47 クラゲ
チケットを買って中に入る。
館内は少し暗く、青い光に包まれていた。
最初に目に入ったのは、大きな水槽だった。
巨大なガラスの向こうを、たくさんの魚がゆっくり泳いでいる。
凛が小さく声を上げる。
「わぁ……」
蒼も水槽を見る。
「すごいな」
光に照らされた魚たちが、静かに水の中を泳いでいる。
凛は水槽に近づく。
目を輝かせながら言う。
「綺麗……」
蒼はその横顔を見る。
水槽の青い光に照らされて、凛の表情はいつもより少し大人っぽく見えた。
蒼は視線を水槽に戻す。
「……ほんとだな」
二人はしばらく並んで、水槽を眺めていた。
水族館の奥へ進むと、通路の先が少し暗くなっていた。
青い光がゆっくり揺れている。
凛が足を止める。
「クラゲだ」
丸い水槽の中で、透明なクラゲたちがふわりふわりと漂っていた。
光を受けて、淡く青く輝いている。
「すごい……」
凛は水槽に近づく。
顔を少し近づけるようにして、じっと見つめた。
「綺麗……」
蒼も隣に立つ。
館内は他のエリアよりも静かで、クラゲの水槽だけがぼんやりと光っていた。
しばらく二人で眺めていると、凛が少し後ろに下がる。
その瞬間̶̶
コツン。
「えっ」
凛の背中が誰かにぶつかる。
振り返ると蒼だった。
蒼が反射的に肩に手を添える。
「おっと」
凛は驚いた顔のまま蒼を見る。
二人の距離は思ったより近かった。
青い光に照らされて、凛の瞳が静かに揺れている。
凛は慌てて少し離れた。
「ご、ごめん!」
蒼は軽く笑う。
「大丈夫」
凛は少し照れたように笑った。
「びっくりした……」
少しだけ気まずい沈黙が流れる。
水槽の中ではクラゲがゆっくり漂っている。
凛はその様子を見ながら、ぽつりと言った。
「なんかさ」
「ん?」
「ここ、静かで落ち着くね」
蒼も水槽を見る。
「だな」
青い光の中で、二人はしばらく並んでクラゲを眺めていた。




