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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球激動編

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地球激動編 1-179 異世界の大召喚術師、日本の夏祭りを楽しむ (後編)

異世界の大召喚術師、日本の夏祭りを楽しむ (後編)


盆踊りが行われる会場は、神室霊華の住む町内にある公民館前の広場である。丁度野球のグランドとしても使えるようになっているため、それなりに広い敷地である。そして今は、広場の中央部には立派な櫓が組み立てられており、4人がやって来た時には、丁度子供盆踊りの真っ最中であった。


  「エンペラールさん、あんな風に

   踊りながら櫓の周りを周るんですよ」


と物部かすみが説明する傍らで、最神玲は「さーて、何を食べようかなー」とキョロキョロと辺りを見回して屋台を探し始める。どうやら、早速腹ごしらえを考え始めているようだ。そんな玲を横目にかすみは「ちっ」と舌打ちをするが、かく言うかすみもお腹が空いていたため、


  「全く、玲。自分な、

   食べることしか頭にないんか?」


と自分のことを棚に上げつつ玲に毒づいた。玲はかすみの状態を百も承知なため、


  「おや~?かすみさん。

   何も食べずに踊るつもりなんですね?」


と挑戦状を叩きつけた。売られた喧嘩は値切らず即言い値で買い取るかすみとしては、早速玲に対し何か言おうとした時、神室霊華が


  「2人とも、ここで運動しても疲れるだけですよ。

   先ずは玲さんではありませんが、

   何か食べておきませんか?」


と無表情でそう伝えると、かすみも渋々だがその意見に同意した。そこで4人はそれぞれ好きな物を買いに屋台に向かうのだった。



  「ねぇねぇ、カスミさん。

   このまーるいのって何ですか?」


とエンペラールは楊枝に刺したたこ焼きを手にしてかすみに尋ねた。それはかすみが真っ先に買った屋台の粉もん3兄弟の長男であるが、エンペラールはたこ焼きを食べた事がなく、興味津々な様子でそれを手にしていた。


  「それはですね、たこ焼きっちゅう、

   まあうちの地元の名物ですね」


外はカリカリで中は柔らかく、しかも8本足の蛸の一部が入っていることを説明した。ただし熱いから気を付けて食べないと口の中を火傷する、と言う忠告も与えた。その為エンペラールは驚いてしまい、


  「そ、そんな危険な物、食べて大丈夫なの?」


と心配気に尋ねるので、念のためかすみが


  「こうやって、少しずつ食べ進めると

   大丈夫って...あっつー!水、水、水!」


とやはり熱かったからか、直ぐに水を要求する始末である。そのため、弟子の神室霊華が急ぎペットボトルの水をかすみに手渡して、何とか事なきを得たようだ。その様子を見ていたエンペラールは、一時食べるのを保留することにした。その代りに、玲が買って来た粉もん3兄弟の次男、お好み焼きを摘まむことにしたのだが、


  「うーん、やはりカスミさんの

   お好み焼きの方が全然美味しいですね。

   でもこれはこれで、食べられますけどね~」


とかすみ特製お好み焼きをベタ褒めしたりする。お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいのだが、ここに居るM&Mの3人は、それがお世辞ではなく本心からであることを十分に理解している。それ位に、かすみの作るお好み焼きは絶品なのであった。その後エンペラールは、粉もん3兄弟の三男、焼きそばを手にしたが、こちらは屋台の鉄板で焼き上げた方が美味しいと評した。玲としては


  「まぁ、流石に鉄板で焼く焼きそばには

   なかなか太刀打ちできませんけどね」


と自虐を込めた苦笑いを浮かべつつ、でも確かに屋台の焼きそばはどうしてこうも違うのか、ふと考え込んでしまうのだった。もう殆ど、料理人と言うべき反応だろうか。そうやって各自のお腹を満たしたところで、いよいよ大人向けの盆踊りが始まるとのアナウンスが会場に伝えられた。そこで4人は片づけをしてから早速盆踊りの輪の中に加わることにした。


 盆踊りの定番の音頭が会場に設置されているスピーカーから流れると、櫓上に陣取るベテラン達の踊りを真似ながら、櫓を中心に反時計回りに進みだす。かすみは少し遅れるものの何とか踊れているようで、そのうちコツを掴んだところで積極的に踊りだした。神室霊華も最初はぎこちないものの、こちらも次第にコツを掴んできたようだ。問題は宇宙人コンビだが、エンペラールは最初よく分からずに前を行くかすみの真似をするのだが、かすみも最初はぎこちなさから手足がバラバラのため、その影響でエンペラールも何をしているのか分からなくなっていた。だが1周したところで漸くコツを掴んだようで、今は笑顔を振りまきながら踊っている。それも何やらノリノリな感じもする。


 一方の玲はと言うと、最初、手足がバラバラで、一体自分は何をやっているのだろうかと思わずにはいられない位に、落ち込みそうになった。だがここで諦めたりすると、後でかすみに嫌味を言われるのが目に見えていたため、何とか腕の方はそれなりに出来るようにはしたのだが、足の方が未だ怪しい所がある。それでも、4人は思い思いのスタイルで踊り続けたのであった。


