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75 めんどくさく
そのときだった。
周りが少しざわつき始める。
「……あれ?」
「小夜先輩じゃない?」
「え、マジ?」
「マリーンズの井端先輩と付き合ってた人じゃん」
「隣の男誰?」
「井端先輩と別れたのかな」
ひそひそ声が広がっていく。
小夜は小さくため息をついた。
「……これ」
蒼に少し近づき、小声で言う。
「めんどくさくなりそう」
「ちょっとここ離れよう」
蒼もすぐ察した。
「……わかりました」
二人は少し慌てたように七海の方を見る。
蒼が言う。
「じゃあまたな!」
「海の家の話、また連絡する!」
小夜も手を振る。
「七海ちゃん」
「またね」
「海の家楽しみにしてるね」
そして二人はその場を離れていった。
七海は慌てて叫ぶ。
「あ!」
「ちょっと二人ともー!」
頬をぷくっと膨らませながら、二人の背中を見送っていた。




