41 デートしなよ
ゴールデンウィークが終わり、大学もまたいつもの日常に戻っていた。
講義、昼休み、友達との他愛もない会話。
そして蒼は、いつも通り大学近くのコンビニでバイトをしていた。
夕方の時間帯。
レジの前に立ちながら、ぼんやりと店内を眺める。
自動ドアが開いた。
「いらっしゃ̶̶」
言いかけて、蒼は少し目を見開く。
「……あれ」
店内に入ってきたのは、見覚えのある金髪の女の子だった。
店の中を軽く見回しながら、彼女は小さく言う。
「あーここだったんだ」
蒼
「ん?」
女の子は蒼に気づくと、にこっと笑った。
「蒼くんじゃん」
「村上さん?」
村上千尋は、手に取ったジュースをレジに置いた。
「蒼くんここでバイトしてるんだね」
「ああ、まぁな」
蒼はバーコードを通す。
ピッという音がレジに響く。
そのとき、千尋が何気ない顔で言った。
「凛が言ってたんだよ」
蒼
「ん?」
「蒼くんのバイト先、この辺って」
蒼は少し驚いた顔をする。
「……そうなのか」
千尋はにやっと笑った。
「うん」
少し間を置いて、さらっと続ける。
「凛、蒼くんの話けっこうするし」
蒼の手が一瞬止まる。
「……は?」
その反応を見て、千尋はくすっと笑う。
「今ドキッとしたでしょ?」
「してねーよ」
少しムキになって返す蒼に、千尋は楽しそうに肩をすくめた。
「はいはい」
ジュースを受け取りながら、千尋は言う。
「そういえばさ」
蒼
「なんだよ」
「バーベキュー楽しかったよね」
「ああ」
蒼は軽く頷く。
千尋は蒼の顔をじっと見た。
「蒼くんさ」
「ん?」
「凛のことどう思ってる?」
蒼は少し眉をひそめる。
「どうって……普通だろ」
千尋は小さく笑う。
「ふーん」
そう言いながらストローをジュースに差した。
そして、さらっと言う。
「デートしなよ」
蒼
「……は?」
蒼は思わず聞き返す。
千尋はまるで当然のことのように言った。
「凛かわいいでしょ?」
蒼は少し視線を逸らす。
「まぁ……」
千尋はその反応を見て、にやりと笑った。
「じゃあさ」
ジュースを一口飲んでから続ける。
「蒼くんから誘ってみなよ」
蒼は呆れた顔をする。
「急に何言ってんだよ」
千尋は楽しそうに笑う。
「別にいいじゃん」
そして、くるっと背を向けた。
「じゃ、また大学でね」
自動ドアが開く。
千尋はそのまま店を出ていった。
チリン、とドアベルが鳴る。
蒼はしばらくその場に立ったままだった。
「……デートって」
小さく呟く。
頭の中に浮かんだのは、凛の笑顔だった。




