57 九回裏
ふとグラウンドを見ると、試合は終盤に差しかかっていた。
気づけば̶̶
九回裏。
スコアは1対0。
京葉大学がリードしている。
しかし̶̶
ツーアウト、ランナー一塁二塁。
打席には四番打者。
カウントはワンツー。
小夜が聞いた。
「きみならどこに投げる?」
蒼は真剣な表情で答える。
「俺なら……」
「インハイにストレートを投げて、サードフライかファールを打たせたいですね」
次の球。
インハイ。
カキン。
打球は三塁側へ切れる。
ファール。
小夜が言う。
「はい、これでツーツー」
そして蒼を見る。
「この後は?」
蒼はすぐに答えた。
「もう俺なら外のスライダーで空振り三振を狙います」
小夜は頷く。
「なるほどね」
次の球。
アウトローのスライダー。
打者は見送る。
ボール。
小夜が言う。
「これでフルカウント」
蒼はグラウンドを見ながら言った。
「セオリーならもう一球同じ球を投げて、引っかけてサードゴロを狙うと思います」
少し間が空く。
蒼は続けた。
「でも俺なら̶̶」
蒼が言いかけた瞬間だった。
「インコース真っ直ぐ」
「インコース真っ直ぐ」
二人の声が、同時に重なった。
次の瞬間̶̶
ピッチャーが腕を振る。
ボールはインコースへ。
打者が振る。
空振り。
「ストライーク!」
三振。
試合終了。
京葉大学のベンチから歓声が上がった。




