旅立ちの日
朝が来た。
この日が来なければ良いのに、来て欲しくて、
来て欲しくなかった日。
そんなことを思いつつ布団から抜け出す。
マリアはもう起きていたようで、
今日もいつものように慈愛の笑みに満ちた顔で
私を見つめていた。
「では少し早いですが、馬車を呼んでいます。準備をしたら外に向かいましょう。」
昨日皆んなにはお別れを言ったので、後悔は無いが
皆んなが寝ているうちに出かけなければ行けないのは寂しい。
「はい、シスターマリア。」
そう返事をすると、急いで着替えをして、身の回りの荷物を再度確認してバックに詰め込んだ。
今まで孤児院では遠くに出かけることもなかったので、バッグは持っていなかったがマリアが選別にと革製の素敵なバッグをくれた。
自分の体には少し大きく感じるが、大人になったらこのバッグが似合う素敵なシスターになりたい。
準備もできたので、シスターと外に向かう。
外には馬車がもう着いていた。
御者のおじさんは街の友達のお父さんだ。
「おじさん、今日はよろしくお願いします。」
「もちろんだよ。安心して乗ってくれ。」
口周りの髭の奥の方が、横に広がる。優しい、クマさんみたいなおじさん。
最後にマリアの方を向き、挨拶を告げる。
「シスターマリア、今までありがとうございました。私教会でも頑張ります。」
マリアは優しく微笑み、私の顔に手を当てた。
「あなたの未来が光に満ちたものでありますように。」
マリアは私の頬に口付けすると、
さらに頬を緩めた。
「行ってきます!」
一言告げ、馬車に乗り込む。
おじさんに合図した馬車を出してもらう。
もう一度マリアの顔を見たいと思い、走り出した馬車の窓から後ろを振り返る。
そこには急いで寝巻き姿のまま外に出て声を張り上げる、孤児院の皆んな。
「シーナ!今までありがとうね!」
「シーナ大好きだよ!!」
「シーナ!」
「また会いにきてね!」
口々に叫ぶ皆んなの声を聞いて、また涙腺が緩む。
「皆んな、今までありがとう!私、シスターマリアと同じ素敵なシスターになって、またこの孤児院に戻ってくるわ!皆んな大好き!」
「シーナーーーっ」
「シーナ元気でねっ」
次にくるのは、シスターとして成長した時に戻ってくると心の中で決意を固め。少しずつ遠ざかっていく大好きな孤児院を後にする。
あんなに泣かないでお別れすると決めたのに…
結局泣き顔は見られてしまったが、最後に皆んなにお別れを告げられたのでよしとしよう。
そんな事を思いながら、馬車の中でハンカチを濡らすシーナだった。