 気づけば1時間ほど踊っていたようで、流石に疲れたのか、一度休憩を取ることにした4人。残念ながらベンチやテーブルサイドは人で一杯のため、玲と神室霊華は2人で花壇の植え込み近くに腰を下ろして、持参した団扇(うちわ)で扇いでいる。かすみとエンペラールはと言うと、2人で何やら買いに行ったようだ。


  「かすみが元気なのは分かるけど、

   意外とエンペラールさんも元気なんだねー」


  「そうですね。私は日ごろの運動不足が祟って、

   結構足に来てます」


僕もですよ、ははは、と2人で笑いながら会話を楽しんでいる。慣れない下駄を履きながら踊ったから、余計にであろう。そんな会話をしている2人の元に「おーい、麗華!麗華!」と神室霊華の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。だが2人は別の「れいか」を呼んでいる声だと思ったのか、そのまま無視して会話を続けている。そのうち、2人の目の前にその人物がやって来た。玲と神室霊華がふと見上げると、そこには年の頃は50代半ばくらいの、この祭りの主催者が着る半纏(はんてん)を羽織った紳士を目にした。2人はてっきりここに座っていけなかったのかと思い「すいません、今どきます」と言って立ち上がりながら、ついその人物と目が合った。すると神室霊華が驚きの声を上げた。


  「お、お父様。どうしてこちらに?」


そう、目の前に現れたのは神室霊華の父親である紀忠興(きのただおき)であった。どうやら娘の麗華が祭りに参加している様子を本部席から目にしたようで、こうして声を掛けて来たというのだ。ただし、実はもうお分かりだろうが、神室霊華の隣に佇む青年、最神玲を娘の彼氏だと思い込み、どんな奴が娘の彼氏なんだということを調べに来た、と言うのが真相である。そんなこととはつゆ知らず、玲はニコニコしながらも、「どうも、今晩は」と普通に挨拶をした。そして神室霊華はと言うと、どうやら父親の目的が玲にありそうだと女の勘が働いたようで、早速


  「お、お父様。こちらは私と物部さんの

   降霊術の先生にあたる方です」


と先回りして紹介しておいた。すると紀忠興は眉間に皺を寄せて怪訝な表情になりながら


  「先生と言えば、物部様だけではないのか?」


と昨年の大型連休で紹介した物部かすみのことを言うのだが、


  「はい、物部さんは私の師匠ですが、

   こちらはその物部さんの

   先生にあたる方なんです!」


と額に汗を浮かべながらそのように説明した。玲としては別に間違ってはいないと思いつつ、でも自分達に上下の関係は無いと考えているため、少しだけ訂正しようと口を開きかけた時、


  「みんなー、お待たせやでー!」


とかすみが呼びかけて来た。かすみとエンペラールの両手にはかき氷のカップが握られていた。そしてかすみから神室霊華に、エンペラールから玲にそれぞれ渡されたのだが、


  「ん?どないしたん、みんな?」


とかすみが問い掛けるが、直ぐに


  「あっ、霊華さんのお父さん。

   ご無沙汰してます!」


と紀忠興に向かって挨拶をした。紀忠興は突然やって来た女性が娘の麗華に何かを差し出したのを見て、そちらに視線を移したのだが、まさに今話にあったかすみがそこに居たため、少し驚きつつ直ぐに


  「物部様、こちらこそご無沙汰しております。

   それと何時も娘の麗華が

   お世話になっているようで

   有難うございます」


と頭を下げながら丁寧に挨拶を返した。これにはかすみは恐縮しつつ、だが忙しい身であろう紀忠興がなぜ夏祭りに参加しているのかが気になったのでそのことを尋ねた。すると、


  「私は毎年、こちらの夏祭りには

   少ないながらも寄付をさせて

   頂いておりまして、その縁で

   世話役みたいなことを

   させて頂いております」


と言うことのようだ。ちなみに、神室霊華もそれなりの寄付をしているというのだ。そんなことを話している横では、玲は立ったままで、エンペラールは花壇の植え込み近くに腰を下ろして、早速かき氷を味わっている。そして


  「このかき氷と言うもの、

   冷たくて美味しいですね~」


  「そうですね。こういう時に食べると

   また格別ですね。汗が直ぐに引いて行きますよ」


もっとも自分達の別荘は涼しいからこういう食べ物は必要ないんですよね、ははは、と玲は笑いながらエンペラールと2人で会話を楽しんでいる。そんな2人、特に外国人のエンペラールが誰なのかに興味を抱いた紀忠興は娘にそのことを尋ねた。すると


