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一匹狼クール系女子がなぜか俺に構ってくる件  作者: たかはし
一年生編

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35.我が親友よ

今回は影野悟の親友である野呂太一の視点です。

〈野呂太一side〉


 夏休みが終わって、学校で始業式が行われる、今日。


 俺――野呂太一(のろたいち)は、家から学校に向かっていた。通行手段は車。いつも使用人が黒のBMWで、学校まで送ってくれる。


 俺は野呂財閥という日本で、一番デカい財閥の息子という事で、野呂財閥の大きな邸から学校まで、毎朝送られている。


 本当は迎えもと言われたけど、俺はそれを辞退した。降ろして貰う場所も、学校から離れたなるべく人気の無い場所にして貰っている。


 俺も悟ほどじゃないけど、目立つのが嫌いでね。っていうか、九十九高校の校門前で降りたら、いやでも目に入って、噂が立っちまう。


 それに、俺は野呂財閥の息子だけど、俺は親父――野呂弘泰(のろひろやす)が今現在も働かせてる秘書――花崎凛(かざきりん)との間に俺が、野呂太一が生まれた。


 生まれた当時は大変だったみたいだ。そりゃそうだよな。時期、野呂財閥の会長を担う男が、妻子がいるにも関わらず、不倫してしかも子供を作っちまったんだから。


 結論から言おう。俺は形上、野呂財閥の息子として、扱われることになった。母さんは、俺への接触を一切禁止ということで、今も秘書として働いている。

――

 でもそこからだ。俺の地獄が始まったのは。家では、母さん、いや――野呂文代(のろふみよ)に、毎日罵られ侮蔑を受ける。


 それでも俺はめげずに、頑張ってきた。成績も必死にやって上げたし、スポーツも頑張った。でも何をしても両親は、俺を見ることがなかった。


 まあな。文代さんにとって、俺は邪魔そのものでしかないのは認めるけど、親父の態度には今現在もそうだけど、ざけんなって思ってる。


 元々アンタと母さんが不義理をした果てに、俺を生んだんだから、無関係ですって態度を通すのは可笑しすぎだろっ。


 しかもその頃には、俺より三つ上の腹違いの姉貴がいた。物心がついた頃には、俺は文代さんと姉貴――野呂愛美(のろあいみ)に、罵詈雑言を浴びせられる毎日だった。


 今思い出しても、よくあんな辛い日々を生きぬけられたな……俺。


 家では文代さんと姉貴に、容姿の違いや母さんの悪口、しまいには親父の事まで悪く言っていた。相当鬱憤が溜まってたんだろうな。


 いや、文代さんは仕方ないか。だって不倫をして子供を作った母さんが、秘書を辞めずに続投してる上に、その息子を面倒見なきゃならないのだから。


 姉貴に至っては、文代さんに便乗して、学校でのストレスを発散させる。その為だけに俺を苛めるのに、加勢してきたってとこだと思う。


「ホント……今振り返っても下らねえなぁ」


 俺は高速で過ぎてゆく、建築物や木々を眺めてボソリと呟く。


 そしてあることに思いを馳せる。


 当時、保育園生の頃。俺は保育園でも、居場所がなかった。周りの大人達が、俺を野呂財閥の息子……それも不義理の末、出来た子だという目で見てきた。


 歳を取った今でも、感じる視線。嫉妬と羨望の入り混じった、ザラついた気持ち悪い視線。


 本来なら俺も野呂財閥として、高度な教育を受ける筈だった。それを文代さんが無理矢理、保育園に送った。多分、俺の事に関しては、そこまで力を入れて教育する気が、無かったに違いない。


 その時、文代さんが俺の事を園長、並びに先生方にこう伝えたらしい。


『この子は旦那が浮気した女と作った子であって、私とは血の繋がってない、赤の他人……寧ろ見たくもない。邪魔な子よ』


 って。それを俺は、いつも送り迎えをしてくれた使用人に、とある時打ち明けられた。正直聞いても、怒りも悲しみといった感情が湧かなかった。


 当然だ。だって物心がついたとはいえ、ただの子供にそんな事理解出来る訳ないだろう。


 ま、そんなこんなで職員の間で、この話が浮上して気付いたら、俺と同じく通ってる子供の親にまで、話が伝染していったって訳。


 その話を聞いた大人達は、自分の子供を迎えに来る時に、俺の事をチラチラと見ては、帰っていく。


 多分その時に、その親は自分の子供に俺の事を、散々悪く吹聴したんだろう。今でも覚えてるぜ。アイツ等に、最も多く言われた言葉


――()()()()()()


