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91 ビーチバレー
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「いくよー!」
試合再開。
今度はさっきよりも、少しだけ本気。
蒼がレシーブを上げる。
「凛!」
「うん!」
凛がトス。
そのまま――
ポン、と軽く返す。
「ナイス!」
自然に笑い合う二人。
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「蒼先輩ー!」
七海が声を上げる。
「こっちも本気でいきますよー!」
そのまま強めの返球。
「おいガチじゃねえか!」
三郎が叫ぶ。
「当たり前でしょ!」
千尋が笑う。
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ラリーが続く。
砂が舞う。
笑い声が重なる。
その中で――
太陽はふと視線を向ける。
愛菜。
真剣な顔でボールを追っている。
一瞬だけ目で追う。
すぐに視線を戻す。
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「っ――!」
そのとき。
強めのボールが凛の方へ飛ぶ。
少し体勢が崩れる。
「凛!」
蒼が咄嗟に動く。
手を伸ばし――
ぐっと支える。
距離が、一気に近くなる。
「……あ」
凛が小さく声を漏らす。
顔が近い。
一瞬、時間が止まる。
「……大丈夫?」
「……う、うん」
凛の頬が赤くなる。
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「はいはいはい!」
千尋がニヤニヤしながら割り込む。
「なに今のー?」
「いい感じじゃん!」
「うるせえ!」
蒼が即ツッコむ。
三郎は爆笑。
「今のはポイント高いわ!」
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砂浜の上で。
笑い声が広がる。
でもその中で、
確かに――
少しずつ、
距離が変わっていく。




