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蒼色の恋に。  作者: ひろねる


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66/157

66 ちゃんと見ててくださいね

土曜日。

蒼は試合開始より三十分ほど早く球場に着いていた。

スタンドにはまだ人もまばらで、グラウンドでは選手たちがアップを始めている。

総武学園のユニフォーム。

それを見るだけで、どこか懐かしい気持ちになる。

蒼はスタンドの通路を歩きながら、グラウンドを眺めていた。

そのときだった。

「蒼先輩じゃないですかー!」

元気な声が飛んでくる。

蒼が振り向く。

そこにはポニーテールを揺らしながら駆け寄ってくる少女がいた。

鳥谷七海だった。

蒼は少し驚いた顔になる。

「お、七海」

七海は嬉しそうに笑う。

「見に来てくれたんですか?」

蒼は頭をかきながら言う。

「まあ……ちょっとな」

七海はぱっと表情を明るくする。

「やった!」

「みんな喜びますよ!」

蒼はグラウンドの方を見ながら聞いた。

「で、どうだ?」

「木商には勝てそうか?」

七海は少し考える。

「うーん……」

そして言った。

「隅田くんの調子次第ですね」

蒼は頷く。

「あいつが投げるのか」

七海はすぐに続けた。

「はい!」

「隅田くん、春からすごく伸びてるんですよ!」

そして少し誇らしそうに言う。

「もう今じゃ県内でも注目のピッチャーです」

蒼は小さく笑った。

「そうか」

七海は続ける。

「正直、あの時の蒼先輩と比べても……」

少しだけ言葉を選んでから、

「見劣りしないくらいの選手になりましたよ!」

蒼は少し目を細めてグラウンドを見る。

マウンド付近では、一人の投手がキャッチボールをしていた。

蒼は小さく頷く。

「まあ、あいつは努力するからな」

「センスもあったし」

「当然っちゃ当然だ」

七海は嬉しそうに笑った。

「ですよね!」

そのとき、グラウンドから声が飛ぶ。

「七海ー!」

他のマネージャーが呼んでいた。

七海は慌てて振り向く。

「あ、すみません先輩!」

「私ちょっと行きます!」

蒼は軽く手を上げる。

「おう」

七海は少しだけ振り返って言った。

「先輩」

蒼が見る。

七海は笑った。

「ちゃんと見ててくださいね」

「総学、勝ちますから!」

そう言って、グラウンドの方へ走っていった。

蒼はその背中を見送りながら、小さく笑う。

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