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98 プロ野球
バイトを終えた帰り道。
蒼はスマホを取り出しながら、ゆっくりと駅へ向かっていた。
画面を確認すると、一件の通知。
̶̶黒崎小夜
その名前を見て、少しだけ足が止まる。
(……小夜さん)
メッセージを開く。
『今週の土曜日、空いてる?』
短い一文。
蒼は少しだけ考えてから返信を打つ。
『空いてますよ』
すぐに既読がつく。
そして、間を置かずに返ってくる。
『じゃあさ』
『プロ野球、観に行かない?』
蒼は一瞬だけ目を見開く。
(プロ野球……)
頭の中に、あのスタジアムの空気が浮かぶ。
自然と、少しだけ口元が緩んだ。
『いいですね』
『行きましょう』
送信すると、すぐに返事が来る。
『決まり』
『土曜日ね』
シンプルなやり取り。
それだけなのに、どこか余韻が残る。
蒼はスマホをポケットにしまった。
(……プロ野球か)
ふっと息を吐く。
そして、そのまま歩き出した。




