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蒼色の恋に。  作者: ひろねる


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71/144

70 ピンチ?

試合はそのまま終盤へと進み、気づけば9回表。

総武学園は1点リードのまま最終回を迎えていた。

あとアウト三つ。

それで試合は終わる。

だが――。

ここまで好投してきた隅田が、ついに捕まる。

ヒットを打たれ、さらに四球。

気づけば一死一・二塁。

スタンドがざわつく。

それでも隅田は踏ん張った。

次の打者を内野ゴロに打ち取り、ツーアウト。

だがランナーは一・二塁のまま。

小夜がグラウンドを見つめながら言う。

「ここでしっかり抑えられるか……」

「隅田くんの実力が試されてるね」

蒼は落ち着いた声で答える。

「大丈夫ですよ」

「隅田は昔から、ピンチのときでも落ち着いてましたから」

次の打者が打席に入る。

隅田は帽子のつばを軽く触り、深く息を吐いた。

投球が始まる。

だが――。

バッターが粘る。

ファウル。

またファウル。

さらにファウル。

気づけば10球目。

スタンドからもどよめきが起きていた。

そして――。

結局、フォアボール。

これでツーアウト満塁。

スタンドの空気が一気に張り詰める。

真夏の太陽の下、隅田の球数はすでに100球を超えていた。

蒼も小夜も、もう言葉はなかった。

ただ黙ってグラウンドを見つめる。

小夜は心の中で思う。

(隅田くん……)

(もう100球は超えてる)

(スタミナも限界のはず)

(しかも、さっき10球も粘られた)

(ここは……)

小夜は自然と考えていた。

(とりあえず、ストライクが欲しいよね)

その瞬間だった。

――ふと、蒼の言葉を思い出す。

「こういう場面って……初球、ストライク欲しくなるもんなんですよ」

小夜の視線がマウンドへ向く。

次の瞬間。

――カキーン!!

鋭い打球音。

打球は一直線にセンターへ飛んでいく。

そして――。

センターの頭上を越えた。

三塁ランナーがホームへ。

続いて二塁ランナーも一気に生還する。

スタンドの木更津商業の応援席から、大きな歓声が上がった。

逆転。

総武学園のベンチは一瞬、静まり返る。

センターがボールを返すころには、打者走者は二塁へ滑り込んでいた。

スコアボードに表示される数字が変わる。

3対2。

木更津商業、逆転。

小夜は小さく息を吐いた。

そして隣を見る。

蒼は、ただ静かにグラウンドを見つめていた。

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