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「これで最後ですね」

「ナナリーちゃん、お疲れ様でした。ほんとに助かったよ。ありがとね」


「いやあ、適度にツボを押される感あっていい爆発でしたね」

「そこについてはノーコメントで」





 実験の結果、点火杖は100個に1回ほどの割合で爆発を起こした。



 しかし、そのどれもが魔法陣に問題のないと確認されたものだった。




「いよいよ魔法陣の線は薄いかな……」

「それはよかったですね」

「そうだね……となると、原因は……」




 爆発した点火杖にはいくつか法則性があった。





 ひとつ、本来発動するはずの“炎生成(イグニス・エミット)”が発動していなかったこと。




 ひとつ、どれも1回目の点火で爆発したこと。




 ひとつ、爆発前に「ピキ」という石が割れるような音がしたこと。




 ひとつ、爆発の中心が魔石であること。






「魔石……」



  

 そう、原因として挙がったのは魔石だ。





「魔石のこんな現象、聞いたことないですけどね」

「そうなんだよね……」




 魔石は魔力を多分に含んだ鉱物質の物質。


 その魔力も魔法詠唱、魔法陣による定義付けがされないと魔法にはならない。



 もちろん、魔道具に使われる魔石にそんな加工はされていない。

 自然のままの魔石が勝手に魔法を使うことはありえないのだ。




「だけど、魔法陣が悪いわけじゃないことがわかったし、1回目の使用で爆発しなければ爆発する可能性が低いこともわかった。ナナリーちゃん、大手柄だよ」

「私としてはもっとやってもいいんですよ。よりたくさんのデータがとれますし、私も爆発が」

「今のは聞かなかったことにするね」

「リナさんが頑なになかったことにしてくる」



 ドMナナリーをなんとかしてなかったことにしたいリナであった。







**






 リナたちは商業ギルド長に結果を報告する。




「なるほど、魔石に問題が……」

「確実に、とはまだ言えませんけど」

「いえ、それでも充分です」



 ギルド長は微笑む。




「おふたりの実験では1度目の点火で爆発しなければ爆発の可能性は低いということでよろしいのですよね。

 でしたら、製造工程に数回の点火試験を組み込み、その上で販売を再開しましょう」

「それだと試験を行う人が危ないのでは……」

「炎魔法使いなら“盾炎《イグニス・スクートゥム》”を使えば爆発に巻き込まれる心配はないですよ」




 衝撃と共に熱を防ぐことができる“盾炎《イグニス・スクートゥム》”。

 確かにこれなら爆発を防ぐことができる。





 ……だったら、初めから炎魔法使いに協力をしてもらえばよかったではないか。

 なぜナナリーに痛みの快楽を与えていたのだろう。もっと早く気づくべきだったとリナは己を恥じた。



 爆発に巻き込まれながら恍惚とした表情を浮かべる彼女は、なんかすっごく怖かった。





「リナさん、ありがとうございました。まだ課題はありますが、ひとまず点火杖の再販ができそうです」

「はぁ〜、それはよかったです。これで販売停止とかになったらどうしようかと思いました。

 ナナリーちゃんも手伝ってくれてありがとう」

「私からもお礼を言わせてください。ギルドの垣根を越えてお手伝いいただき感謝しています」


「お気になさらず、私たち冒険者ギルドにとっても大事なことでしたから。それに爆発の刺激もなかなか……」

「それ以上は言わなくていいよ!!」




 爆発がクセになったナナリーだった。やめてくれ。









 それから3日後、点火試験を取り入れられた点火杖は無事に販売が再開された。




「ミルバ・ミシックタイムズも記事の内容を下ろしてくれたし、これでひと段落着いたね」

「うん。あとは魔石の何が悪いのかが分かればいいんだけど……」

「そうだね。でも徹夜はいけないよ。子供たちが寝た頃を見計らって起きているってハルファウナ様から報告がきているからね」

「うぐ……知ってたのかハルさん」




 市場調査に行きたいと、リナはカインを引き連れウインドショッピングに来ていた。

 もう手に取ってもらえないかもしれないというリナの思いとは裏腹に、点火杖は飛ぶように売れている。




「あんなことがあったのに、変わらず買ってくれるんだね」

「発売されてから今まで、魔道具の事故なんてなかったからね。今回も、原因が魔道具本体じゃないとわかったから、みんな安心して買ってくれてるんじゃないかな」




 人で賑わう店を眺めて呟くリナにカインが返す。




 冒険者同様、街の人々にとっても点火杖はなくてはならない道具になっていたようだ。むしろ買えないことの方が問題だったようで、再販開始日には開店前から店の前で待っている人がいるほどだった。



 今も、買い溜めをしている人がちらほらと見える。





「それだけ、リナの魔道具は信頼されてるってことだよ」

「__うん。それなら、嬉しいな」











「でも、便利なものって慣れるとない生活に戻れないね」

「ん?どういうこと?」



 よくわからないというリナに、カインはニヤッと口角を上げる。






「つまりリナはこの国の人間を魔道具なしでは生きていけない体にしてしまったってこと」

「ちょ、言い方!!」




「罪な女だねぇ」

「いいかたぁっ!!」





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