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サモナルド編1-2 サリとの出会い

サリとの出会い


そう言えば、僕がサリと出会ったのはケンタリアにある召喚技術研究所に付属する召喚術師養成学院でした。この学院は一人前の召喚術師を養成して世に送り出すのが目的で、下は7歳から上は18歳まで大体500人くらいが在籍していて、でも残念ながら誰でも入学できる訳ではなく、必ず召喚術師の素質を持つこと、これが入学の絶対条件。そしてこの世界では、召喚術師は尊敬される職業であるため、学院に通う学生は将来のこの町、この世界を背負う存在になるべく気概を持って日夜勉強に励んでいましたね。ちなみに、普通に誰でも通える学校はあるけど、やはり学院性は、自ずとエリート意識を出したがることがあって、それで何度となく他校の学生との間で(いさか)いがあったりしました(ただし、僕はエリート意識そのものが全くなく、また体力がないのでそういう事には関わらなかったけどね)。そんな学院に7歳から入学していた学院性の一人がサリ。つまり召喚術師としての素質を持つエリート。ただし、彼女の場合特殊なのが、このケンタリアでも数えるほどしかいない降霊召喚術師であること。降霊召喚については別の機会に触れるとして、まあ、サリはエリート中のエリート?(あるいは単にレアキャラ?)なので、それはそれは学院でも大事に育てられている状況でした。一方の僕は、実は元々召喚術師としての素質は持ってませんでした。じゃあ、なぜ学院に入ることが出来たのか?決して騙して裏から入ったとか、そんなことは誓ってもありません。


僕の生まれたところは、ケンタリアの北西部に位置するウィスカーという人口数千人程の小さな町。そこで母一人子一人の母子家庭の環境で生活していました。ちなみに、母は町の学校で教師をしてまして、僕も一時期そこに通ってました。なので、特に貧乏で金がなく生活に困るとか、そういう境遇にはありませんでした。そんな平凡な日々を送るカーン少年ですが、ある出来事がきっかけとなり、自分の人生が激変することになりました。あれは、8歳か9歳の頃だったけど、町の外れに既に調査済みの(と言う名の盗掘がされた)古代遺跡で一人で遊んでいた時のこと。普段は友達数人と探検と称してここに遊びに来ては、「自分は、ハンターの何々だ」とか叫びながらハンティングの真似事したりしてました(大概僕は狩られる役)。でも、その時は皆の都合がつかなくて、結局一人でその遺跡にやってきたんです。


  「そう言えば、ここに一人で来たことなかったっけな」


などと呟きながら、普段見慣れた遺跡を今一度じっくりと眺めてみたりしておりました。ちなみに、その遺跡ですが、確か中央に石室というか部屋みたいなのがあり、そこに何かお宝があったと町の大人たちから聞いたことがありました。そして、その石室の周りに丁度当時の僕の胸の高さ位の12体の石像というか置物がありまして、まあ、それだけの遺跡でした。その時、僕はその12体の石像を一個一個見て回ってたのですが、その中の一つに何となく違和感を持ちました。どういう類の違和感かを伝えることは出来ませんが、他の石像と微妙に違うというか、あっ、そう言えばその石像が埋められているところに僅かな隙間を見つけたんだっけ。それが気になって石像の周りを掘り返していたら、その石像を少しだけ回転させられることに気が付いたんです。それで、その石像を回転させたところ、石像の外側の空き地に地下に通じる扉が開きまして。それは、もうびっくりして腰を抜かしましたが、同時に何か自分がトレジャーハンターになった気分になって、気持ちが高ぶっていたのを思い出します。


