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点火杖爆発の話を受け、リナは呼びに来たトーリと共に急ぎ商業ギルドに向かう。
「ああ!リナさん、お越しいただきありがとうございます!」
「ギルド長、こちらこそ連絡ありがとうございます。被害者の容体は……?」
「幸い小さな爆発だったようで、大きな怪我はありません。すぐに教会で治癒を受けており、大事はないようです」
それを聞きリナは胸を撫で下ろす。
「爆発した杖はこちらで回収しております」
「わかりました、見せていただくことはできますか?」
「もちろんです」
商業ギルド長に壊れた点火杖を見せてもらう。
「うわっ」
「これは……」
それを見て2人は絶句した。
それもそのはず、点火杖は熱で大きく姿を変えていたのだ。
魔石が砕けたことで2つになったパーツ、受け皿があったであろう部分は金属が溶けてドロドロのまま固まっている。柄は焦げて真っ黒、魔法陣の彫刻もほとんど残っていない。
「ギルド長、これ何回使うたかわかります?」
「始めて使われたものだそうです」
「そか。ならコイツが不良品だった可能性もあるわけか」
トーリは頭を抱える。
もし不良品だったとしても、ここまで派手に壊れていては原因究明は難しそうだ。
頼みの綱は、魔力の流れが見える隣のリナだけ。
「リナ、なんかわかりそうか?」
「現時点ではなんにも。ギルド長、これと同じ日、同じ場所で製造された点火杖って手に入ります?」
「すでにこの点火杖と同じ製造工場のものは自主回収を始めております。回収されたものもギルドにありますのでお持ちしましょう」
「わかりました、ありがとうございます。できる限り、何が起こったのか調べてみます」
「よろしくお願いします」
商業ギルド長は頭を下げると、回収した点火杖をここに運ぶよう手配してくれる。
「ほんま、リナがおる時でよかったわ。まだ塔にいて連絡つかへんかったらお手上げやったで」
「うん。絶対とは言い切れないけど、やれることはやってみるよ」
とは言ったものの……
「すごい数だね」
運ばれてきた点火杖のコンテナを見てリナが呆然と言う。
「生産工場としてはかなり大規模なとこのやったからな。頼むから無理はせんでな。オレがハルファウナはんに怒られる」
「ごめん怒られて」
「無理すること前提やめーや!!」
トーリの怒号が飛ぶが、リナはすでに集中モードに入ってしまった。
爆発した点火杖の残骸は魔法陣の彫刻すらわからない状態だ。
しかし、リナの目にはうっすらと魔法陣の形が見えていた。定着させた魔石の粉が焼け残り、微弱ながら魔力を放出しているのである。
その魔力が尽きる前に、リナはそれを急いで紙に描き写す。
全て描き写してみると、魔法陣は結構残っていた。しかし、それを見る限り問題点は見当たらない。
「うーん、やっぱり簡単にはいかないか……」
「魔法陣を描き出せただけでも、相当すごいと思うよ」
「ふぇっ!?」
突然後ろから声が聞こえ肩が跳ねる。
「わっ!?」
声の主もそこまで驚かれるとは思ってなく、一緒になって驚く。
「あー、ビックリした」
「それはこっちの台詞だよカイン……」
偶然とはいえ驚かされたリナはカインをジト目で睨む。
リナの集中力を舐めてはいけない。本当に周りが見えなくなるのだ。
よくそれで足やら頭やらをすぐぶつ。まだ勝手に驚いている方が平和である。
「なんでここに?」
「心配と応援とご飯を食べさせにきた」
そういうカインの手には屋台で買ったのだろうケバブサンド。片手間でも食べられるようなものをチョイスしてきてくれるあたり、リナのことをよくわかってくれている。
「今日学園じゃなかったっけ?」
「今昼休み。そろそろ帰らないと次の講義に間に合わない。今日は昼食抜きだね」
「ゆっくりご飯食べなさいよ」
「そっくりそのまま君に返そう」
カインに笑顔で言われ、思わず目を逸らす。
現在進行形でご飯のことなど忘れていたリナだ、そう言われるとぐうの音も出ない。
「焦る気持ちもわからなくないけど、自分のことを疎かにするのはよくないよ」
「でも、魔道具で人が傷ついたんだよ。これ以上誰かが傷つく前に原因を突き止めなきゃ」
「だったら、なおさらリナが倒れるわけにはいかないんじゃない?」
そう言われてリナはハッとする。
今現在、この世で魔道具を開発できるのも、魔力から魔法陣を調べられるのもリナただ1人。何かあった時に詳しい原因究明ができるのは自分しかいないのだ。
カインの言う通り、自分が過労で倒れてしまえば打つ手がなくなってしまうのだ。
「__そうだね。ほどほどに無理することにするよ」
「最後の言葉が心配だなぁ」
カインにケバブサンドを詰め込まれ、再び作業を再開する。
しかし、あらゆるものを試してみても原因らしきものは見当たらない。
わからないが数時間続き、焦りと不安リナの心に溜まっていく。
__結局、その日は原因を特定できなかった。
リナはこのまま泊まり込もうとしたのだが、「はよ帰れ」とトーリに部屋を追い出されてしまった。
「__少々、よろしいでしょうか?」
リナが商業ギルドを後にしようとしたところで声をかけられる。
「わたくし、ミルバ・ミシックタイムズのマルクスと申します。失礼ですが、魔道具の開発者のリナさんですよね?」
「え、ええ……そうですが」
グイグイと来るマルクスと名乗る男にリナは気圧される。
ミルバ・ミシックタイムズというのは大手新聞社だ。
そこの記者がリナに用とは……
警戒するリナに、マルクスは澄ました笑顔で尋ねてきた。
「単刀直入にお聞きします。この度の点火杖の爆発事故について、リナさんの見解を伺わせていただいても?」
獲物を見る蛇のような、ねっとりした視線がリナに向けられる。
えも言わぬ気持ち悪さがリナを襲う。その中で、リナはふと違和感を覚えた。
「__すいません、お答えできることはございません」
この人と話すのは危険だと、本能が警鐘を鳴らす。「失礼します」と頭を下げてリナは逃げるようにその場を立ち去った。
しばらく感じる視線が、なんとも気持ち悪かった。
**
次の日、朝早くに向かった商業ギルドは大混乱に陥っていた。
「あ、あの!これは一体……」
「魔道具開発者のリナさんですね!こちらにお越しください!!」
職員の1人を捕まえて話を聞こうとしたところ、そのまま商業ギルド長のところまで案内される。
ギルド長はトーリと共に、新聞を開いていた。
「ああ!リナさん、ちょうどよかった!!
大変なことになりました!こちらをご覧ください!!」
ギルド長はこちらに気がつくと、慌てて新聞の1面を見せる。
「……」
リナはそれをしかめっ面で見る。
見るのだが……
「……読めない」
「あっ……」
リナの瞳は魔力を見ている。魔力のない紙は、真っ黒です。
しかし、リナには見えないだけで、そこには大きくはっきりと書かれていた。
『魔道具に重大な欠陥』
『開発者は黙認か』
__と




