儀式
ユリアのあとを続き長い廊下を歩くと、大きな扉の前についた。
「では順番に中に入ってもらいます。」
ユリアの言葉に思わず、息を飲む。まさか一人一人行うなんて余計緊張する。中ではどんな事を行うのであろうか。
私の気持ちが伝わったかのように、ユリアは静かに告げた。
「中央の泉へ進み、石を一つ手に取り、そのまま祭壇へ。」
それだけだった。
質問する空気ではない。
皆、静かに頷く。
なるほど、特に心配は無さそうな儀式だ。何故石を拾うのかは分からないが、儀式的なものなのだろうか。
「では順番に始めます。まず初めに、エマ。」
「えっ、わたし…?」
エマが目を潤ませる、頑張れエマ。
エマは私の方を振り返って目を合わせてから、緊張しつつもドアを開けて中に入って行った。その後も次々に人が呼ばれ、ついに最後の1人になった。
よりによって最後だなんて他の子達は中にいるのだろうか?余計緊張する。
「では、シーナ。中に入りなさい。」
ユリアの言葉に返事をして、重い扉に手をかける。
ギィッ――
音を立てて開く扉
中には、先に行った子達がシスターと一緒に前の方にいる。遠くの方にはエマや、セイラもいるようだ。
そして、中には中央にくぼみが有り、水が溜まっている。湧水なのだろうか?チョロチョロッと音がどこからか聞こえてくる。
ええと、そのまま前に進み水の中を進んで、石を拾えばいいのよね?
ポチャッと、足を踏み入れたことで静かな空間に音が広がる。
ポチャッ、ポチャッ
石へ手を伸ばした、その瞬間だった。
胸元の十字架がじんわりと熱を帯びる。
「……え?」
思わず手を離しかけた、その時。
どこからともなく。
“カラン”
と、小さな鐘の音が聞こえた気がした。
誰も反応していない。
聞こえたのは、私だけ?
そのまま手に持ち石を拾い上げると、先程の熱さは嘘だったかのように何も感じない。気のせいだろうか。
そして、そのまま水から出て祭壇に石を置く。他の子達の石も置かれているようだ。皆大きさは違うが、どれも衣装と同じ紋様みたいな物が描かれていた。
「では儀式をこれで終了とする。奥の扉から部屋を出てシスターユリアの後に続き、礼拝堂に向かうように。」
シスターの声の通り、みんなでユリアの後に続き部屋を出る。
もう一度出る前に後ろを振り返ると、なぜだか水の中が光ってみえた。
また前を向くとみんなが遠ざかる姿が見えた。急いでみんなのあとを追わないと!さっき気になった事は頭から消え失せ、エマやセイラの後を追うのだった。
シーナが部屋を出たあと。
司祭が小さく呟く。
「……今年も、一人いたか。」
隣のシスターが顔を曇らせる。
「ええ。」
「神は、また選ばれた。」
シーナはまだ知らない。
あの日、泉で拾い上げた小さな石が。
自分の運命を、静かに決めてしまっていたことを。




