地球激動編 1-182 異世界の大召喚術師、スーパー銭湯を視察する (第3幕)
異世界の大召喚術師、スーパー銭湯を視察する (第3幕)
プールの視察を終えた物部かすみと神室霊華、そして異世界の大召喚術師であるエンペラールの3人は、エレベーターに乗ってそのまま階下にある温泉フロアにやって来た。そして今度は、温泉の視察をする予定である。ただし、温泉に入るのに最早水着は必要ないため、更衣室にて早速水着を脱いでロッカーに入れる風を装って召喚解除した。そしてそのまま3人は温泉に向かった。
「うわ~、こんなに沢山の種類の
お風呂があるんですね~」
そこには6種類のゾーンに分かれた温泉があり、それぞれに嗜好を凝らした造りとなっている。特に女性用はヨーロッパをイメージした雰囲気となっているため、かすみと神室霊華は海外を旅行した気分に少しだけだがなれたりする。エンペラールは物珍しさもあって、様々な種類の風呂を体験するが、どこに行っても「ふぁ~、気持ちいい~」と満面に笑みを浮かべて上機嫌である。だがエンペラールは、単に温泉に浸かっているだけではなく、この雰囲気や様々な仕掛けについて、早速かすみと神室霊華に質問をぶつける。
「確かに暗い感じの所って、
リラックス効果は有ったりするねんな」
「そうですね、凄く落ち着く感じがしますし、
何だか寝ちゃいそうになりますね」
とかすみと神室霊華は、室内を薄暗くしている洞窟風呂をイメージした湯船に浸かりながら、そんな感想を口にした。エンペラールも、
「確かに、朝の露天風呂も気持ちいいけど、
夜の露天風呂ってうっかりすると
そのまま寝ちゃいそうになりますものね~」
と自身の感想をそのように伝えた。そして、
「単に温泉を引いてお湯を溜めて
と言うだけでは無駄と言うか...
皆さんの言葉だと、勿体ないでしたっけ?」
と言うように、エンペラールとしては当初、M&Mの別荘にある露天風呂だけをイメージしていたのだが、それだけだと勿体ないな、と感じるようになったのだった。
その後建物の外にある露天風呂に入ったり、ジャグジー風呂やジェットバスを体験して、3人は子供のようにキャーキャーと燥いだりする。それから3人は、サウナを体験するのだが、かすみと神室霊華は殆どサウナを使ったことは無いため、暫くすると外に出てきて水風呂に直行する。だが意外とエンペラールは10分近く留まっているようで、その後は何事もなくそのままサウナから出て来た。そして水風呂に直行するかと思われたが、かすみを見て「他の所に行きましょうか?」と誘ったりする。水風呂に入って体を整えないのか不思議に感じたかすみは、そのことをエンペラールに尋ねた。すると、
「へぇ~、こちらではそう言う入り方を
するんですね~。ロムリアにも
サウナに似た施設があるんですが――」
皆、そのまま外に出て涼むだけだというのだ。と言うのも、
「サモナルドは、気温が低いですからね~。
夏でも、汗を搔いた後は外に出て
涼むだけなんですよ~」
との事である。確かに、水風呂を用意するというのは、ロムリアでは贅沢の極みであろう。そのような国の違いによる風呂事情を確認したエンペラールは、どうやらロムリアの温泉施設に関する具体的な構想が出来てきたようだ。そして温泉を堪能した3人は、温泉を出てから体を休め、化粧を整えてから館内着に着替えた。その時エンペラールは隣のかすみに向かって、
「こういう館内着と言うんですか、
これってあった方が良いのでしょうか?」
と尋ねるので、かすみは
「そうやねー、わざわざ来て着た服に
着替えるのも面倒やねんな。
それに、横になって休めるスペースが
あんねんけど、そう言う時に
服が皺にならずに済むしね」
と自分の感想をそのまま伝えた。エンペラールもかすみに指摘されると、確かにその通りだと思うようで、早速ロムリア版の温泉施設にも取り入れようと決めた。そして3人は、少し遅めの昼ご飯を食べに館内の飲食店に向かった。
この施設には、和食や洋食にラーメン、あるいはフードコートのよう飲食店があり、選択肢も豊富にある。そのため何を食べようか迷ってしまうのだが、かすみがエンペラールに何か食べたいものがあるかを尋ねると、何やら食べたことの無い物を見つけたという。そこで3人は、揃ってその店に入ることにした。
「へぇー、うちも食べたこと無いわー」
「これって、お好み焼きとは違うのでしょうか?」
「そうですね、これは中身が
トロトロの状態になりますから、
お好み焼きとは違いますね」
