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一匹狼クール系女子がなぜか俺に構ってくる件  作者: たかはし
一年生編

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39.ま、こういうのもアリだとは思うけどな

「じゃあ、各自教卓に置いてある箱から、クジを引いてくれっ」


 あー怠ぃ。始業式から二日後。今学期初のHRで、なんと席替えをする事になった。


 いや、ていうか別に高校生になってまで、席替えに意味なんか有るのかね? 


 あーでも、人それぞれか。教卓から遠い席になれば、居眠りしやすいってのも有るし、仲良い人間が近くに居たら、楽しめるだろうからなぁ……俺には関係ねぇけど。


 ったく。面倒臭い事になった。全く関わりない男子生徒だけど、余計な事言いやがって。というか、なんで援護射撃で太一が出んだよ、おかしいだろっ。


「ほら、さっさと引いていけー」


 俺はゆっくり立ち上がり、教卓に向かう。ま、考えようによっては良いかもな。今が窓際の最後尾。教師から、注意を受ける事が少なく、窓からの陽射しを浴びて眠れる。うん、最高の席だ。


 出来れば席は変わりたくねえ。頼むぜ……俺のクジ運っ。


「お、最後は影野か。さ、一枚しかないから迷う事も無いだろ」


 俺は先生に一礼してから、箱の中に手を伸ばす。手の平に、ザラザラと触感が伝わる。俺はそれを掴んで取り出し、席に戻る。


 教卓から振り返った時、神崎さんと目が合った。彼女は必死に、神に何か祈るのかのように両掌を合わせていた。いや、席替えにどこまで必死なんだよ。


 俺は席に着いて、三角に折り畳まれた紙を開く。七と書かれていた。俺はすかさず、黒板に書かれた座席表を見る。奇しくも、俺の望んだ席だった。


 まさか、狙ってた場所を引くとは……俺、もしかして調子良いのではっ!! そうだよな。考えてみれば、神崎さんという美少女が、関わってきたくらいだ。今なら何しても許される気がするっ。


「じゃあ各自、クジ通りの席に移動なー」


 教師の言葉が終わると同時に、周りが騒然とする。え、なに。皆別に、机ごと移動しなくても良いのでは。別に机に、道具箱とか入れてる訳じゃないんだから、その席に人が移動するだけで、良いのではっ!?


 ま、まあ良いか。俺、そのまんまだし。俺は、皆が作業を終えるまで、その光景を眺める。


「ふぅ……」


 席の引っ越し? 作業を皆終えて、俺はようやく終わったかと、一息吐く。窓からの陽射しが、直に来る。まだ残暑のせいか、暑いっ。


 そうだよな。まだ夏休み明けとはいえ、宇宙全体の公転が狂ってる状態なんだから、暑いのは当然だよなっ。


 うわーミスったぁ。そこまでは、考えてなかった。なんで今、席替えたんだよ。そして何故俺は、この窓際の席が良いと思ったっ!?


「よう、悟っ」


 左前方から声が聞こえて、目をやる。すると、太一がニッコリと笑っていた。


「まじか? 太一、俺の斜め前の席なのかよ……」

「なんだよ嬉しくねーの?」

「お前が俺の近くだと、騒がしいの確定で嫌だっ」

「全力で否定すんなっ」


 太一が、ギャーギャー喚く。ったく、こんなのが毎日続くのか。俺の平穏が、最近遠ざかってる気がする……というか、過去一で教室で騒いでるな俺。


「ふふっ……やった」


 隣から、声が聞こえて目を向けて、唖然とする。いやいやいやいやっ、嘘だろっ?


「これから宜しくね。野呂君……それに悟っ」


 そこには、神崎さんが居た。


「おう、神崎さんじゃんっ。宜しくー」

「宜しくね野呂君……悟どうしたの?」

「……」


 質問されてるけど、一旦落ち着け俺っ。まず、この席になった上で俺が、陥ってしまう状況を想定しよう。


 まず、太一が居ることで毎日が、騒がしくなる。それだけなら我慢できるけど、隣が神崎さんとか聞いてなーい。


 彼女と隣って事は、周りは必ず授業中とかでも、隙あらば見てくるだろ。休み時間になれば、無遠慮に見てくる。それはまだ良い。問題は


「……イヒャイ」

「悟が無視するから」

「悟。そりゃお前が悪いよ」


 神崎さんが俺の両頬を、力を込めて引っ張る。その光景に太一が苦笑する。俺は周囲に目を向ける。周りの生徒は、どうやらまだ席が替わったばかりで、新しく隣になった者と話すのに夢中になってるのが、大半だ。


 でも残りは、俺達の方を見ていた。というか、俺の前の席の人……堂々とこっち見んなっ。


「よし、これで席替えは終わりだな。苦情とかは、一切受け付けないから。そのつもりで」


 なにっ、唯一の逃げ道を塞がれた、だとっ。


「もしかして悟……私と隣になったの、嫌だった?」

「……っ」


 あー、見るからに元気なくしてる。そんな捨てられた子犬みたいな目で、此方をジッと見ないでくれ。俺は慌てて言う。


「そんな事無いよっ。ただ……これから賑やかになりそうだなって思って」

「悟。うん、退屈なんてさせないからっ。その気でいてねっ」


 シュンとしていた神崎さんが、すぐに笑顔になる。ホント、コロコロ表情が変わる人だなあ。


 ん? というか今のは非常に不味かったのでは? 彼女が、俺を退屈させないようにするってことは、それだけ周りに注目される訳で。


「太一」

「皆まで言うな親友。お前の言いたい事は、分かってるよ」


 おぉ、分かってくれるか。そうだよな。俺達何年もずっといたから、分かって当然か。


「神崎さんと隣の席で、嬉しいのを誤魔化してるんだろ? まったく、恥ずかしがり屋だな悟はーっ」

「うん、俺等今日から絶交な」

「酷くねっ!?」


 ショックを受けている太一を無視して、俺は頭を抱える。何が恥ずかしがり屋だ。ふざけるなっ。


 ま、こういうのもアリだとは思うけどな。俺は腹を括ることにした。決まってしまったものは、しょうがない。大事なのはそれを受け入れ、どう対処するかだ。取り敢えず


「神崎さん、これから宜しく」


 人間の基本は挨拶からだ。あまりの現実逃避でするのが、遅れたけど。やる、やらないじゃ印象大分変わるからなぁ。


「悟……うん、これからも宜しくね~っ」


 そんな俺の挨拶に彼女は満面の笑みで返してくる。これからも? またその内、席替えもするのに、何言ってるんだこの人?


 はぁ、これから沢山大変な目に遭うんだろうなぁ。でも神崎さん楽しそうだし、太一も近くに居るし、それはそれで良い事……なんだろうなぁ。


「ま、なんとかなるだろ」


 俺は小さく呟いて、窓から見える青空に、目を向けるのであった。

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