩が激しく跳ねる。
「あのなぁリナ。お前考えすぎ」
「……ふぇ?」
ショウはリナの頭を小突く。想像とは違う答えに、リナは目を丸くした。
「他人事なんつったって、実際他人だろ?親身になりすぎたらお前がもたねーよ。アリアもだけど」
「私もですかっ!?」
唐突な飛び火にアリアから悲鳴が上がるも、ショウはスルーした。
今のリナのような思考を常に持っているのがアリアである。少しは自覚してほしい。
「それとも何だ?お前は事故にあった人をないがしろにして、何もしてこなかったのか?」
「してきたよっ!魔石に原因があることを突き止めたし!……なんで爆発する魔石があるのかはわからないけど」
「そこまでわかってんならいいじゃねえか。お前はちゃんとやってるよ」
小突いた頭をポンポンと撫でてやる。負けじとアリアまで撫で始め、リナの頭はグシャグシャになった。
「お前は魔道具の開発者だけど、だからといって全てを背負う必要はねーんだよ」
「そうですよ、リナちゃん。優しさは美徳ですが、そのあまり自責の念に囚われてしまうのはリナちゃんの悪い癖です」
「そーだよアリア」
「私もですかっ!?」
飛び火どころかブーメランを指摘され、アリアが再び悲鳴をあげる。
それをまたスルーするショウに全く痛くなさそうな拳でポカポカと抗議する彼女を見ていると、自然と笑い声が漏れた。
「ふふっ、あはは……」
笑い始めたリナを目にし、二人も笑みを浮かべる。
「やっと笑った」
「ありがとう、二人とも。元気出た」
「それはよかったです」
涙を拭いたリナは立ち上がると、頬を叩く。ペチンと柔らかい音がした。
「よし!わたしも今できることをしてくる!まずは爆発した水杖を調べてみるよ!」
「その意気ですよリナちゃん!」
「あの水杖、回収してってもいい?」
「おー、もちろん。役立ててくれ」
「ありがと!」
意気揚々と部屋を後にしようとするリナ。それを眺めていたショウは大事なことを思い出す。
「あ、そうだリナ。言うの忘れてた」
「どしたの?」
「あのな__ 」
**
「リナちゃん!!待って!!」
「ちょ、速いって!!」
街中を爆速で走るリナを護衛している女性騎士2人は必死に追いかける。
リーレイアの提案の下、リナにはしばらくの間護衛の騎士がつけられることになった。この2人はその争奪戦を勝ち抜いたエリートだ。
だが、そんな2人でもなぜかリナの足に敵わない。訓練で走り込みをしているはずなのに全く追いつけなかった。
この護衛対象フィジカル強すぎませんか。
「ごめんなさーい!!もうちょっとがんばってーー!!」
とか応援してくるし。ちょっと恥ずかしいのでやめてほしい。
フラン食堂でショウの話を聞いたリナは閃いた。そして、「商業ギルドに行かなきゃ!」と一目散に駆け出したのだ。
護衛を置いてけぼりにし、あっという間に商業ギルドにたどり着く。
入るなり「ギルド長に会えますか!!?」と詰め寄る。あまりの勢いに受付のお姉さんは気圧された。
「確認をとってきます!」と慌てて走っていくお姉さんに申し訳なく思いつつも、今は時間が惜しい。
受付のお姉さんを待っていると、護衛のお姉さん達が息を切らせて追いついてきた。
置いてけぼりにしたことを謝るリナに返しながら2人は思った。なぜ彼女は息切れしていないのだ。
(走り込み、増やそうかな……)
2人がそう思うのも無理はない。
「リナ様、お待たせいたしました」
「あ、はい」
そうこうしていると、名前が呼ばれた。
リナが振り向くと、そこには先ほどとは違う制服姿のお姉さんがいた。途中で変わったのだろうか、などと思いつつ彼女のところに向かおうとし……
ふと、違和感に歩みを止めた。
「……リナ様?」
不思議な顔でこちらを見るお姉さん。そんな彼女にリナは尋ねた。
「お姉さん、はじめましてですよね?」
「突然どうしました……?」
目の前の女性は不審な視線をリナに向ける。突然そんなことを言われたのだから当然の反応だろう。リナも慌てて補足を入れる。
「変なこと言ってすいません……お姉さんほど魔力量の多い方は、ここでは初めて見るもので……」
魔力量が明るさとして見えるリナにとって、魔力の多い人はとにかく目立って見える。
そういう人は一目見ただけでもリナの記憶にしっかり残るのだが、目の前の彼女の顔は記憶にない。
異動してきた人かとも考えたが、商業ギルドの人事異動はもう少し先だ。
では、目の前の女性は一体……?
そう思い、失礼承知でリナは尋ねた。息を整えた2人の護衛も剣に手をかけ警戒する。
「……はぁ。魔力もないくせに、めざとい子だこと」
その言葉が聞こえたと同時に騎士たちが吹き飛ばされた。
声をかけようとしたリナにも風の刃が襲いかかる。咄嗟に上体を反らし回避するも、前髪が少しカットされた。
「__貴女、目障りなのよ。死んでくれない?」




