最後の夜
孤児院に戻ってきたら、ベット周りのわずかな自分の私物を片付け、院長室に向かう。
コンコンッ
「どうぞ」
マリアの声にドアを開けて中に入る。
ところどころに傷や汚れのある孤児院だが、院長室だけは唯一綺麗な場所だ。
貴族の人もいらっしゃるとかで、ソファーやテーブルは格の合うものを揃えているらしい。
子供の私たちにとってもどうでもいいことだが、貴族の人たちは寄付金を持ってきてくださるので綺麗な環境で丁寧に対応することが大切とよくマリアは院長室の掃除の時に言っていた。
「シスターマリア、準備はできました。皆さんへのお別れもすみました。」
マリアに告げると、マリアは院長室の奥の金庫から十字架のネックレスを取り出して私に持っておくように告げた。
「シーナ、これはあなたが10年前の今日、孤児院の前で見つけた時におくるみの中に一緒にあったものです。もしかしたらあなたの家族を探す手掛かりになるのではと思い、今日まで大切に保管してきました。今日からは、肌身離さず大切にするのですよ」
「そうだったのですね。家族の手掛かりになるものら何一つ無いと思っていたので、嬉しいです。大切にします!」
マリアに告げると、早速首にネックレスをかける。
そのあとはマリアと一緒に食堂に向かう。
最後の夕飯を食べる。
ふかした芋と、野菜たっぷりのスープ、なんだかいつもよりお肉が多い気がする。
「チベット、今日のスープいつもより豪華だね。」
「あら当たり前じゃない、皆んなが自分はいいからってシーナのスープにお肉を入れたのよ。もちろん私も。」
皆んなの優しさに涙腺が緩む。
まだ、泣かない。笑顔でお別れする。
心で自分に暗示をかけつつ、目の涙は気にしないふりをして皆んなにお礼を告げる。
「ありがとう!皆んな大好き!!」
皆んなも同じ何処かぎこちない笑顔でこっちを見つめてくる。皆んなも私と同じ気持ちのようだ。
今日のスープはいつもより100倍美味しく感じた。スープが少し塩っぱく感じたのもきっと気のせい。
食後のお祈りのあとは、皆んなで片付けたら
それぞれ部屋で体を拭いて後は寝るだけ。
今日は特別ですよと、マリアが微笑み食堂の机を片付けて床の上に皆んなで布団を並べた。
ベットじゃないから床は硬いけど、皆んなでぎゅうぎゅうにくっついて寝た今日は自分の一番の思い出だ。もちろん、マリアも一緒に寝てくれた。
幸せな夜だった。




