表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一匹狼クール系女子がなぜか俺に構ってくる件  作者: たかはし
一年生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/43

32.子供っぽい神崎さん、めっちゃくちゃ可愛いですっ。

「じゃあ立つね」

「……うん」


 俺は神崎さんに確認を取ると、浴衣越しといはいえ、両太股に手を掛ける。


「影野のえっち」


 神崎さんの両腕が、軽く俺の首に触れる。


 落ち着け俺。神崎さんは戯れてるだけで、今の言葉も揶揄うのが目的で、大した意味なんてないはずだ。


 俺は神崎さんの言葉を無視して、両足両手に力を込めて立ち上がる。


 そしてベンチに向けて歩き出す。


「影野私……重くない?」


 心配そうに聞いてくる神崎さん。うーんこの場合どう答えれば良いんだろうか? 彼女は、僕より背が高い。だからその事を、気にして言ってるんだろう。


 実際の所は軽い。神崎さんは背が高いけど、モデルのようにすらっとしているから、当然と言えば当然なんだが。


 寧ろ手に伝わる布越しの腿の感触とか、背中に感じる胸の感触の方がヤバイ。首に彼女の息が当たるわ、香水でも付けてきたのか、バラの甘い香りが、俺の鼻腔を擽る。このままでいたら、変な気分になりそうだ。


 うん、決めた。いつも揶揄われてることだし、これくらい許されるだろう。


「うん、重いね」

「そこは重くないよって言わなきゃダメッ」


 神崎さんが俺の頭をぽかぽか叩く。本気で叩いてる訳じゃないから、痛くない。俺は無視してベンチの前に辿り着く。


「ほら着いたよ」


 俺はそう言ってベンチに、そっと神崎さんを下ろす。


「ありがとう……でもよく分かったわね。私が足を痛めてること」


 神崎さんが不思議そうに、俺を見ながら聞く。


「途中から歩くペース変わってるし、歩く度に何かを必死に堪えてる顔、してたからかな」


 俺はここまでの事を思い出す。正直川に向かう途中で、腕に胸を押し付けられたのは、想定外だった。


 お陰で恥ずかしくて、俯いたまま歩くことしか出来なかったし。でもそのお陰で気付けた。


 歩くスピードが段々ゆっくりになっててること、チラと横を見れば歯を食いしばって、何かに耐えてる様子。


 それに、本人は気付かれてないと思ってるみたいだけど、小さな呻き声が聞こえていた。それは本人に伝える気は無いけど。


「見てないようで私の事……ちゃんと見ててくれてたんだねっ」


 俺の言葉を聞いた神崎さんが、大輪の花を咲かさんばかりに、顔を輝かしている。


「あのさ神崎さん」

「ん?」


 キョトンとする彼女。


「笑顔になるのは良いんだけどさ。俺の頭を撫でる必要は、無いんじゃないの?」


 そう、俺は神崎さんの足の具合を見るために、座っている彼女より低い位置に居る。


「え~、駄目なの?」

「だ、駄目じゃないけどさ」


 あからさまにガッカリされたので、慌てて弁解する。神崎さんは瞳を潤ませて


「じゃあまだ……ナデナデしてていーい?」


 と言われ、俺は胸をギュッと締め付けられる。神崎さん……その言い方はズルくない? 可愛すぎて、そんなの誰も否定できないだろう。俺は早まる鼓動を必死に落ち着かせながら