「私も中学生の頃は友達と食べに行ったりしましたね」と昔を思い出した神室霊華は懐かしい様子で2人に伝えた。かすみとエンペラールは、何やら不思議な物を目にするような、好奇心で溢れる表情をしながら目の前で作られるもんじゃ焼きを眺めている。3人が入ったのは、もんじゃ焼きを食べられる店であった。
「それにしても、一人前にしては多くない?」
とかすみは隣の神室霊華に尋ねるが、これ位が普通だというのだ。と言うのも
「殆ど水みたいですから、これ食べた後に
別の食事を取る人もいたりしますね」
ということのようだ。そして出来上がったところで、早速小さめのへらですくいながら食べ始めるのだが、よく冷まさないと熱いのは当然である。そんなことを承知していても、かすみはせっかちなのか、勢いよく食べようとする。そして
「熱っつー。水、水、水!」
と何時もの様に叫ぶのであった。一方エンペラールはと言うと、こちらは上品に少しずつ冷ましながら食べ進めるが、
「何でしょうか。外がカリカリで
中はトロっとした食感は......
あっ、先日の夏祭りで頂いた
たこ焼きでしたか、あんな感じですかね~」
でもとっても美味しいです、とこちらも上機嫌である。神室霊華は十(数)年振りかのもんじゃ焼きだが、確かこんな風に焼いて友達と分け合って食べていたな、と言うことを懐かしんでいた。そして騒がしくも何とか落ち着いて食べ進めているかすみはと言うと、
「こんなん、お好み焼きには
絶対入れへん具材やねんけど、
意外と合うんやなー」
と何やら感心しながら食べている。彼女が絶対入れへんという具材とは、子供のおやつの定番である油で揚げたラーメン菓子である。そして何とか食べ終えたところで、意外と腹八分目になったようで、
「食べ過ぎたりせぇへん所は、
ええんとちゃうかな」
とかすみが最後に感想を伝えて、そのまま3人は店を後にした。
さてお腹も満たされた所で、次はどこに行こうかをかすみは神室霊華と相談している。と言っても、実は既に候補があるのだが、かすみはエンペラールにそこに行って見ないかを提案した。勿論二つ返事で行くということになったので、早速3人はそこに向かった。本来であれば予約が必要なのだが、丁度平日のこの時間は空いているということで3人は直ぐに入ることにした。
2時間後、2人はリラックスして上機嫌であるのに対し、もう1人は何やら放心状態である。勿論その1人とはエンペラールである。彼女達が向かったのは、ボディケアとストレッチ整体、そして最後はアロマオイルを全身に塗るというリラクゼーションを行う店である。そしてかすみと神室霊華は、内容を十分に理解しており、その効果を堪能するのだが、エンペラールは自分が何をされているのか理解が追い付かず、最後はされるままになっていたようだ。そのための放心状態であった。だが、
「はぁ、何でしょうか、色々されましたが、
でも気分は良いですね~。
しかも体がすご~く軽く感じますよ~」
と段々と機嫌も良くなり、今は満面の笑みを湛えている。
「ほんまやったら、垢すりにしようかと
思うてんけどな、エンペラールさんやったら、
あのカプセルで老廃物が除去されるらしいから、
やっても意味ないかもしれへんと思うてんよ」
でもこちらを選んで正解だったとかすみは自画自賛するが、エンペラールの反応からして、まさにその通りであろう。そして念のためにかすみはエンペラールに、こんな施設を備える予定があるかを尋ねると
「そうですね~、私としてはあると、
と~っても気分が良いですけど――」
そもそもこんなことを行う人と言うか職業がないということを嘆いた。だがそこは召喚術師、今の施術を記述したセラピストを召喚すれば良いのではということで、別荘に帰宅後、早速(玲を使って)試すことにしたのであった。
さて、3人はその後館内を見て周りつつ、エンペラールが実際にロムリアにて温泉を作る上で必要な施設を見学しながら過ごした。その後少し体が冷えたというので、再び温泉に入ってから帰路に就くことになった。楽しい思い出話に花を咲かせながら3人が施設の玄関を出た時、「ねぇねぇ、お姉さんたち!」と再び声を掛けられた。3人が声のする方に振り返ると、そこにはプールで遭ったナンパ師3人組が待ち構えていた。「全く、あいつら、暇なんか?」とかすみは隣の神室霊華に向かって愚痴るが、「行こか!」とナンパ師を無視してそのまま商店街に向かうことにした。するとまたしても、「ちょっ、待ってーな」と声を掛けながら追いかけて来る。かすみは「ちっ」と舌打ちするも、やはり無視して歩き続ける。すると
「さっきは、悪かったって。
ほいでお詫びやないけど、
ご飯奢らせて欲しいねんな」
と謝るものの、そんなのは口実で、やはりナンパしたいのである。
”全くこいつらの思考はどないなってんねや!”
