67 先制
両チームの選手がグラウンド中央に整列する。
「礼!」
主審の声と同時に、両校の選手たちが一斉に頭を下げた。
次の瞬間。
――ウゥゥゥン。
試合開始のサイレンが球場に鳴り響く。
真夏の太陽が容赦なく照りつけ、気温はすでに35度を超えていた。スタンドに座っているだけで
も、じわりと汗が滲んでくる。
「暑いな……」
蒼が呟く。
小夜は帽子のつばを少し下げながらグラウンドを見つめた。
「高校球児は大変だよね。この暑さで九回までやるんだから」
試合は、木更津商業の先攻で始まった。
総武学園のマウンドには、エースの隅田が立つ。
左腕を大きく振りかぶり、第一球を投げ込む。
だが、立ち上がりはやはり簡単ではなかった。
ヒットと四球が絡み、気づけば二死二・三塁。
そして木商の五番打者が放った打球がセンター前へと抜ける。
「1点か……」
蒼が小さく呟く。
それでも隅田は崩れなかった。
続く打者を変化球で打ち取り、セカンドゴロ。
三塁ランナーがスタートを切るが、セカンドからの送球がホームへ。
――アウト。
総武学園はなんとか1点で踏みとどまった。
スタンドで試合を見ていた小夜が口を開く。
「立ち上がり、攻められたね」
蒼も頷く。
「そうですね」
小夜はちらっと蒼の方を見る。
「蒼くんも、やっぱり立ち上がりは難しかった?」
蒼は少し考えてから答える。
「難しいですね」
「身体もまだ完全に出来上がってないし、試合の空気にも慣れてない」
「最初の1イニングは、どうしても神経使います」
小夜は「やっぱりね」と小さく笑った。
その裏、総武学園の攻撃。
先頭打者がレフト前ヒットで出塁する。
スタンドが少しざわめく。
「お、先頭出た」
蒼が言う。
だが、その後が続かなかった。
送りバント失敗、三振、内野フライ。
あっという間にスリーアウト。
得点には繋がらなかった。
蒼は腕を組みながら言う。
「やっぱり木商はしっかりしてますね」
小夜が頷く。
蒼は続ける。
「先制した後の守りって難しいんですけど」
「こういうところ、ちゃんと抑えてきますもんね」
「さすが強豪校って感じです」
試合はその後、淡々と進んでいく。
隅田も徐々に落ち着きを取り戻し、木商打線を打ち取っていった。




