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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-28 最神玲と物部かすみの卒業

最神玲と物部かすみの卒業


時は少し遡って、物部かすみが内定取り消しでパニクったものの、後にタチアナ・エグリスコバからパリ・ファッションウィークの招待状が届いたことで頭の中はフランス一色になっていた2月中旬のある日、珍しくかすみの両親が東洛(とうらく)市の彼女の自宅にやって来た。その目的は、内定取り消しで意気消沈しているであろう娘を慰めることと、今後の就職に関する話し合いのためである。今後の就職となると、いよいよかすみは家業を継ぐことになるのか、と言うと実はそれはない。なぜなら、彼女には5歳年上の兄がおり、その兄が家業を継ぐことが既定路線となっているからである。では、かすみはどうするのかと言うと、まだ両親共に何も決めてはない。それよりも、先ずは娘の様子を見てから判断しようと思いかすみの自宅にやって来たのであるが、かすみを一目見た両親は「うん、この子は大丈夫だ」というよく分からない安堵感を得て帰っていった。尤も、その頃のかすみの頭の中は、就職よりもフランスなので、その点を見誤ったのは仕方ないだろう。



 そしてかすみの卒業式の前日、今度はかすみの母親の京子だけが彼女の自宅を訪れた。今回の目的は、翌日の卒業式で着用するかすみの着物と袴の着付けを手伝うことと、かすみの就職先に関する相談をすることである。ところが、かすみは卒業式には着物と袴ではいかないと言い出した。昨今の大学の卒業式では、女性は着物と袴が一般的であり、かすみも昨年のお盆に帰省した時は、「卒業式は着物と袴で出たいので、今から予約をお願いね」と母親におねだりしていたのに、明日は卒業式と言うこの段階で、着物と袴は着ないなど、どれだけ駄々を捏(こ)ねるお子様なんでしょうね、と京子は呆れてしまった。ところが、かすみ口からはとんでもない話が語られたのである。


  「あのね、お母さん、実は今月の初めに、

   私ね玲とフランスに行ってたの」


暫し沈黙する母。いや、思考停止か。そして


  「まさか、あなた達

   婚前旅行とかじゃないでしょうね?」


と言う始末。これにはかすみも即座に否定して、


  「違う、違うよ。絶対そんなんじゃない。

   実はねある人から招待されたの」


と言って机の引き出しから取り出したのは、ロムリアからの招待状。これは、記念品として玲から譲り受けた物で大事に保管していたのであった。怪訝な表情を崩さぬままの母の京子であるが、見慣れたロゴと、中身は読めないがフランス語で書かれた招待文と玲とかすみの名前は読み取れた。え、まさか、本当なの?


  「ほら、このスマホにある写真ね、

   フランスで開かれたロムリアの

   ファッションショーの時に、

   私と玲とタチアナさんの3人で

   特設会場前で撮ったんだ」


と言って写真を見せられた京子であるが、まさに特徴的な金色の髪と瞳を持つロムリア代表のタチアナがそこに映っていた。そして、


  「その時に着用した衣装が

   そこに映っているでしょう。

   それがこれなんだ」


と言って、今度はクローゼットからロムリアの衣装を取り出してきた。かすみの母の京子も、実はロムリアを愛用しており、その価値がどれくらいなのかは十分に分かっていた。そして目の前にある娘の衣装、まさにロムリアのデザインであり、タグも本物だと直感した。


  「え、ほ、本当に、かすみは

   タチアナさんとお知り合いなの?」


  「うん、まあ、正確には、

   玲とタチアナさんが知り合いと言うか

   友人みたいで、

   それで私もお友達になったというところね」


と少し自慢げに話すかすみである。で、その話と卒業式の着ていく衣装は…あーそういう事ね。


  「そう、これを着て行こうかと思うんだ。

   折角、タチアナさんから頂いたのに、

   この先何時着れるか分からないからね。

   ねえ、お母さん、良いでしょう」


まあ、かすみがそう決めたのなら良いんじゃない、と結局はかすみの言う通りにした京子である。しかし、この衣装って、総額幾らくらいになるんだろう、などとつい金銭的な思考を持ってしまう京子でもあった。



 さて、衣装の件はこれで決まったので、後はかすみの今後についてである。実は幾つかの就職候補先の資料を持って来ており、今日ここでかすみに決めてもらおうというのであった。ただ、残念ながらかすみの希望するというか魅力を感じるような就職先は見当たらず、そして、「じゃあどうするの?」と聞かれたかすみであるが


  「実はね、玲と相談して、

   超心理学研究所と言う組織を

   立ち上げようと考えているの。

   そこで霊に苦しむ人を助ける

   心霊療法を研究しようと思うんだ」


  「ん?ちょ、心療学研究所?

