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一匹狼クール系女子がなぜか俺に構ってくる件  作者: たかはし
一年生編

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55/58

54.悟なら、やっぱり……そう言うよね

今回はメインヒロイン視点です。

〈神崎燈side〉


 良かった……戻ってきて。なんか、良く状況分かってないけど、悟が困ってる……ううん、怒ってる。


「……神崎さん」


 彼の表情が、驚愕で満ちている。そうだよね。私が戻ってくるなんて、予想してなかったんだから。そうなるよね。


「……燈ちゃん」


 苦々しげな顔をする賀東先輩。私が来たのが、予想外だったみたい。というか、なんか三人知らない人、引き連れて来てるんだけどっ。


「悟をどうする気だったんですか?」


 私が尋ねると、勝ち気な笑みを浮かべる賀東先輩。


「あー、四人で無理矢理、頭文字D奪おうと、思ってたのにー」

「なっ」


 なに言ってるのこの人? そんな事、人としてあり得ない。というか、普通にヤバいじゃん。悟の気持ちを無視してまで、やる事じゃないでしょっ。


「悟の事なんだと思ってるんですかっ」

「んー」


 私の問い掛けに、賀東先輩は目を閉じて、考える素振りを取る。そして目を開けて


「単なるオモチャかなー」


 私はその言葉に固まる。そしてフツフツと心の底から怒りが沸き立ってくる。オモチャ? 悟はオモチャなんかじゃないっ。


「悟はオモチャなんかじゃないっ」

「悟だけじゃないよー? アタシにとって、男はぜーんぶっ、オモチャだからー」


 その言葉を聞いて、賀東先輩の周りにいる三人が、クスクスと笑う。私はその光景を見て、絶句する。この人達……狂ってる。


「燈ちゃん、良い事教えてあげるー」

「な、なんですか?」


 私がそう言うと、満面の笑顔で


「人はねー、快楽には抗えないんだよー」


 快楽には抗えない? もしかして……セ、セックスの話っ!?


「さ、悟は違いますっ」

「あははっ」


 私が否定すると、愉快そうにゲラゲラ笑う賀東先輩。何が、おかしいの? ひとしきり笑い終えた賀東先輩が、厳しい目線で私を捉える。


「男はねー、どんなに誠実ぶっても一緒ーっ。気持ち良いことを知った瞬間にー、理性がぶっ壊れちゃうんだー」


 理性が壊れる? そんなの嘘だ。確かに、そう言う人も居るとは思う。でも


「……悟は違います」


 悟は口にしないけど、私と同じで人に言えない重たい過去を、背負ってる。それでも、逃げ出さずに悟は、日々を生きてる。


 幼い頃の悟は知らないけど、一緒に行動してても分かる。悟は……心優しくて、真っ直ぐな、私の大好きな人だっ。


「帰ろう、悟っ」


 私はそう言って、悟の手を掴んで歩き出す。


「それは困るなー」


 私達の行く手を賀東先輩が阻み、その周りを他の人達が、囲む。


「退いてください」


 静かに私は告げる。


「だからー困るってー。そうだー、燈ちゃんも混ざるー?」

「混ざるって何にですか?」

「燈ちゃんもー気持ち良いことしようよー」


 私はその言葉を聞いた瞬間、頭の中でプチッとなにかが切れる音がした。


「ふざけないでっ。私は、そういうことは好きな人としか、する気ないですからっ」

「え、以外だー。燈ちゃんって、もしかしてまだ処女ー?」

「うっ」


 いきなりの指摘に、言葉が詰まる。そんなダイレクトに聞いてくるなんて、信じられない。しかも、よりにもよって悟の前でなんて。


「賀東先輩、いい加減にして下さいっ」


 隣から、怒声が飛ぶ。瞬間、周りが凍り付くように静まる。それまで、チラチラと見ていた通行人も、足を止めてジッとこちらを見てくる。


「さっきから聞いてれば、失礼すぎますよ。それに俺も神崎さんと同じ考えだって、前にも伝えましたよね? アンタ達が、俺をどうにかしようって言うなら、女に暴力を振るいたくないけど……仕方ない」


 そう言って、一歩。悟は前に出る。


「え、ちょっと待って。まさか本当に暴力振るう気なのっ」


 それまで、気怠げに間延びした声を、出していた賀東先輩が戸惑いの声を上げる。


「そりゃ振るうでしょ? とりあえず、一人一発ずつ」


 そう言って、また一歩踏み出す。賀東先輩や他の子が、ビクッと肩を震わせる。私も恐かった。今までに聞いたことのない、心が凍り付くような低い声だったから。


「わ、分かったわよっ。皆行くわよっ」

「え、待ってよ桃~」

「先に行くなんて酷いー」

「置いてかないでよっ」


 四人は、恐れをなして立ち去っていく。あっという間に、視界から消えていった。


「ふう。神崎さん大丈夫?」

「え……あ、うん」


 いつも通りの声音に、私は戸惑う。さっきまでの声と、だいぶ違ったから。


「ごめんね。恐い思い、それから恥ずかしい思いさせて」


 本当に、申し訳なさそうに言う悟。そんな悟を見て私は、声を上げて笑う。


「悟が謝る事じゃないじゃん」

「でも、不快な思いはしたでしょ?」


 本当に、悟は優しいな。どんな時でも、自分より他人の気持ちを優先して、本当に優しい。


「そういう悟……好きだよ」

「え?」


 あ、やばっ。声に出ちゃった。


「あ、えっと。そう、人として好ましいって意味でっ」

「あ、あー。なるほど、ね」


 悟はそう言いながら俯く。顔は見えないけど、耳が茹で蛸(ゆでだこ)のように、真っ赤っかだ……可愛い~好きっ。あ、そう言えば


「さっき言ってた……私と同じ考えって何?」


 私は敢えて、分かってることを聞く。


「それは……俺も神崎さんと一緒で、す……好きな人としか……き、キスとかっ。それ以上のことはしたくないって、意味です」


 うわ~、恥ずかしいのを頑張って堪えて、伝えてる悟超可愛い~大好きっ!!


「なら、これは?」


 私はそう言って、繋いだ悟の手を上に抱える。恋人繋ぎに変えて。


「出来れば……止めて欲しいけど。か、神崎さんが、どうしてもって言うんなら」

「ふふっ、有り難う。この後、お店に行かない?」

「薫さん……〈喫茶カントリー〉?」

「うんっ」


 せっかくだからね。それにもっと悟と話してたいっ。


「そうだね。気分を変えるために……行こうか」

「じゃあ、決まりっ」


 さっきまで、恐い思いしてたけど、不思議。私の好きな人は魅力的だなっ。


「そう言えば、これ以上をしたくなる相手は、居る?」

「ん、残念ながら居ない。って言うか、一生縁ないでしょ」


 即答の悟に、また私は笑う。悟なら、やっぱり……そう言うよね。


 私は、幸福感と安心感を感じなら、悟と一緒に家に、向かうのだった。

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