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一匹狼クール系女子がなぜか俺に構ってくる件  作者: たかはし
一年生編

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55.神崎さんには、困らされてばかりだな

「いらっしゃ~い。あら、燈と悟君じゃない?」


 薫さんが、微笑ましい物を見るように目を細めて、言う。賀東先輩との一悶着があってから、俺達は〈喫茶カントリー〉に行くことにした。やれやれ、周囲の人間の奇異な視線から、やっと解放されて嬉しいわ。


「ふーん、もう二人は付き合ってるのかしら?」


 あ、駄目だ。これ、イジられる奴だ。


()()付き合ってないからっ」


 いやいや、神崎さん……まだって何っ? その言い方だと、俺に好意があるみたいじゃねえかっ!?


「薫さん。俺と神崎さん……燈さんじゃ、釣り合わないですよ。それに、周りから笑われちゃって、燈さんに嫌な思いさせちゃうから。付き合うことは、万が一にも有り得ませんよ」


 その言葉を聞いて、薫さんは嘆息する。え、俺なにか悪い事言ったか?


「燈も、苦労するわね」


 いやいや、苦労はしないだろ。寧ろ、助かるように考えてるだけなんだが。


「悟は、私の事……嫌い?」

「うっ」


 そんな下から、顔を覗き込みながら、言われても……。ってか顔が近いから、顔がっ。


「き、嫌いだったら……手、繋ぐ事も許さないと、思うけど」


 俺が、真面目に答えると、神崎さんが赤面する。いや、なぜそういう反応になるんだ?


「悟は、そういうとこズルいよね……バカ」


 馬鹿呼ばわりされてる? そういうとこってどこだよ? 本当に、何言ってんのか分かんねー。まさに女心は秋の空だな。


「と、とりあえず。手……離してくれると、嬉しいんだけど」


 流石に、店内に入ったんだから、もうそろそろ離してくれてもいいでしょ?


「やだっ」


 そう言って、神崎さんは俺の腕に、身体ごと押し付けてくる。いやいや、神崎さん。貴女のお家に帰ってきたんだから、そろそろ俺は、お役御免でしょう。


「あの……薫さん、なんとかして貰えますか?」


 俺は、薫さんに助けを求める。でも薫さんは、いたずらっ子のような笑みを浮かべて


「悟君、燈の好きにさせてあげて」

「えー」


 俺は、その言葉に落胆する。まあ気持ちは分かる。今まで友達を、連れてくる事の無かった神崎さんが、友達を連れてきた。同性ではなく異性の。


「燈が、こんな楽しそうなの……久々だもの。しかも男の子と一緒で」


 そこまで言うほどなのか? 確かに、神崎さんは俺以外の男では、太一としか話してるところしか、見た事ないけど。


「ほらほら、そこにずっと立ってないで、いつもの席に座って」


 俺はそう言われて、内心ほっとする。いつも、座ってるテーブル席は、一人掛けで……テーブルを挟んで、向かい合うよう配置されている。これなら、必然的に手は離さなくちゃならない。


「神崎さん。席に座るから、どっちにしろ手を離さなきゃだよ」


 彼女の顔を、見ながら言う。すると少しだけ、表情を暗くさせたかと思うと、なにかを思い付いたのか、瞬時に顔を明るくさせる。な、何をする気だ?


「じゃあ行こっか」


 そう言って、歩き出す。俺も引っ張られる形で、付いていく。


「ちょっと待っててねっ」


 テーブル席に着くと、椅子を引く。ん? なんか、長い事引っ張ってないかっ!?


「あの、神崎さん」

「これで良しっ」


 何が良しなんだよ? いつも俺が、腰掛けてる位置より、大分離れてんだけど……。


「さ、座って座って」


 椅子の背もたれを、二回叩いて催促してくる。俺は、言われるがままに、席に着く。


「うん、じゃあ……失礼するね」

「えっ」


 俺は、いきなりの事に声を失う。俺の横に立った神崎さんがそのまま、俺の膝に座ってきた。柔らかい感触が、布越しに伝わる。


 お、落ち着け。冷静に冷静にだ。まずは、普通に相手の意見を聞こう。


「あ、のさ」

「な~に~?」

「ここに座られると、その……困るんですけど」


 ってか、そんな幸せそうな笑顔を浮かべないれー、断り辛いからっ!! よし、ここは心を鬼にして言うぞっ。


「……重いんだけど」

「あのさ、それ本当だとしても、言わない物だよ……普通」


 ジトッとした目を、向けてくる神崎さん。いや、あの顔を態々近付けてまで、言う必要はないのでは? というか、ガチでキレ出しそうじゃんかっ!!


「その……ごめんなさい」


 素直に謝ると、それまで膨らんでいた神崎さんの頬が、ふっと緩む。


「うんうん、素直で良い子だね~」


 幸せそうな笑みを浮かべながら、俺の頭を優しく撫でてくる。


「顔、真っ赤にして可愛いな~」


 いや、普通に男なら誰でも、恥ずかしいだろ、この状況はっ。女の子が自分の上に、乗っていて、顔至近距離まで寄せられて、頭撫でられて……普通でいられる奴いるか? いないよなっ!?


「ふふっ、燈凄く積極的ね~」


 いやいや薫さん、娘の暴走を止めてくれよっ!? 俺は、浅く息を吐く。まったく……神崎さんには、困らされてばかりだな。


 でも、俺は別に嫌な思いはしてないし、神崎さんが楽しいなら、それはそれで良いかっ。俺は、神崎さんに頭を撫でられ続けながら、そう割り切るのだった。


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