そんなハイテンションなカーン少年、躊躇(ためら)いなく地下に進むことにしました。で、そこで見つけたのが、小さな部屋。大人の人がギリギリ立てるくらいの高さはあるものの、サイズは僕の部屋程度かな。そんな部屋の中に、一本の奇妙な柱がありました。柱というか、上側と下側は天井と床面にくっ付いており、真ん中に子供の僕が抱えるには少し大きめの丸い球体がはめ込まれていました。そうそう、丁度屋台とかにある串焼きみたいなもの、あれを立てて天井と床にくっ付いている状況。後は、特にその部屋の中には何もありません。ただただ、その串焼きだけがその部屋にあるのみです。もしかしたら、この球体を回転させられるのではとの好奇心が勝って、いざ球体に両手で触れた途端、球体が光りだしました。ビックリして手を放そうとしたのですが、全く手が離れません。そのまま球体に両手を付け続ける羽目になりましたが、その時何があったのか。実は今でも全く覚えてません。気が付いたら町の病院のベッドの上で、傍には母親が付きっ切りで看病しているところでした。この時は、母に泣かれるは、後でこっ(びど)く怒られるは、散々な状況でしたが、後程落ち着いて何があったかを教えてもらったところ、例の遺跡の小部屋で倒れている僕を偶々傍を通っていたトレジャーハンターの一行が見つけてくれて、町に運んでもらったということのようです。勿論、そのような小部屋が見つかったので、早速件のトレジャーハンター達はその近辺を大々的に調査したようですが、残念ながら小部屋以外何も発見されずとのことでした。で、僕自身も特にお宝を持ってることはなかったので、そのまま彼らは諦めて目的の遺跡に向かったとのことでした。あっ、ちなみに、部屋の中の例の串焼き、あれから特に何も起こらず、何かのオブジェみたいなものではないかと結論を得たとのことでした。


本来であればこの出来事は少年時代の大冒険でしたでお終いになるはずでしたが、実はその後更に大事件が(ただし自分にとっての)発生しました。それは、この事件を機に、自分に召喚術師としての能力が備わったということです。通常、召喚術師の能力は先天的に備わるものだそうで、先天的故に召喚術師の特徴であるオッドアイになると言われています。確かに稀に後天的に召喚に目覚めることが無い訳ではないそうですが、その殆どは降霊召喚術師だそうです(例えば、臨死体験をするなどで目覚めるとか)。僕の場合は、降霊召喚術師ではなく、契約及び創成を行う一般の召喚術師に目覚めたということでした。これは確率的には非常に小さいそうで、何十万分の一とか何とか、そんな感じだということを後日養成学院の方に教えてもらいました。ちなみに、僕が召喚に目覚めたのを知ったのは、学校の授業中。そのとき、筆記用具を忘れたことがあり、筆記用具どうしようとか、どこからか現れないかなとか想像していた時に、目の前に召喚門が表れて召喚書が出現したときでした。いやー、あの時は本人だけでなく、教室中で大騒ぎになりました。そりゃいきなり召喚術師なんて一人もいない教室に召喚門が出現するんだもんね。そんなことがあり、母を巻き込んだりして、結果的には僕がケンタリアの召喚術師養成学院に転入する運びとなりました。ちなみに、学院は全寮制で授業料等は免除、必要な衣食住に関する費用も国が持つという好待遇の環境です。心配性の母も、学院の待遇に満足したのか、僕を笑顔で送り出してくれました。


そんな特殊ケースの僕が9歳で学院に転入するということで、実は学院内でも結構な騒動になったとは後でサリに教えてもらいました。転入自体が全く無い訳ではなく、他国の召喚術師見習の子が転入することは偶にあるらしいです。ところが、それとは異なる、今まで召喚術師の能力がない子供がいきなり召喚術師に目覚めるケースはなかったそう。なのでどこに転入するか、どのような授業をするかなどなど、喧々囂々(けんけんごうごう)として結論がでず。最終的には、学院長からの提案で、転入試験を実施して問題ないと判断されれば、年齢相応のクラスへ転入させる、で落ち着いたんだとか。そして、転入を迎えた当日、僕は朝から緊張しておりました。本来なら、前日に寮に入って、他の寮生たちに挨拶したりとかワンクッション置かれるものと思っていましたが、急なことで入寮の準備がまだ整ってなくて、結局迎えに来られた学院のスタッフの家に一泊することになり、転入試験当日を迎えたのでした。その時の試験内容は、簡単な術式を真似出来るかとか、幾つか自分で簡単な創成召喚が出来るかとか、そんな内容だったと記憶してますが、どれも完璧理解し、しかも創成召喚では要求量をはるかに超えて大量に創成したり応用的なことをしたりとかで、試験管は皆驚きに包まれてました。大の大人がビックリするのを見るのって、なんか楽しいよねって、思ったのを覚えてます。


