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88 なんだろ
――そして。
海の家の前。
「ただいまー」
愛菜が軽く声を上げる。
「戻りましたー」
蒼も続く。
その様子を――
凛は、少し離れた場所から見ていた。
(……あれ?)
二人とも、笑っている。
自然に、楽しそうに。
さっきまでの忙しさとは違う空気。
どこか――
“二人だけの時間”を過ごしてきたような。
(……なんだろ)
胸の奥が、ほんの少しだけ引っかかる。
理由は分からない。
でも――
目が、離せなかった。
愛菜が笑っている。
蒼も、自然に笑っている。
その距離が――
少しだけ、近く見えた。
「凛?」
千尋に声をかけられて、はっとする。
「え?」
「どうしたの?」
「……ううん、なんでもない」
そう答えながらも。
凛はもう一度だけ、二人の方を見た。
(……なんだろ、この感じ)
小さな違和感。
でもそれは、確かにそこにあった。




