はじめての友達、エマ
憧れの教会に着いた。
白い石造りの建物は空へ届きそうなほど高く、思わず見上げてしまう。生まれ育った孤児院とはまるで違う。
どこか神聖で、少しだけ怖さを感じた。
そう思いながら、馬車から降りる。
「おじさんありがとう!」
お礼を告げると、おじさんは優しい笑みを浮かべる。
「頑張るんだよ。たまには街に帰ってきて、リナにも会いに来ておくれ。」
リナは街で仲良くなった大切な友達だ。昨日は風邪で会えなかったから、次に街へ帰ったら一番に会いに行こうと思っている。
「もちろんよ、おじさん。リナと、おじさんの奥さんにもよろしくね。本当にここまでありがとうございました!」
おじさんに再度お礼を告げると、馬車が去っていく方へ手を振る。最後まで見送ると、また教会を見上げた。
今日からここで生活するのか。なんだか不思議な感じ。
それより、あの記憶は何だったのだろう。
日本?会社員?
どれも知らない言葉のはずなのに、胸の奥がざわつく。
色々考え込んでいると、門番の人に声をかけられた。
「お嬢ちゃんも今日から見習いかい?」
「はい、隣町から来ました。シーナです。よろしくお願いします。」
はじめが肝心と何処かで習った記憶がある。マリアだっけ?とりあえず礼儀は重要だ。
なんて考えながら、笑顔で返事をする。
門番のおじさんは聞いていたようで、早速中に案内をしてくれた。
「ここがこの辺では1番の教会さ。他にも見習い志望の子達が集まっているから、中に案内するよ。」
後をついていくと、そこはちょっとした控え室なのか、他にも私ぐらいの女の子達が集まっていた。皆んな緊張しているのか、少し表情が固い。
「ありがとうございました。」
門番のおじさんにお礼を告げると、空いている椅子に腰掛ける。隣には他の子達よりも泣きそうな表情の子がいたので、思わず声をかける。
「大丈夫?私は隣町から来たの。シーナって言うわ。よろしくね!」
初対面は笑顔でいれば大丈夫と、そんな考えが頭に浮かぶ。不思議に思いつつさらに隣の子に話しかけた。
「あなたの名前を教えて?」
彼女は俯いていた顔を上げると、顔を少し緩め答えてくれた。
「私はエマ、よろしく。遠い街から来たの、こんな都会は初めてで、自分と同じくらいの子達と話したことなかったから緊張してたの。」
そう話すエマを見て、私はようやく合点がいった。
緊張していたから、あんなに泣きそうな顔をしていたのか。
何だかエマは、チベットと同じ赤毛にそばかすの可愛らしい顔で、何処か既視感を感じる。チベットと似た髪色をしていたので、つい話しかけたくなったのかもしれない。
チベットはエマより感情表現が豊かで、笑ったり怒ったり忙しい子だ。
でも、そんなところも私は大好きだった。
そう思いつつ、エマと話を続ける。
「何だか私の友達にエマが似ていたの。私も緊張していたので、エマに会えて緊張が解けたわ。ありがとう!」
そう言うとエマは不思議な顔をしたのち、ほにゃりと笑った。この子、可愛い!
2人で少しずつ話していると、1人のシスターが中に入ってきた。これから何か始まるのだろうか。