それから、担任に連れられて教室に入るなり、一斉に僕を見る目に曝されました。多分、人生で一番緊張した時かもしれません。もしこれでも顔がイケメンだとか、睨みを利かせるくらいやんちゃな子供ならまだよかったんですが、顔は普通、体つきはやせ型の筋肉ゼロ、しかも目は召喚術師特有のオッドアイではないし、サモナルド人の瞳の特徴である金色よりも若干濃いブラウン系と、何かとイレギュラーな人物が現れた印象を持たれたようです。で、こういうイレギュラーな存在は、イコール虐めの対象となるのは、時間の問題でした。でも、僕にとって幸運だったのは、そういう時に常に(かば)ってくれる存在が身近にあったことでした。それが、同級生のサリベリーナ。彼女も僕と同じくオッドアイではないけど、でも見惚れるほどに綺麗な金色の瞳と、同じく綺麗な金色の髪を持つ美少女でした。しかも性格は明るく陽気で、常に彼女の周りには彼女を慕う友達が何人もいました。でも、そんな彼女が何ゆえに僕のような者を助けたのか。後に本人に聞いたところでは、何かよく分からないけど、助けないといけないような心の声があったとか何とか。うーん、よく分かりません。でも、助けてもらったのは感謝ですし、サリと友達になれたことはもっと感謝しています。ちなみに、彼女は僕よりも少し生まれが早く僕と同じ一人っ子なので、何となく弟ができた感じだったそうです。そんなに、僕って幼かったんかな。まっ、これがサリとの出会いでした。


その後サリと付き合ったのかと言われると、それは無かったですね。まあ、向こうも僕を弟みたいに感じてたようですし、僕の方もお姉ちゃんみたいに頼るところがあったりしたので。ただ、15歳になったとき、僕は学院を(飛び級で)卒業して、そのまま今の職場である召喚技術研究所に就職することになり、それ以降はサリと頻繁(ひんぱん)に会うとかなくなりました(偶に近況報告することはありましたが)。


ちなみに、余談ですが、僕が飛び級に至ったのは、僕の召喚技術がかなり特殊だからということでした。子供の時の例の事件後に召喚術師に目覚めましたが、その時に単に召喚術師に目覚めただけでなく、二つの大きな贈り物を手にしておりました。一つ目の贈り物は、不釣り合いなくらいに膨大な召喚エネルギーを与えられたこと。そして二つ目の贈り物は、瞬時に召喚術式を理解できる能力が与えられたことでした(術式の良し悪しも判定できます)。この規格外ともいうべき能力のお陰か、研究所のお偉いさんの目に留まりまして、学院途中で卒業と同時に研究所への就職となりました。ちなみに、これらの贈り物の存在は実はかなり早い時期に分かってました。転入するにあたり、基礎が出来てない状況での転入はすべきではなく、初等科の7歳の子達と一緒に始めるべきではないかとの意見があったようでした。それは至極当然であり、僕もそれに文句を言うことは一切考えてませんでした。それでも、一応現状はどのような状況かを確認しておこうということで転入試験を受けて無事に転入となったのでした。まあ、そんなこんなで、サリと出会えたことで、辛くなりかねなかった学院生活をほぼ楽しく過ごせたことは彼女に感謝しかありません。


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