とかすみはボヤキたくなるが、一応
「悪いねんげと、うちらもこれから
待ち合わせがあんねんよ」
「ほな、さいなら」と言いながら歩き続ける。するともう一人別の男が「そんな、ええやんか。少し付き合ってくれるだけやねんで」とニヤニヤしながら声を掛けるが、かすみはその声を聞いた途端、背筋に冷たいものが走るような嫌悪感を抱いた。とその時、神室霊華がいきなり「きゃっ」と叫び声を上げた。どうやらその男か神室霊華の腕を掴んだようで、かすみは実力行使になるのかと警戒を強める。そして女性陣3人が動きを止めたことで、ナンパ師達は話が通じたと勘違いしたのか、
「やっと分かってくれたんやなー」
と最初のナンパ師がニヤニヤしてかすみにそう伝えた。かすみは首を横に振りながら、
「あんな、女性の腕を掴んだ時点で、
自分らアウトやで。それ分かってるか?」
と睨み付けたかと思った時、かすみの手元には召喚の書が現れていた。そしてそのまま何かを召喚したのであった。
「うわー、ななな、何やねんな、このカラス。
どっから出て来たんや!」
と叫びながらナンパ師達は10羽のカラス達を手で追い払おうとするも、カラス達は執拗にナンパ師3人組を襲い続ける。あるカラスは脚で髪の毛をむしり取ろうとする、またあるカラスは嘴で頭を突っつく。一応怪我をしない様に手加減しているようだが、されている側からすると恐怖以外の何物でもない。まるで昔の映画の一場面のような光景であろう。そしてそのカラスの正体は、言わずと知れたかすみが召喚したカラスのレイちゃん達である。そしてナンパ師3人組は、カラスから逃れるために一目散に走り去るのだが、それでもカラスのレイちゃん達は執拗に後を追い続ける。その様子を見ていたかすみは、満足げに頷いて「ほな、うちらも行こか」と神室霊華とエンペラールに伝えて、転移場所に向かった。向かう途中で神室霊華が
「師匠、あのままで宜しいので?」
と尋ねると、かすみは
「もう少しレイには頑張ってもらわんとな。
やっとレイが役に立ったわ!」
ははは、と笑いながら歩き続ける。神室霊華は苦笑を禁じ得ないものの、そのまま黙ってかすみの後について行った。とその時、またしてもあの人の体内時計のアラームが鳴りだした。かすみは
「もうそんな時間やねんな。
みんな、晩御飯どないする?」
とかすみは神室霊華とエンペラールに尋ねた。実は彼女達もお腹が空いてきたところで、かすみの提案には渡りに船であった。どうやら昼のもんじゃ焼きだけでは足りなかったようだ。そこでかすみが「ほな、ここの名物の串カツでも食べに行かへん?」と言うことで、3人は商店街の中にある串カツ屋に入り、ビール片手に串カツを堪能したのだった。
「あっ、ソース二度付け禁止やねんから、
気ぃ付けなあかんねんで!」