「別に構わないけど……そういう事を言うのは、彼氏だけにしときなよ」


 と言って俺は両ポケットに入ってる物を取り出す。コンビニで念のためと、買っておいた物だ。まさか早速役に立つとは思わなかったが。


「消毒液とカットバン?」

「下駄履いてるから。もし怪我でもしたら、大変だなって思って」

「……」


 神崎さんは無言で俺の頭を、さっきまで片手で撫でてたのを、もう一つ増やして撫でてくる。それもゆっくり優しくだ。まるで俺を大切だと言わんばかりの撫で方をしてくる。


「なぜに、両手で?」

「なんでだと思う?」


 質問に質問で返されても……俺は満面の笑みを浮かべている神崎さんを見る。その表情は、彼女の持つ銀髪の輝きに、負けないほど眩しい。神崎さんは目を細める。


「影野が優しいから……こうしたくなるんだよ」


 そう言って片方は頭を撫で、もう片方は俺の頬を擦ってくる。


 俺が優しいから……今のどこに優しい部分が有ったんだ? 俺は神崎さんから視線を外して


「下駄脱いで……じゃないと傷見れないから」


 と言う。すると


「むぅ……」


 と拗ねた声が神崎さんから出る。なんで今ので拗ねてるんだこの人? 俺は再度彼女に視線を向ける。すると詰まらなさそうな顔をしている神崎さん。でもすぐに笑顔になって


「か~げのっ……両方脱がして~」


 と甘えた声で言う。またか……これ、絶対に俺の事を、イジって楽しんでるだろ。まあ仕方ない。付き合ってやるか。


 どうせ、海行った時にオイル塗ったのもあって、抵抗感も薄れてることだし。俺はそっと、下駄と神崎さんの踵に手を添える。


「ひゃっ」


 可愛らしい悲鳴が上がる。今どういう表情をしているのか、気にはなるが無視だ無視。


「もう、いきなりとか。影野ったら……ご・う・い・んっ」


 神崎さん。その言い方は、周りの人に誤解を与えるとです。まあいいや、俺は無視して、下駄から神崎さんの足を、脱がすことに集中した。


「あ、両足とも、親指と人差し指の間が、擦り剥けてるね」


 俺は、神崎さんの両足の怪我をしている部分を、交互に見やる。


「そんな真剣な目で見て……舐めたい?」

「神崎さん。冗談言ってる場合じゃないから」


 まあ確かに、唾でも付けときゃ治るって、昔の人は言ってたから療法としては、間違ってないんだろうけど。


 俺は消毒液の入った容器を手にして、フタを開ける。消毒液特有のツンとした匂いが鼻腔を擽る。


 俺はその香りを無視して神崎さんが、傷付いてる部分に消毒液を、垂らしていく。


「んっ」


 止めてくれ。今の男子高校生は、今の声だけでも好意を、持たれてるんじゃないかと勘違いするからな……と、言いたい。


 でも俺が根が陰の者だから言えねぇ、でも礼儀として、言わなきゃ駄目か。

 

 俺は意を決して神崎さんの顔を見る。苦悶に耐えてる顔がそこには有った。そうだよね。消毒液を傷口に垂らしたら、居たいよね。


 俺は、スイマセンと思いながら


「神崎さん。今みたいな声出したら、大体の男子高校生は、勘違いするからね」


 と、柔らかく注意する。神崎さんは俺の言葉を受けて満面の笑みを浮かべて


「影野にだったら……勘違いされても良いよ」


 もう……そんな小悪魔的な表情で言うから、世の男子高校生は、勘違いするんだよ。自分の美貌理解してるっ!? 俺でも相当キツいかんねっ!?


「そう言うこと、俺だけだから聞き流すけど……本命だけに言いなよ」


 俺は冷静にそう答えると


「……むぅ」


 そこには、少し拗ねた……っていうか、凄く拗ねている神崎さん。

 

「な、なんで拗ねてるのっ?」


 俺がそう聞くと


「影野って本当鈍感だよねっ!?」


 とやけっぱちに答えられる。俺はどう対応したら良いか分からず……あたふたするけど、これだけは言わせて貰おう。


――子供っぽい神崎さん、めっちゃくちゃ可愛いですっ。


 俺は夕暮れに照らされる、ピンクの神崎さんの浴衣姿を見て……本能をギリギリまで、抑えてそう思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