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一匹狼クール系女子がなぜか俺に構ってくる件  作者: たかはし
一年生編

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29.嫌なときでも癒やしてくれる人

「はぁーっ」


 八月の中旬お盆を終えて俺は、毎年来る一年で()()()()()を終えて、俺は実家……いや、親戚の家に行って墓参りを終えて、上山町に帰ってきていた。


 俺は駅から出て帰路に就く。駅から家に帰るので、必然的に通る商店街。


 商店街と言っても、そこは酷く過疎化した感じで、錆びついたシャッターで閉め切られているところがほとんどで、空き店舗もざらに有って、その一つの前で立ち止まり、ガラスに映っている自分の顔を見る。


 その顔は相変わらずの無愛想な顔。でも

目にはどこか絶望や悲壮感が宿っていた。


 俺は気分を変えるために、近くにあった張り紙だらけの自動販売機でコカコーラを買った。朝方と言う事も有り、人気の無いアーケード街。周りに目を向ける。


 タイル張りの地面、色褪せた店の看板、古くから続く個人商店。言うなれば、ここは全てがレトロだ。ここだけが昔から時が止まってしまったような。


「まるで、俺みたいだな……」


 俺は寂れたアーケード街を、一通り見て呟く。その呟いた声は誰にも届くことなく、虚空の彼方へ消え去る。


 俺は再び歩き出す。いつまでもここに居たら、もっと感傷的になるから。俺はアーケード街を抜けて、自宅に向けて歩き出す。


 途中で見える住宅街、そこから聞こえる家族の笑い声。路上にいる女の子連れの女性と男性。年齢的に親子だなと一目で分かる。男性が女の子を肩車する。


 肩車をされた女の子はキャッキャッと、嬉しそうな声を上げている。顔も嬉しそうだ。俺はその光景を見て胸が痛む。


「くそっ」


 俺はその場から走り出す。走らなきゃ、やっていられなかったからだ。走らなきゃ、余計な事を考えてしまうから。現に考えてしまったんだ。


――俺には二度と訪れることのない光景だな、と。


 俺は一心に走る。己の()()()から目を背けるために。これ以上余計な事を考えたら、俺は……昔よりもっと壊れるに違いないから。


「はあっ……はあっ……」


 俺は自宅であるアパートに着き、持っている荷物を空いているスペースに置いた。荷物を片付けるのは後だ。


 俺は布団を敷いてそこに横たわる。身体の力が抜けていく。でも頭がどんどん悪い方へと考えていく。心ない人達に言われたことが、頭の中で再生される。


『なんでお前が生き残ったんだっ』

『ホント、貴方も死ねば良かったのにね』

『そうだそうだっ。そうすればパパやママが、困ることもないのに~っ。今からでも悟、死になさいよ。いえ。言い方を変えるわ。アンタに生きてる価値なんかないっ。私達にとっては、タダ飯喰らいの穀潰しよっ』


 俺は布団の上で両耳を塞ぐ。


「……うるさいうるさい、うるさいうるさいっ。」


 俺は拳を固めて布団を、何度も何度も叩き付ける。でも、何度やっても俺の心は軽くならない。寧ろ、どんどん重くなり、俺の心を腐らせる。


「……分かってるさ」


 ()()()()にとって俺が邪魔なことくらい。ただでさえ裕福でもない、アイツ等が俺を高校に……しかも、こうしてアパートまで、用意してくれたんだから。俺が文句を言うのは筋違いだ。


 九十九高校に狙いを絞ったのは、アイツ等から離れたかったからだ。近くの高校を受けていたら、間違いなく俺の心は死んでいた。


 だから学費がなるべく低くて、遠い場所を選んだんだ。遠い場所なら親戚は喜んで、俺をアパートに、一人暮らしさせると踏んでいた。


 これで年に会うのはお盆の四日間だけだ。年末年始なんてアイツ等は、俺を呼ぶ気なんて更々無いだろうし、顔も見たくない筈だ。俺も年末年始になってまで、嫌な奴等の顔を見たくない。


「アンタに生きてる価値なんかないっ……か」


 俺は言われた言葉を、口に出して反芻する。生きてる価値、か。確かに俺は()()()から生きてる価値を失った。


 俺はあの時から、さっき通ったレトロな商店街と同じで、あの時から俺の時間は止まってしまった。


 大切な人達を失って俺の心は壊れかけた。今でも不思議なくらいだ。なんで俺はあれから、十年よく精神がイカれずに生きて来れたな。


 でも歳を重ねれば重ねるほどに、俺は虚しくなっていった。親戚からずっと心の無い言葉を浴びせ続けられて、俺の心は腐り悲鳴を今も、上げ続けている。


「いつになったら終わるんだろうなぁ」


 いつまでも出口のない暗闇を歩き続けてきた。今でも答えが出ない。誰にも相談が出来なくて、俺は人と距離を取るようになった。


 でも俺の大切な人達の教えで、困ってる人がいたら誰であれ、助けるっていう事を続けてきた。本当俺は何がしたいんだよ。そんな自分に何度呆れたことか。


「生きるのが……こんなに辛いなんてなぁ」


 俺はちいさくそう言うけど、すぐにその考えに首を振る。辛いのは俺だけじゃない。皆大なり小なり抱えてる(モノ)がある。


 だから自分だけがって考えるのはお門違いなんだ。でも思ってしまう。


――()()()()()()()()()、って。


 そんな事を思っている時にポケットに入っていたスマホがピコンッと電子音を響かせる。


 俺はポケットからスマホを取り出してディスプレイを眺める。すると、神崎さんからRAIMUの通知が来ていた。俺はすぐにタップしてその内容を確認する。


『影野、久しぶり(≧∇≦)b もうこっちに帰ってきてるのかな? 今週の土曜日に花火上がるみたいなんだよね❤︎ それに伴って、出店とか沢山出るみたいだから、一緒に回らない? と言うか影野と行きたいっ❤︎』


 俺はその文面を見て、今まで暗くなっていた心が明るくなる。そして遊園地の最後に乗った観覧車での事を思い出す。


 神崎さんが、俺の耳元で下の名前で呼んできて、ペロッと耳を舐められた。あの時はビックリしたな。でも何故か、恥ずかしかったけど……嬉しくもあった。


 今だってそうだ。彼女から連絡があって、心が軽くなった。


 俺は神崎さんのRAIMUの文面に、『うん、行こうか』と返す。そしたらすぐに可愛らしい茶色のクマが、可愛らしく手を上げているスタンプが送られてきた。その周りに沢山❤︎が飛び交っているのが、以上に気になるけど。


 俺は、その画面を見て笑う。柄にもなく笑い声を上げて。


 どうやら俺にとって神崎さんは、嫌なときでも癒やしてくれる人なんだなと、認識させられた。俺は窓際によって、神崎さんに会えるのが、待ち遠しいと思ってしまうのだった。

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