 言われた当時は意味が理解出来なかった。いや、理解はしてたんだと思う。脳では理解出来ても、心が受け入れるのを……否定したんだ。


 でも、その時からだ。周りの奴等は馬鹿にするのに、一人だけ比較的……というか、完璧興味なさそうにしてる奴がいた。


 そう、悟。アイツは出会った頃から、何かを諦めて周りを、自分から切り離して生きてた。


 俺は当時不思議に思って、それを迎えに来た使用人に伝えた。その後に聞かされた()()を聞いて、俺は愕然とした。


 俺も相当微妙な立場だけど、悟は確実に俺よりも、辛い立場にある。


 俺は少なくとも、使用人が世話をしてくれる。悟と出会った当時は出来なかったけど。今では使用人に、愚痴を吐ける位の関係だ。


 でも悟は俺と違って()()()()()が、誰もいない。


「ホント……悟は強ーよな」

「またご親友のお話ですか?」


 俺が何気なく呟いた言葉に、俺が生まれた時から、世話をしてくれている使用人が、相槌を入れてくる。


 俺は窓から目を離して、前に目を向ける。


「ああ、悟の話だよ……関川さん」


 と俺の世話役の――関川貫(せきかわとおる)さんに、返事をする。前ではずっと前を向いて、ハンドルを握っている、初老を過ぎた男性。


 この人には本当感謝だな。邸の中じゃ、俺の事を毛嫌いしてる使用人が多い中で、この人だけは唯一……俺の味方だった。


 いつも俺の事を気に掛けてくれた。体調と精神を気遣ってくれた。それが同情なのか、人道から来る正義感で、接してくれたのかは分からない。


 でも、そんなのはどうだって良い。関川さん(この人)がいてくれたから、俺は悟の事を知れたんだ。


「本当、良かったですね。心から信頼出来る存在が出来て」


 バックミラー越しに、関川さんが笑いかけてくる。知的な印象を与えてくれる細面の顔に、小皺が刻まれる。その表情は心の底から、安堵してくれている事を、告げていた。


「太一様が精神的に安定して、本当に良かった。そうそう、あれは……小学校の三年生に、成り立ての頃でしたかね」

「ぐっ」


 驚いた。関川さんが、そんな細かく覚えてる事に。


「そ、そうだったっけ?」


 俺は、惚けた。


「そうですよ。ある時、太一様が仰ったじゃないですか? ()()()、気()()()()()()()()()、友()()()()()()()、っと」


 ニッコリと笑って、関川さんが答える。


「そうだよ」


 俺は観念して、正解だと告げる。


 そう。あれは、小学三年生になって間もない時。俺は保育園の時と同じで、絡まれて悪口を言われたり、暴力といった虐めを、受けていた。


 あぁ。保育園からの奴が、周りに伝えたのか。それを聞いた人間は、大体の人間が興味本位か、気のない返事をしたら、仲間はずれにされるんじゃ、と考えてる奴等ばかりだったんだろう。


 最もその時には、俺はもう何もかも諦めが、ついていた。家では文代さん、姉貴に苛めを受けて、学校ではクラスメイト達に、虐めを受ける。


 これが暫く続くんだなって、諦め掛けた時


『下らないな』


 と、芯の通った声が、廊下に響き渡って今まで、俺を殴り付けていた、男の手が止まる。


『かーげーのーっ。お前、コイツを庇うとか言わないよなぁ?』


 男は喜喜とした声で尋ねる。その男の声から悟もターゲットに、選ばれてしまった。


『そんな事してて、楽しいのか?』


 淡々と答える悟。まさか、悟との初めての接触が、こんな形になるなんてな。


『あぁ楽しいよっ。悪い奴を、いくら傷付けたって、良いんだからよー』

『なら、そんな奴より()()の存在がいる』


 何にも興味を示さない、悟の双眸が男に、向けられる。無言で睨まれて、男はたじろぐ。そんな男に、悟は歩み寄っていく。


『俺さ、困ってる人を、目の前で見たら、迷わず助けろって、教えられてんだ、よ、なっ』


 悟はそう言うと、男の襟首を左手で掴むと、グイッと引っ張り自分の元へと、引き寄せる。


『それに俺は……()()()()()されてるんだ。これ以上の、悪者はいないだろう?』


 悟は、拳を思いっきり振り上げて、男の顎、こめかみを、何度も何度も殴る。


『わ、分かった。もう手、出さないからっ』


 男が、苦悶の声を上げた。悟が、掴んでいた男の襟首を、離す。


『これに懲りたら、こんなことするなよ……大人になった時、恥ずかしい思いするのは、自分なんだから』

『ちっ。おい皆行こうぜっ』


 男はそういって、仲間を引き連れて去って行く。


『怪我、大丈夫か?』


 無愛想な顔で、悟が尋ねてくる。


『大丈夫だ。けどどうして……どうして、助けてくれたんだよ?』

『言っただろ? 困ってる人を、目の前で見たら助けろっ、と教わったって』


 平然な顔をして、言う悟。


『後それと、一つ』


 そういって、悟は片手で拳を作って、軽く俺の胸を叩きながら


()()()()()から見てるけど、お前はお前だ。逆に今の立場を、悪いところだけ抜いて、アピールすれば良いんじゃね?』

『アピール?』

『そう。子供の俺達に、生まれる場所は、選べないんだからさ。持ってしまった物は、有効的に使った方が、楽だろ?』


 俺はその言葉を聞いて、驚かされ逆に感心したんだ。今まで、そんな物の捉え方を、したことが無かったから。


 それに悟は、無関心を決め込んでただけで、ちゃんと俺の事を見てくれてたんだ。


『なあ悟?』

『なに?』


 面倒臭そうな返事が返ってくる。俺は気にせず、続きを言う。


『友達になってくれ』

『ばか……関わった時点で友達だ。宜しくな、()()


 あれから俺達は、友達になって今日まで関係が壊れることなく、来れたんだよな。


「本当良い親友を持ったよ」

「はい」


 まあ、俺には愛ちゃんっていう、彼女も出来た。まさか、海に行った時に分かったけど、あんな腹黒だとは思わなかったけど。


 でもあの後、俺の今置かれてる立場と、事情を話した。勿論、壊れかけてた俺の心を、悟が助けてくれた事も。


 それで、なんとか納得して貰って、これからはお互い、言いたいことはすぐ言い合う、というルールを決めた。これで愛ちゃんとの絆が深まれば良いな。


 後は悟だけど、最近のアイツは昔に比べて、色んな顔をするようになった。原因は、神崎さんだ。彼女と出会ってから、良い方に変わって行ってる。


 我が親友よ。心から、お前の幸せを祈るぜ。


 俺は関川さんと、動く車の中そう思うのだった。

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