   なんか、心療というからには

   心理療法とかかしら?

   えーと、何かに苦しむ人を助ける

   心理療法を研究するのね。

   へー、かすみにしては、

   皆さんの役に立つことを考えているのね」


かすみにしては、は余分だと心の中で突っ込むかすみであるが、何か変にいい方向へと解釈を変えて前向きに捉えてくれる母を見て、かすみは言い直さずそのままスルーすることにした。


  「うん、だから、暫くは玲と二人で

   頑張ろうと思うんだけど、どうかな?」


  「良いんじゃない。人の役に立つ仕事ならね」


これで一応母親からの了解は得たということで、内心ニンマリするかすみである。だが、実は幾つか未解決な問題が残されているのだが。


  「それでね、お母さん。その仕事に関連して、

   実はお願いがあるんだけど」


  「うん、なーに?」


  「会社をどこに作ろうかまだ考えてないんだ。

   まあ、会社と言ってもビルが必要とかは全く無くて、

   それこそこの部屋みたいな所でも問題ないんだけど、

   どこかに手ごろな物件とかないかな?」


まあ、確かに物件の事なら、かすみの実家は打ってつけである。かすみも、そんなに直ぐには見つからないだろうから、何か良さそうな物件とかあったら教えて、と母に伝えたのだが、


  「そうねー、実はね、一つあるのよ」


えー、あるんかい! と驚くかすみである。だが何か裏がありそうで怖いのだが


  「かすみは覚えてるかな、私の実家。

   実はあの地域で信仰している

   神社があるんだけどね、

   そこが人手不足で困っているのよ。

   一応宮司さんはお見えになるんだけど、

   何分かなりのお歳でね、

   神社の細かな手入れなどが出来なくなって

   困っているのよ。

   そこでね、もしよかったら

   暫くそこに住み込みで働いてもらって、

   序にそこで研究とかしたらどう?」


かすみにとっては、思いもよらない申し出である。勿論、心の中ではOKなのだが、こればっかりは玲と相談する必要があるため、


  「とりあえず、玲と相談してみます。

   それから決めても問題ないよね。

   あっ、ちなみに、

   手伝う場合って何か手当とか出るの」


  「まあ、多くは出せないけど

   バイト料程度なら何とかね。

   ちなみに、食と住は保証しますよ。

   それで良かったら、私に連絡して頂戴」


となったのである。えっ、食が保証されるの?と言うことは、賄(まかな)いさんとか寮母さんとか居るのかな?と疑問に思ったかすみであるが、それはない。食の保証とは、食料が保証されるの意味であった。つまり、食料は地元の氏子衆による寄進で賄われるのであり、要するに自炊しろということであった。



 さて、玲とかすみは卒業式当日を迎えた。東洛市は、丁度2日前に桜が満開となり、春らしい陽気に見舞われて過ごしやすい時期を迎えた。そして、玲とかすみであるが、それぞれタチアナからプレゼントされた衣装を身に着けて卒業式に参加するのであるが、かすみと話し合って、玲の下宿からタクシーでかすみの自宅へ行き、そこでかすみを拾って大学に向かうというルートで決まった。そして、今はかすみの自宅マンションの玄関ホールでかすみを呼び出しているところである。


  「おーい、かすみ、迎えにきたよ」


  「あら、最神さん、ちょっと待ってね、

   今かすみを向かわせます」


かすみの声と明らかに違う声がした瞬間、間違った部屋の番号を押したかと焦る玲であった。まさか、かすみの母親が出るとは予想してなかった。


  「おーい、お待たせ。じゃあ行こうか」


と言って自動ドアから現れたのは、黒い衣装に身を包んだかすみ。メイクも髪型も、ファッションショー当日のものとよく似ていたが、実はショーに向かう前にロムリア本社で準備していた時、ヘアセットとメイクの仕方を動画で撮影しており、それを参考にかすみの母とセットしていたのだそうだ。


 こうして、満開の桜が咲き誇る大通りをタクシーから眺めながら、大学の正門に到着した2人である。


  「この格好でも、寒く感じないのは有り難いね」


とは玲の感想。かすみも寒さを心配していたのだが、この陽気なら大丈夫と答えた。


  「どうする、また腕を組むかい?」


と何やらニヤニヤしながら挑発してくる玲である。これにはかすみも


  「はあ。何で君と腕を組まないと

   いけないのですかねー」


などとやり返すのであるが、内心は全く逆。ただ、友人もいるようなところで玲と腕組んで歩くのには、彼女なりの羞恥心が働くのだった。それで、とりあえずは何時もの二人の関係を保った状態で、卒業式典が行われる大学の講堂に向かった。