  「こちらはですね...ロムリアブランドの

   タチアナ様のお姉様でして、

   しかも玲さんの先生にあたる方です」


「つまり私から見ると、先生の先生の先生となりますね」と神室霊華は笑顔で父親にそう答えた。勿論、そこには少しの嘘が含まれているが、玲の先生と言う表現は、決して間違ってはいない。何と言っても、玲と言うより、中身のカーンフェルトの生まれた時代では、エンペラールは召喚術の開祖とまで呼ばれた人物である。そしてエンペラールのことを尋ねられたら、このように答えようというのは、玲の発案でもあった。そんな神室霊華は、エンペラールに自分の父親を紹介した。エンペラールは玲の手を借りて立ち上がり、直ぐに右手を差し出した。これは握手と言うことなのだが、ロムリアではエンペラールが誰かと握手することはない。だが先日地球に召喚されたロメロ5世もそうだが、やはり郷に入れば郷に従えで、その星の習慣を身に着けて対応しているようだ。ただ残念ながら、紀忠興にはエンペラールの言葉が分からないため、玲が通訳を行うことになった。そして玲の口からも、エンペラールがタチアナの姉であるとの紹介をされたことで、驚きつつもついエンペラールを見つめてしまった。確かにあの特徴的なオッドアイをしていることは、どう考えても姉妹であるとしても全く違和感がない。すると直ぐに娘の麗華に向かって


  「もし差し支えなければ、是非我が家に

   ご招待差し上げたいのだが...」


と言うのだが、エンペラールも近いうちに国に帰ることになるため、多分次回来日された時にでもご案内しては、と神室霊華は答えるに留めた。やはり実家の紀家の晩餐となると、最低でも1週間は準備に費やされることを承知しており、その日程で進むと、恐らくロムリアへの帰還後になりそうだと想像したからである。


 さて、紀忠興は4人に向かって「どうぞ、最後まで楽しんでください」と挨拶をしてそのまま夏祭り本部に戻って行った。そして残された4人は、これから再び踊るか、それとももう少し屋台を見て周るかを考え始めるのだが、エンペラールが何やら面白そうな屋台を見つけたということで、4人はそこに向かうことにした。そこは


  「へぇー、これって射的やんな!

   うちは子供の頃によくやってたわ」


  「私はしたことありませんね。玲さんは?」


  「ははは、僕に聞かれても困りますよ、神室さん」


すいません、そうでしたね、と神室霊華は少し顔を赤くしながら、玲に謝罪した。そもそもサモナルドには銃そのものが存在しないため、このような遊びと言うかゲームは当然したことは無い。ただし、


  「あっ、でも、ボーガンみたいなので

   的を射抜くゲームと言うのかな、

   そんなのはやったことありましたね」


と、むしろ更に難易度が上がりそうなことをしていたというのだ。するとエンペラールも


  「うーん、私は残念ながらそう言うことを

   した経験はありませんね。

   でも、これってあそこにある(まと)ですか、

   あれに当てれば良いんですよね?」


と直ぐにでもやる気満々の表情でかすみに尋ねた。そこでかすみは、


  「ほな、うちがちょっとやってみますね。

   同じように真似したらええですからね」


と言うことでかすみがチャレンジすることにした。


 そして数分後、


  「あれ、絶対、的を接着剤で固定してるで!!」


ホンマ腹立つなー、とかすみは歩きながらぼやき続けている。一方のエンペラールはと言うと、小さな熊のキャラクターのぬいぐるみを手にしてご満悦な表情である。これはかすみが狙った的が倒れずに持ち堪えようとしたタイミングで、偶々エンペラールの撃った弾が当たり、その勢いで見事倒したものである。要するに2人の連係プレーの勝利なのだが、かすみからすると、やはり納得していないようだ。ちなみに、玲と神室霊華は、共に何もゲットできなかったことを付け加えておく。


 その後4人は、屋台の定番である水風船釣りや金魚すくいをするのだが、玲とエンペラールはどちらも全くの未経験のため、特に金魚すくいではポイをそのまま水につけっぱなしにして破いてしまうという、初心者あるあるを実践していた。流石にかすみは、


  「全く。玲、あんな、そのままにしたら

   破れるの当たり前やで!」


と説教を始めるが、かく言うかすみも、大きな金魚を狙い過ぎて結局殆ど取れずに終了してしまう。そんな時に玲は「プスッ」と含み笑いを漏らすのだが、当然そんな不遜な態度を許すようなかすみではない。だが今はじっと我慢をしつつ、後でしっかりとシバクことを心に誓うのだった。そして最終的には、4人合わせて8匹をゲットした。一見ちゃんと取れたように思われるが、これは必ずもらえる参加賞みたいなものである。


  「この金魚ですか、これってこの後

   どうするんですか?」


とエンペラールは玲に尋ねるが、玲もどうするのかは分からない。すると


  「まあ、普通はな、

   家で飼ったりするねんけどな...」


水槽とかエサを用意する必要があったりと、結構面倒な事である。その時、神室霊華が


  「それでしたら、うちの庭の池で

   飼いましょうか?」


と提案して来た。あそこならかなり広い池があり、水草などの餌も豊富にありそうだ。と言うことで、無事8匹の金魚は神室邸の池で飼われることになった。その後、少し小腹が空いたのか、イカ焼きを頬張ったり、綿菓子やチョコバナナを食べながら祭りの雰囲気を楽しんだ。そして丁度盆踊りの最後の演目が終わったところで、夏祭りは終了となった。その後4人は、神室邸に一度戻り、そのまま別荘に転移してから、何時もの様に満天の星空の下で露天風呂に入り、今日一日の疲れを癒したのだった。

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