 大学の構内は卒業を迎える4年生と大学院生がこんなにいるのか、と思うくらい多く溢れている。そんな中を玲とかすみは講堂に向かって二人並んで歩いて行くのだが、どうも自分達は見られているというか、注目されている感じを受けた。まあ、この格好は確かに目立つよな、と玲はかすみに伝えたのであるが、実はそれだけではなく、


  『おーい、かすみ!』


とかすみに呼びかけたのは、親友の立林翔子(たてばやししょうこ)と榎原瑞希(えのはらみずき)。二人共かすみとよくショッピングに行ったり、偶に旅行に行ったりする程の仲良しである。そんな彼女たちがかすみに対し


  「ねー、動画と写真見たよ。かすみ、凄いね、

   あんなセレブと親しいんだなんてね」


ん?動画と写真?と疑問符を立てているかすみである。実は、ファッション好きな子がロムリアのパリファッションウィークの動画を見ていた時、玲とかすみが映っているのを見つけて、それが学内で拡散しているということらしい。しかも、ロムリアのホームページにはロムリアの専属カメラマンが撮影した写真が掲載されているが、そのうちの何枚かに玲とかすみとタチアナの3人が収められた写真もあるのだとか。そうなると、最神玲や物部かすみは一体何者なのだ、どうして有名デザイナーと親しげにしているんだ、という噂が飛び交うようになり、それが今の好奇な目に曝される結果を招いたのであった。


  「あー、あははは、いやー参ったね。

   そんな動画や写真が出てたなんて知らなかったよ。

   でも正確には、私ではなく、

   こいつがタチアナさんと知り合いなんだ」


え、僕ってこいつ扱いされたんですか、かすみさん、と心の中で少し寂しげに訴える玲である。その後は、歩きながらかすみがファッションショーで見かけた有名人の話などをその親友たちに披露して盛り上がるのを見ながら、講堂に到着した。



 正午になり、卒業式は滞りなく無事終了した。かすみは先程の親友とどこかに消えてしまい、今は玲が一人満開の桜の下を正門に向かって歩いてるところであるが、行く先々で「最神さん、写真良いですか?」と着物に袴姿の女性達から声を掛けられ通しとなる玲である。玲も満更でもないので、写真に一緒に収まって、握手して別れたり、積極的な子に至っては連絡先を交換してと迫ってきたりした。尤もその日はスマホを持ってきてないので「ゴメンね」と断るのだが、もしこの場にかすみが居たら、「玲、何をニヤニヤしているんですかねー、まー厭(いや)らしいは、この人」などと延々と愚痴を零(こぼ)されるだろう。そんな思いに駆られながら正門に向かっている時に、


  「おーい、最神」


と呼ぶ野太い声が後ろから聞こえた。何となく知った声だったので声のした方に振り返った時、そこには心霊サークルの部長であった稲垣悟が手を振っているのが見えた。そして、稲垣が玲の所にやって来て


  「お互い無事卒業できたみたいだな。

   とりあえず、おめでとう。

   それにしても最神、大人気だな」


  「部長も卒業おめでとうございます。

   ははは、そんなことは無いですがね」


まあ少し歩こうか、と言って二人並んで正門に向かうのである。


  「最神、記憶は戻ったのか?」


  「いいえ、まだ駄目ですね。

   まあ、諦めずに頑張りますけどね」


  「うん、そうか、そういう前向きなところは、

   お前らしいな。

   あっ、そうだ、榊原加奈子の件、

   色々と有難うな。

   彼女も元気にしているみたいだし」


  「ええ、年末に彼女と西脇まど香に会いましたよ。

   二人共元気にやってましたね」


  「そうか。既に会っていたんだな。

   ところで、最神、就職とかはどうするんだ?」


と言うことで、玲はかすみと[M&M 超心理学研究所]なる組織を立ち上げて、心霊術の研究と言うか、要するに霊媒師みたいなことをしようと考えていることを稲垣に話すのであった。すると、


  「ほー、なかなか思い切ったことを考えるんだな、

   君たちは。

   そうか、それだったら、うちの部、じゃないな、

   心霊サークルの顧問とか

   やってもらうのはどうかな?」


  「ん?顧問ですか。そうですね、

   一度かすみに相談してみます。

   その後もし問題なければ、

   誰に連絡すればいいんでしょうか?」


と言うことで、次の部長には新4年生の関健太郎が就任するので彼に伝えてくれと告げられ、玲と稲垣はそこで別れた。


 その後玲は自分の下宿に戻って着替えを済ませ、少し遅い昼飯を食べに出かけた。ただ、頭の中ではタクシーの中でかすみから聞いた神社に住み込みで働きながらM&M 超心理学研究所を運営していく件、あれどうしうよか、と考えていた。しかもかなり前向きにではある。


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